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昨季は12球団で一番若かった日本ハム投手陣 漂う投手王国誕生の気配

2019 2/24 07:00青木スラッガー
吉田輝星,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

吉田輝星、金子弌大の加入で注目の日本ハム投手陣

2018年シーズン終了から積極的な補強を行った日本ハム。投手では新外国人2人の他、沢村賞に輝いた実績のある金子弌大、ヤクルトでリリーフエースとして活躍してきた秋吉亮とビッグネームを獲得。ドラフトでもナンバーワン高卒投手の吉田輝星を一本釣りし、新戦力に注目が集まっている。

昨季の日本ハム投手陣は12球団2位のチーム防御率3.77をマーク。大谷翔平が抜け、日本代表クラスは宮西尚生くらいだが、全体的には十分に安定した働きを見せた。新戦力の活躍次第で今季は新たな「投手王国」誕生に期待大といえるのではないだろうか。

では、エースは誰になるのか。開幕投手に関しては、2月中旬時点で上沢直之に決定している。新加入の金子、入団から4年で37勝を挙げている有原航平と、他にも投手陣の柱になり得る投手はいるが、栗山英樹監督は3人の中で一番若い上沢にエースとしての期待を寄せているようだ。

昨季は初の2桁勝利となる11勝をマークし、大躍進を果たした25歳。他球団のエース格と比べるとソフトバンクの千賀滉大よりも一つ年下で、最も若い部類に入る。ただ、よく耳にするような「若きエース」といった呼び名は上沢には相応しくないかもしれない。なぜなら、日本ハム投手陣の中では、上沢が特別若いというわけではないからだ。

12球団一「若い」メンバー構成

昨季の成績から、日本ハム投手陣の「若さ」に目を向けてみたい。まず単純に一軍登板があった投手の平均年齢を求めると、日本ハムは26.59歳。これは12球団で一番若く、最も平均年齢が高かったヤクルト(29.00歳)とは約2.4歳の差があった。

2018年投手平均年齢,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

しかし、平均年齢だけでは分からないことも多い。登板機会が多かったのはどの年齢層で、各年齢層がどれだけの成績を残したのか。下はそれを表したインフォグラフィックだ。「23歳以下」「24歳~28歳」「29歳~33歳」「34歳以上」という年齢層に区切り、それぞれの投球回数、勝敗などをまとめている。

2018年34歳以上投手の投球回数,ⒸSPAIA

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※年齢は2018年12月31日時点

日本ハムは「23歳以下」と「24歳~28歳」を合計した28歳以下の投球回数が1040.1回となり、これは12球団で断トツの数字。チーム全体に占める投球回数の割合としては、81.55%で12球団唯一8割を超えた。

2018年投手平均年齢,年齢別成績,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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また、ベテランという位置づけになる「34歳以上」の投球回数は石井裕也が引退登板で投じたアウト1つのみ。ほかに30歳以上はともに33歳の宮西尚生と村田透のみと、年長組の年齢も低かった。

2018年28歳以下投手成績,ⒸSPAIA

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単純な平均年齢だけでなく、若い投手が多くの登板機会を得て、イニングを消化していたことが分かる。昨季の日本ハム投手陣は12球団一若い顔ぶれだったといって間違いなさそうだ。

「勝利」と「育成」の両立に成功

まだまだ年齢的に発展途上の段階にあるメンバーを中心にして、球界トップクラスに安定した投手力を誇った。前述の表からわかるようにDeNA投手陣も日本ハムと並び若手の出番が多かったが、チーム防御率は4.18となり、まだ結果には結びついていない。日本ハムは数字にも成果が表れ、「勝利」と「育成」の両立に成功したシーズンだったといえるだろう。

年齢層のボリュームゾーンである「24歳~28歳」は上沢、有原をはじめ、マルティネス、上原健太、加藤貴之と大半の先発が該当。井口和朋、西村天裕、公文克彦、玉井大翔と中継ぎも左右にそろい、役割のバランスも良い。クローザーは22歳でもうひとつ下の世代の石川直也が19セーブを挙げて守護神定着に近づいた。

ベテラン組はリリーフエースの宮西、昨季6勝の村田、昨季は一時期クローザーも務めた浦野博司、新加入の金子、秋吉といったメンバーになるが、彼らもまだ老け込むような年齢ではない。

若手投手たちが順調に力を伸ばしていけば、長期的な投手王国化が期待できる。特に、その鍵となるのは、昨季の防御率4点台半ばとなってしまった有原と加藤、入団から3年間やや伸び悩んでいる上原といったドラフト上位入団組の復調である。

そこに堀瑞輝、新入団の吉田らさらに下の世代が食い込んでこられるか。これからの日本ハム投手陣がどのような活躍を見せるのか注目だ。