西武は救世主マーティンが今季も残留
8回を任されるのはチームに何人かいるセットアッパーの中でも、最も信頼されている投手である。セットアッパー1番手の「8回の男」。ロースコアゲームに強いチームをつくりあげていくには、クローザーと並んで優秀な選手を配置することが不可欠なポジションだ。今季のパ・リーグ6球団は誰が8回を任されることになりそうか、昨季の成績から見ていきたい。
ⒸSPAIA
西武は牧田和久、シュリッターと前年までのブルペンの柱が退団した中、頼みのクローザー・増田達至が不振。前半戦のリリーフ陣の状況は厳しかった。しかし、ヒース、マーティン、小川龍也の途中加入組が流れを変えた。ヒースがクローザー、マーティンが8回を投げるセットアッパー1番手に定着。ブルペン全体の層は厚いとはいえなかったが、最終的に8回からの逃げ切り継投を確立することができた。それぞれ、今季の契約延長にもしっかりこぎつけている。
7月末に加入したマーティンは22登板で10ホールド、防御率2.08 。登板数は当然少ないものの、他球団のリリーフエースと比べても優秀な成績だ。彼が開幕からいるのは昨季と比べて大きな戦力のプラスだ。
ⒸSPAIA
ソフトバンクも開幕時思い描いていた通りにはブルペンが回らなかった。クローザーのサファテ、セットアッパーの岩嵜翔が開幕早々で故障離脱。そこで、これまで岩嵜とセットアッパーの両輪だった森唯斗がクローザーを務め、前年まで通算4登板の加治屋蓮が新セットアッパーに収まった。加治屋は72登板で31ホールドをマークし、リリーバーとして飛躍の1年になった。
だが、今季はキャンプイン直前に心配なニュースが出ている。加治屋が右肩に違和感が出てリハビリ組スタート。今季復帰予定のサファテ、岩嵜に過度な期待はできないだけに、昨季の「8回の男」が離脱となってしまうと痛い。
日本ハムは宮西が300ホールドへ
ⒸSPAIA
日本ハムは長くリリーフエースに君臨している宮西尚生がまだまだ健在だ。消耗の激しいセットアッパーは故障がつきものだが、宮西はプロ入りから11年連続50登板を達成。現在通算294ホールドで、史上初の300ホールド達成が目前に迫っている。大記録もモチベーションのひとつに今季も8回を締めてほしいところだ。
今季のクローザー有力候補は4年目の石川直也。日本ハムはヤクルトからトレードで秋吉亮、新外国人にハンコック、バーベイトを獲得し、積極的なブルペンの補強を行っている。
ⒸSPAIA
オリックスの「8回の男」はどうなるか要注目である。昨季は高卒2年目の山本由伸がセットアッパーとして大ブレイクを果たした。リーグ2位の32ホールドをマークし、防御率も2.89と安定。日本ハムから移籍してきたクローザーの増井浩俊と新たな勝利の方程式を確立した。
しかし今季は西勇輝、金子千尋が退団して先発が手薄になった影響で、山本は本人の志願もあって先発へ転向となる見込み。山本の次にホールドを稼いだ吉田一将、黒木優太らほかのリリーフ陣も先発転向の可能性がある。先発ローテーション争いが一段落つくまで、セットアッパーは誰になるのか読めない状況だ。
はじめからリリーフ専念とみられている投手では、今季3年目の澤田圭佑に注目したい。昨季は47登板で防御率2.54の好成績に、奪三振率もまずまずの8.15を残し、終盤に山本が離脱した際は勝ちパターンの8回を経験している。セットアッパーを務める力は十分ありそうだ。
楽天は最下位もセットアッパーがトップクラス?
ⒸSPAIA
ロッテはクローザーに内竜也を据え、中継ぎは松永昂大、大谷智久、益田直也あたりが中心となった。実績十分なメンバーだが、リリーフエース格で昨季も一番成績の良かった益田が70登板で17ホールドしか記録していないことからわかるように、なかなか起用法が定まらなかった印象がある。
今季はクローザー候補の新外国人・レイビンが加入。内がセットアッパーに戻る可能性もあり、現時点で「8回の男」は不透明だが、期待の右腕として、唐川侑己を挙げたい。昨季は8月にリリーフ転向し、リリーフ登板では21試合で自責点1と圧倒的な数字を残した。 昨季後半に近い投球が継続できるなら、文句なしにリリーフエースである。
ⒸSPAIA
最下位に沈んだが、リリーフに関しては充実しているのが楽天だ。昨季はベテランの青山浩二が52登板で防御率1.85の好成績を残してセットアッパー1番手。序盤は勝ちパターンではなかったが、実力でセットアッパーをつかみ取った。
昨季不振だった松井裕樹が守護神復帰を果たせば、代理でクローザーに入っていた防御率1.99のハーマンもセットアッパーに回る。さらに40登板で防御率1.73の宋家豪、新外国人のブセニッツもおり、層は厚い。8回を任せられるクラスの投手が何人もいるという状況だ。強力ブルペンを活用し、上位へ巻き返しとなるだろうか。