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西武・森友哉「打てる捕手」として23歳時点の打力は近年屈指

2018 12/6 07:00青木スラッガー
森友哉,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

5年目でベストナインに輝いた森友哉

西武のレギュラー格で最年少23歳の森友哉が、自身初のベストナイン(捕手)に選出された。捕手といえば、今シーズンは「甲斐キャノン」で話題になったソフトバンク・甲斐拓也の活躍が印象的だった。捕手としての出場試合数を見ても、指名打者での出場が多かった森の81試合に対し、甲斐は133試合と差がある。それでも森がベストナインに選ばれたのは、打撃面の評価が大きいだろう。

森の捕手としてのキャリアはここまで決して順調ではなかった。2年目で外野手に回るなど、高卒のプロ入りからすぐに通用する打力があったゆえに、正捕手への道のりは遠回りになった印象もある。それだけに、5年目でベストナインを獲れたことは喜ばしい。

近年、球界全体で打撃が売りの捕手は不足している。2000年代は城島健司、古田敦也、阿部慎之助、矢野燿大、里崎智也、谷繁元信と2桁本塁打を継続的に打てる捕手が何人もいた。ようやくそこに並べそうな捕手が出てきたといえるが、むしろ、森の「打てる捕手」としての成長スピードや23歳時点の打力は、彼ら近年の名捕手と比べても屈指といえる。

近年の「打てる捕手」と23歳時点の成績を比較

森の通算成績は460試合・打率.288・51本塁打・227打点。打撃の総合力を表すOPS(出塁率+長打力)などの各指標を用いて、まずは森と同じく高卒でプロ入りし、早くから一軍でプレーした城島、谷繁と5年間の通算成績を比べてみる。

プロ5年成績表

ⒸSPAIA 

本塁打は城島が上回ったが、差はわずか1本。シーズン最高17本は同数だった。打率、打点などそのほかの成績は森が総じてトップだ。さらにOPSは.834で、2人に大きく差をつける。三振は森が抜けて多いが、その分四球もしっかり選んでおり、三振を1つする間に四球をいくつ選んだかを示す「BB/K」も最も高い。

次に、大卒の1年目からレギュラーを獲った阿部慎之助も加えて、森の今シーズンにあたる、23歳シーズンの成績を並べてみる。

23歳シーズン表

ⒸSPAIA

森は23歳時の城島と全くの互角といえる。城島は打率3割に乗せたが、森は城島の倍以上に四球が多く、出塁率とOPSは同程度になった。谷繁は初のシーズン2桁本塁打が9年目・27歳のときと、打てる捕手として本格化してくるまではもう少し時間がかかった。左の打てる捕手として歴代最強クラスの成績を残してきた阿部も、23歳時の打撃成績としては森に分がある。

社会人出身の古田は25歳の1年目成績が打率.250・3本塁打というもので、26歳の2年目に打率.340・11本塁打と打撃で大ブレイクした。大卒の矢野と里崎に関しては、正捕手を掴んだのが中堅の年齢に差しかかってからだ。初めて2桁本塁打を達成したのは矢野が13年目(35歳)、里崎が7年目(29歳)のことだった。

チームでも代表でも正捕手へ

改めて振り返ると、近年の名捕手たちでも、23歳時点で森クラスの打力があったのは城島くらいだ。城島はその後、大リーグでも活躍するなど、歴史に残る捕手となったが、森はどんな成長をみせてくれるか。

森も一時はそうなりかけたように、プロ入り早くから打撃で結果を残す選手は、打力を活かすために他のポジションへコンバートするケースが多い。かつては小笠原道大、現在でも日本ハムの近藤健介や阪神の原口文仁がコンバートの道を辿ろうとしている。

その中で、森はあくまで捕手としてポジションを掴むことができた。まだまだ守備は向上が求められるだろうが、両リーグ3位の盗塁阻止率.373を記録するなど、守りでの成長も著しかった。

西武は来シーズンから、長年正捕手を務めてきた炭谷銀仁朗が巨人へFA移籍することとなった。今シーズン、森は初めてメイン捕手のポジションを勝ち取ったが、これからは不動の正捕手となるだろう。

チームでの活躍はもちろん、絶滅危惧種とも言われる希少な「打てる捕手」として、五輪やWBCでも代表チームを引っ張っていってもらいたい。