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不思議なようで不思議でない。多和田真三郎が最多勝投手になれたわけ

2018 11/28 07:00SPAIA編集部
多和田真三郎,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

防御率3.81でも最多勝

今年のプロ野球も日本シリーズ、日米野球が終了し、本格的にストーブリーグ、オフシーズンに突入している。各タイトルも確定した中で、パ・リーグの最多勝には、埼玉西武ライオンズの多和田真三郎投手が輝いたが、この最多勝は少し異質なものとなった。

なぜ異質かというと、多和田の防御率が3.81で、規定投球回数到達者9人中8番目となる数字だったからだ。一時は久々に防御率4点台の最多勝投手誕生かと話題になったほどである。

そこで、優秀とはいえない防御率ながら、多和田が最多勝に輝いた要因について、ここでは考察していきたい。

なぜ防御率が高くても最多勝を取れたのか

まずは、パ・リーグの日本人先発投手の勝ち数上位5人について、防御率と被打率、被ISOを比較したものを下表にまとめた。

2018年パの防御率と被長打率,ⒸSPAIA

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※被ISO:ISOは長打率と打率の差から求められ、打者の長打力を測ることができる指標。逆に、被ISOはその投手がどれだけ長打を封じたかを示す。

多和田は防御率ではこの5人の中で最下位だが、被ISOについては断トツの数字となっている。長打は得点に絡みやすく、試合の流れを引き寄せる一打にもなりうる。それが少ないということは、勝ちに結びつきやすい投球ができているということではないだろうか。

被本塁打数の少なさが光る

さらに、この傾向は被本塁打数にも顕著に現れている。

多和田真三郎,被本塁打数,援護率,ⒸSPAIA

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先ほどの先発投手陣の被本塁打数をまとめた上記の表を見ると、多和田は本塁打を12本しか打たれておらず、最少となっている。

本塁打は打たれてしまうと、得点を奪われるだけでなく、ムードや流れまでも相手チームに渡ってしまうことが多い。多和田の場合、本塁打含め長打自体を打たれる割合が低い投手のため、それが味方のバッティングにも好影響を与え、多和田自身の勝ち星につながっているのではないかと推測できる。

実際に援護率を見てみると、多和田は7点近い援護率を誇る。援護率とは、投手が9イニング投げた場合の味方の得点数を表しており、多和田の場合、1試合投げ切れば7点近く援護点がもらえるという計算だ。他の投手に比べて1点以上の差があり、この数字がいかに特出しているかがわかる。

これは偶然ではなく、多和田が長打を防ぎ、バッティングに集中しやすい状況をつくっている結果ではないだろうか。

エース級と遜色ない試合をつくる能力

試合をつくるという点では、こちらのデータも見ていただきたい。

パの失点ごとの試合数,ⒸSPAIA

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このデータは先述の投手達が先発し、自責点2、3以下に抑えた試合をそれぞれカウントしたものである。2、3点以内に抑えられれば、先発投手としてある程度試合をつくったことになる。試合をつくる能力においては、他の名だたる投手陣と遜色なく、ゲームメイクができていることがわかる。

以上のデータから多和田は長打を防いで試合をつくり、援護につながる投球ができているといえる。ゲームメイクをする能力に長けていたからこそ、最多勝のタイトルを獲得できたのだ。ただし、防御率の悪さからうかがえる通り、大量失点した試合も多い。能力としては他のトップ投手に引けを取らないものを持っているが、調子が悪い時に粘り切れていないのだろう。

エースの菊池雄星は今オフにメジャー挑戦のため、チームを去る可能性が高い。その中で、今年最多勝を獲得した多和田には、次期エースとしての活躍が期待される。多和田は来シーズン大量失点する試合を減らし、名実ともに西武のエースとしてチームを背負って立つ姿を見せることができるだろうか。