「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ヤクルトは世代交代なるか?塩見、渡邉がリーグ屈指の外野陣に挑む

2019 2/23 15:00勝田聡
塩見泰隆,渡邉大樹,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

実績あるベテランがレギュラーとして君臨

春季キャンプ中にベテランと若手がポジションを争うという構図がある。一般的に、これまで主力としてチームを牽引してきたベテランに対し、若手が世代交代を挑むパターンだ。

例えば、ヤクルトの外野陣。昨シーズンは、ウラディミール・バレンティン(131試合)や青木宣親(127試合)、雄平(120試合)、そして一塁と併用ながら坂口智隆(71試合)が主に外野を守っていた。

そのなかでバレンティンが打点王に輝き、その他3人は打率3割を超える活躍。3度目のトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)を達成した山田哲人と主に、リーグ屈指の打線を形成していた。もちろん、今シーズンも故障がなければという前提で、彼らを主力として戦っていくことは明らかだ。

そこでネックになっているのが年齢。年齢を感じさせないほどのパフォーマンスを見せている青木も1月で37歳になり、立派なベテランと言える。バレンティンら同級生である3人も今年で35歳。

5年後、全員揃って今と同じようなパフォーマンスを見せることができるかと問われれば、厳しいと言わざるを得ない。20代前半の若手選手たちと、少しずつ世代交代を図っていくのがチームとしての理想であり、ミッションでもある。

塩見泰隆は新人王へ向け好発進

まだまだベテラン健在のヤクルトで「今シーズン中にレギュラーを奪える」と明言は出来ないが、争うことができそうな選手がいる。ひとりは、2017年ドラフト4位でJX-ENEOSからヤクルトへと入団した塩見泰隆だ。

ルーキーイヤーは一軍でわずか1安打。産みの苦しみというべきか、24打席連続無安打から放たれた打球は決していいあたりとは言えないポテンヒットだった。それでも持っている力は一級品。首脳陣からの期待も大きく、オフにはイースタン・リーグ選抜として台湾で行われた『アジア・ウインターリーグ』にも参加した。

そこでは首位打者、本塁打王、最優秀打者賞を獲得する大ブレイク。NPB一軍の投手陣と比べると実力が落ちるとはいえ、好結果を残したことは大きな自信と財産になったはず。

そして迎えた春季キャンプは一軍スタート。2月14日に行なわれたKIA(韓国)との練習試合では、先頭打者本塁打を記録している。「レギュラー間違いなし」というわけではないが、争いに割って入る資格は十分にある。

大卒の社会人出身とあり、今年で26歳。年齢は中堅といったところだが、主力外野陣からみると10歳近く若いことは魅力的。この先の練習試合やオープン戦で結果を残すことで、チーム内での優先順位を上げていきたいところ。その先にレギュラーはもちろん、資格を残している新人王へのチャンスも広がっている。

満塁弾でアピールした渡邉大樹

もうひとりは、2015年ドラフト6位で専大松戸高からヤクルトへ入団し、今年から外野手登録となった渡邉大樹だ。一軍出場は2017年の2試合のみで実績はないに等しい。そんな渡邉も、この春季キャンプでは一軍に抜擢された。

ベテランがひしめき塩見がアピールしているなか、チャンスを生かすべく渡邉も後へ続いた。塩見が先頭打者本塁打を放った同日、渡邉も試合をひっくり返す逆転満塁本塁打を放ったのだ。値千金の1発は、「外野のレギュラー争いに加わる」という強い意志を感じさせる程のあたりだった。

1997年生まれの渡邉は今年で22歳。レギュラー陣はもちろん塩見よりも若いため、経験面でも劣るだろう。しかし、これからの「のびしろ」がもっとも大きいことは明らか。先輩たちからポジション奪取するためにも、まずは一軍ベンチ入りを目指すことになる。

昨シーズンは2位に終わったヤクルト。このオフにFA選手や大物外国人選手の獲得といった大きな補強は行っていない。それは、若手選手たちの才能が開花することで十分に戦え、世代交代もうまく進むという考えがあったからかもしれない。

また、素直にポジションを与えるつもりはないだろうベテラン選手たちも、若手の躍進を見て発奮。さらなる高パフォーマンスを発揮することも十分期待できる。その結果がチームの底上げに繋がり、優勝、そして未来へと続いていくはず。