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西武の山川・多和田ら躍進続く沖縄出身選手 「大成しない」ジンクスを払拭できるか

2019 1/3 07:00青木スラッガー
山川穂高,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

沖縄出身選手は大成しない?

「沖縄出身選手は大成しない」とは、よく聞かれる球界のジンクスだ。

これまで決して大成した選手がいなかったわけではない。安仁屋宗八は通算119勝。伊良部秀輝も日米通算106勝を挙げ、打者では石嶺和彦が通算1419安打・269本塁打を放っている。それでも「大成しない」と言われてしまっているのは、出身選手の多さゆえのことだ。

今季の開幕時点、沖縄出身の選手は12球団で30名いた。ほかは大阪79人、東京43人と、もっと多いところはある。しかしそれぞれ都道府県人口のおよそ何人に1人がプロ野球選手になっているのかというと、沖縄4万9000人、大阪11万2000人、東京31万7000人となる。

沖縄の割合は圧倒的で、まさに野球王国である。人材の豊富さのわりに、超一流まで登りつめる選手は少ないという印象がぬぐい切れないのだ。

また近年ではプロ入り2年目から3年連続2桁勝利を挙げたが、その後は故障に苦しんだ新垣渚など、高い素質を持った選手でも、長期的に活躍できなかったケースが多いのは事実である。

では、現役選手たちはどうだろうか。今の球界は、沖縄出身選手の躍進が非常に目立っている。

山川・多和田・東浜が沖縄出身選手として初の快挙

今季、主砲として西武を10年ぶりのリーグ優勝に導いた山川穂高が代表的だ。打率.281・47本塁打・124打点の好成績を残し、自身初の本塁打王を獲得。パ・リーグMVPにも輝いた。両表彰とも、沖縄出身プレーヤーとして初の快挙だった。

西武は右腕の多和田真三郎が沖縄・中部商業高校で山川の後輩。今季は16勝をマークして最多勝を獲得。昨季5勝からの大躍進で、山川とともにリーグ優勝の立役者となった。

昨季は10年前、沖縄尚学をセンバツ王者に導いたソフトバンクの東浜巨がリーグ最多タイの16勝を挙げ、チームを日本一に導く活躍。沖縄出身の最多勝は東浜が初めてだった。

この2年のパ・リーグは数ある表彰の中でも、最も注目度が高い投打のタイトルを沖縄出身選手が持っていく形となっているのだ。

上記の3人はいずれも大卒の上位指名(多和田、東浜は1位、山川は2位)で、即戦力として入団している。大きな期待とは裏腹にプロ入り数年は伸び悩み、「やはりジンクスが……」という風潮はあったが、それを跳ね返すような活躍をみせてきている。

若手も有望株が続々

ほかにも現在は活きのいい沖縄出身プレーヤーが揃っている。

最年長は36歳のオリックス・比嘉幹貴だ。近年は故障に悩まされたが、今季は43登板・防御率2.04と劇的な復活を遂げた。変則サイド右腕の比嘉に対し、ソフトバンク・嘉弥真新也は変則サイド左腕の左キラー。大ブレイクとなった昨季から今季も活躍を継続して日本シリーズ連覇のキーマンになっている。

セ・リーグにも沖縄出身のサイドハンドがいる。中日・又吉克樹はプロ5年で早くも通算100ホールドを達成。先発で伸び悩んでいた巨人・宮國椋丞も今季は中継ぎで29登板・防御率1.97と安定した成績を残し、リリーフ勢は特に充実している印象だ。

中堅世代ではDeNAのメイン捕手のひとりである嶺井博希、ロッテの俊足外野手・伊志嶺翔大、ローテーション投手の実績のある大嶺祐太などがいる。若手は先発の日本ハム・上原健太が4勝、DeNA・平良拳太郎が5勝と、今季は自身最多の勝ち星をマーク。ユーティリティープレーヤーのオリックス・大城滉二はこの2年レギュラー格として出場を続けた。

今季のルーキーでは、快足外野手のDeNA・神里和毅が前半戦のトップバッターに定着。死球で足を骨折するまでは新人王を狙えるほどの活躍を残した。捕手の巨人・大城卓三も4本塁打と打撃で存在感を示し、新戦力も登場してきている。

彼ら有望株もタイトルホルダーたちに続く大ブレイクを果たせるか。山川らもこの活躍を継続していけるか。ジンクスを払拭するような、沖縄出身選手のさらなる飛躍に期待したい。