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「スピード&パワー」を掲げる侍ジャパンの申し子 楽天・田中和基の示した存在感

2018 11/17 11:00浜田哲男
東北楽天ゴールデンイーグルス,田中和基,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

初の侍ジャパン招集で躍動

日米野球で、MLBオールスターチームを相手に5勝1敗と勝ち越した野球日本代表・侍ジャパン。柳田悠岐(ソフトバンク)や秋山翔吾(西武)ら常連のメンバーが名を連ねる中、初めて代表に招集された男が存在感を見せつけていた。今シーズン、ブレイクを果たした田中和基(楽天)だ。

プロ入り2年目の今シーズンは105試合に出場し、初めて規定打席をクリア。打率.265、18本塁打、45打点、21盗塁をマークし、新人王の有力候補にも挙げられている。

魅力は、50m走5秒89、遠投120mという驚異的な身体能力。広大な守備範囲と強肩、そして貴重なスイッチヒッターであり、尚且つ両打席でホームランを打てるパンチ力も兼ね備え、これからの成長が楽しみな選手だ。

7日に行われた台湾との壮行試合では、6回にチーム初安打となる右中間への二塁打を放ったほか、守備面でも貢献。レフト線に切れていく難しい打球をスライディングしながら好捕するガッツあふれるプレーを見せ、反撃の起爆剤となった。

また、13日にマツダスタジアムで行われた日米野球の第4戦では、2点ビハインドの9回、先頭打者で四球を選び、すかさず二盗。上林誠知(ソフトバンク)の適時打を呼び込んだ。初の侍ジャパン招集で、走攻守それぞれの側面から確かな存在感を示している。

3年目の飛躍、トリプルスリーへの期待

来シーズン、多くのファンが期待するのは、トリプルスリーの達成ではないだろうか。

今シーズン、山田哲人(ヤクルト)が3度目のトリプルスリーを成し遂げ、2015年には流行語大賞にもなったことから、以前よりは「トリプルスリー」という単語が野球を知らない方々にも浸透しているが、簡単に達成できる記録ではない。

なぜなら、長いプロ野球に歴史において、達成した選手はたったの10人しかいないのである。

歴代トリプルスリー達成者

ⒸSPAIA

トリプルスリー達成は簡単ではない。しかし、田中にはそれを期待させるだけの根拠がある。当然、今シーズンの試合出場数に加え本塁打数や盗塁数をマークしているということもあるが、パワーとスピードを兼ね備えた打者であることを示すセイバーメトリクスの指標PS(Power-Speed-number)が優れているのだ。

PSの算出式は(本塁打×盗塁×2)÷(本塁打+盗塁)となり、数値が大きいほど、パワーとスピードを兼ね備えているということになる。

歴代トリプルスリー達成者順位

ⒸSPAIA

そうそうたるメンバーの中で、4位につけている田中。トリプルスリー達成者である山田や柳田らには及ばずとも、秋山や糸井嘉男(阪神)らを上回っていることから、いかにその潜在能力に期待できるかがうかがえる。

侍の指揮官が目指す野球の体現者

侍ジャパンの外野陣は柳田や秋山のほかにも、今回招集されていない筒香嘉智(DeNA)や鈴木誠也、丸佳浩(広島)もおり、西川遙輝(日本ハム)も選ばれるだけの能力と実績を十分に持っている。

群雄割拠であることには間違いないが走攻守に優れ、のびしろのある田中が割って入っていく可能性もある。侍ジャパンの稲葉篤紀監督は就任時より、スモールベースボールを踏襲しながら、世界で戦うにはスピードだけでなくパワーも必要だと掲げている。そんな指揮官にとって、両方の能力を兼ね備えた田中の存在は魅力的なはず。

2019年には「WBSCプレミア12」、2020年には「東京五輪」、そして2021年には「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」と大きな国際大会が続く。来年で3年目を迎える田中がどのようなシーズンを送るか。侍ジャパンではどのような活躍を見せ、そして一定の地位を築くことができるか。今後のさらなる進化に期待したい。