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川端・大引に2年目村上が挑む 注目のヤクルト三塁手争い

2019 2/6 11:00青木スラッガー
野球ボール,ⒸSPAIA
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注目のヤクルト三塁手争い

キャンプインを迎えオープン戦開幕を控えたこの時期の関心事といえば、各球団のレギュラー争いだ。絶対的なレギュラーがいないポジションの開幕スタメンはどうなるのか、選手たちの状態が気になる。

今回は、ヤクルトの三塁手争いに注目したい。将来の4番候補、ひいては球界を代表するスラッガーとなることを望まれ、二軍で英才教育を受けてきたホープが、いよいよ定位置奪取をかけて実績豊富なベテラン勢に戦いを挑む構図になっている。

昨季のヤクルトの三塁手スタメン最多出場は、川端慎吾の62試合。川端に次ぐのは30試合の大引啓次。プロ入り以来3球団で遊撃手を守ってきた大引だが、昨季は5年目の西浦直亨がレギュラーを掴み、押し出される形で三塁へ回っている。

大引は下半身のコンディション不良で開幕に出遅れ、47試合の出場にとどまったものの、136打席で打率.350・5本塁打と打撃は好調だった。一方、川端は334打席で打率.259・3本塁打と、まだ打撃面では完全復活に至らず。コンディション不良などによる離脱もあり、終盤戦は復帰した大引が出場機会を増やしている。

それぞれ、これまでレギュラーとして活躍してきた期間は長く、併用で満足する選手ではないだろう。実績のある選手同士で熾烈なポジション争いが予想されるが、さらに今季2年目のドラ1・村上宗隆も、そこに割って入ってくることになりそうだ。

春季キャンプは秋に猛アピールした村上が一軍メンバーに

1年目の村上は一軍出場こそ6試合・14打席にとどまったが、イースタン・リーグではすでに圧倒的な成績を残している。

開幕すぐに結果を出して、6月には月間MVPに選出。最終的に打率.288(3位)・17本塁打(2位タイ)・70打点(2位)・長打率.490(2位)・出塁率(.389)を記録し、終盤には一軍で初打席初本塁打の衝撃デビュー。10月のフェニックスリーグでは10本塁打、12月のウィンターリーグでも4本塁打、15打点で二冠王に輝くなど、シーズン終了後も打ちまくり、猛烈な勢いを保ったまま春を迎えている。

今季の春季キャンプは一軍メンバーに抜擢。一方、昨季のメイン三塁手であった川端と大引は二軍スタートとなった。この振り分けがレギュラー争いの序列に基づいたものとは限らないが、一軍の首脳陣が村上をじっくり見定めたいと考えていることは確かだろう。これからのアピール次第で、開幕スタメンを果たしてもそれほど驚く状況ではない。

もっとも、まだまだベテラン2人の活躍には期待したい。村上は高校まで捕手で、三塁手としての経験はアマチュア時代含めても浅い。やはり守備面ではゴールデングラブ賞経験のある川端、遊撃手で2度の守備率リーグトップを記録している大引とは比べられないだろう。ヘルニア手術から復帰2年目で川端の打撃がどれだけ戻ってくるかは楽しみである。ただ、ヤクルト野手の編成を見ると、若い世代の台頭は急務である。

深刻なヤクルト野手の高齢化問題

以下のインフォグラフィックはヤクルトの選手の昨季成績を年齢層別に表したもの。「23歳以下」「24歳~28歳」「29歳~33歳」「34歳以上」と4つに年齢層を区分し、打撃成績をグラフにしている。

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「34歳以上」の打席数は全体の50%を占め、ベテランが主力となっていることがわかる。ここにはバレンティン、雄平、坂口智隆、青木宣親、大引啓次、畠山和洋と主力が集中。

「34歳以上」の打席数割合が次に高いのは巨人の32%で、12球団中7球団は20%以下。ベテランが活躍している印象の中日も、レギュラーが集中しているのは「29歳~33歳」(69%)となり、「34歳以上」は6%しかない。3連覇の広島も6%だ。ヤクルトの野手はベテラン頼りの傾向が非常に強い編成であることがわかる。

「34歳以上」の次は、西浦や山田哲人がいる「24歳~28歳」に33%の打席数がある。ただ、山田は近いうちにFA権取得が控えている。最短で国内FA権は2020年、海外FA権は2021年に取得可能。数年後、ベテラン陣の衰えと山田の退団が同時にくる可能性も否定できない。そのときに、現在「23歳以下」に該当する若手野手が育っていなければ、チームは危機的な状況に陥ってしまう。

こうして年齢編成を見ると、若手野手で一番の有望株である村上が背負うものは大きい。順調に成長していけるかどうかに、将来的なチームの命運がかかっているともいえる。早い段階でのレギュラー定着が期待されるが、そのタイミングは今季となるのだろうか。