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ヤクルトが寺原隼人を獲得 「再生工場」で蘇らせることができるか

2018 12/2 11:00勝田聡
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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寺原のネックは制球難と年齢

ヤクルトは昨シーズンの最下位から躍進し、2位でシーズンを終えた。しかし、クライマックスシリーズでは巨人に2連敗。2戦目は菅野智之にノーヒットノーランを許す完敗で、3年ぶりとなるファイナルステージ進出はならなかった。

来シーズンは優勝、そして日本シリーズを目指すわけだが、ここまで大きな補強は行っていない。当初から、浅村栄斗(西武→楽天)や丸佳浩(広島)といったFA選手の獲得は見送ると明言していたこともあり、11月下旬まで静観していたのは予定通りである。

そのヤクルトがようやく動いた。ソフトバンクから戦力外通告を受けていた寺原隼人を獲得したのだ。寺原は今シーズン中継ぎとして21試合に登板し0勝0敗4ホールド、防御率2.39と残した成績は悪くないように見える。

寺原隼人成績

ⒸSPAIA

しかし、実際は制球に苦しみ、BB/9(1試合にいくつ四球を出すかを表す指標)は6.15、WHIP(1イニングあたり与四球と被安打で何人走者を出したかを示す指標)は1.63と高い。結果的に抑えてはいるものの、走者を出しピンチの場面を多く作っていたのだ。

また35歳という年齢もネックではある。制球難を改善し、疲労を考慮しながらの起用を心がけることで蘇る可能性はありそうだ。

坂口智隆、鵜久森淳志、田代将太郎…移籍後に復活

ヤクルトは他球団で活躍できなくなった選手、自由契約となった選手を蘇らせることが多い。野村克也監督時代には「野村再生工場」とも呼ばれていた。

近年では坂口智隆、鵜久森淳志、大松尚逸、田代将太郎、井野卓に加え、トレードでの獲得ではあるが近藤一樹もそうだ。

坂口は2015年オフに、オリックスで減額制限を超える年俸提示を受け自由契約を選択、ヤクルトに移籍した。移籍してから3シーズン全てで規定打席に到達し、今シーズンは打率.317を記録。チームに欠かせない存在となった。

鵜久森、大松は今シーズン限りで退団することになったが、ともに代打の切り札としてチームに貢献。両選手とも劇的なサヨナラ本塁打を放っており、その記憶はファンの脳裏に焼き付いているはずだ。

今シーズンから加入した田代は守備固め、代走で自身のキャリアハイを更新した。また、井野は今シーズン2番手捕手として、自身最多の47試合に出場。打率.144と打撃はいまひとつだったが、若い投手たちの持ち味を引き出すことで出場機会を得た。

近藤は守護神の石山泰稚につなぐセットアッパーに定着し、球団タイ記録となる74試合に登板。17年目にして初めて最優秀中継ぎのタイトルも獲得している。

このように多くの選手がヤクルトで「新しい自分」となり、好結果を残してきた。寺原も彼らに続き欠かせない戦力となれるだろうか。ヤクルトの再生術に期待したい。