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西武・外崎修汰「ユーティリティ選手初」のトリプルスリーへ近づいた1年

2018 10/30 11:00青木スラッガー
外崎修汰,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

中心打者のひとりとして飛躍した外崎修汰

10年ぶりのリーグ優勝を果たした西武。最後は悔しい結果に終わったが、追われる立場のプレッシャーのなか要所でライバルを叩き、首位を一度も譲らなかった戦いぶりは見事だった。「山賊打線」「ししおどし打線」と呼ばれた打撃陣は、平成のプロ野球を代表する強力打線として語り継がれていくことだろう。

それほど印象的だった強力打線は、浅村栄斗らここ数年のスター選手が力を発揮したところに、若手の急成長が加わって完成した。本塁打王の山川穂高、捕手として両リーグ最高の本塁打数をマークした森友哉。そしてもうひとりが、内外野をこなすユーティリティプレーヤーの外崎修汰だ。

3年目の昨シーズンは序盤からスタメンに定着し、初めて規定打席に届いて打率.258・10本塁打・23盗塁と台頭した外崎。開幕スタメンを果たした今シーズンは不動のレギュラーとして活躍した。

序盤こそ長距離砲が並ぶ西武打線の中にあって、貴重な“つなぎ”の打者というイメージだっただろう。ところが、実家がりんご農園を営むことからファンに「アップルパンチ」と呼ばれる長打力も発揮しはじめ、最終的に18本塁打をマーク。打率も.287と大幅に向上し、徐々に下位打線から主砲山川の後ろを打つクリーンナップの一角に入り込んでいった。

戦線離脱時は残り27試合で打率.291・18本塁打・24盗塁

大躍進を遂げていた外崎だが、左腹斜筋の張りにより9月4日から約1か月登録抹消。残り試合のほとんどを棒に振った。CSでは第1戦でスタメンを外れ、第3戦で一発を放つなど活躍はみせたが、万全の状態ではなかったはず。

チームとしても優勝争いの最中、二塁手・三塁手・外野手とポジションを転々としながらフルイニング出場を続けていたユーティリティプレーヤーの離脱は痛かった。

また、キャリアハイの成績を残していた外崎個人としても、この離脱により偉業達成の可能性が完全に消滅してしまった。実は、外崎は密かにトリプルスリーへ近付きつつあったのだ。

離脱前の成績は116試合で打率.291・18本塁打・24盗塁。残りの27試合で6盗塁達成は問題ない。打率も、27試合で4打数ずつあると仮定すると、108打数を3打数1安打ペースでいけばシーズン3割達成と現実的な数字だ。残り12本塁打はミラクルが必要になるが、完全に不可能とも言い切れない本数である。

やや強引な計算かもしれないが、外崎は6月と8月に月間6本塁打を放っている。「3割・25本・30盗塁」には到達する可能性が十分にあった。少なくとも離脱するまで山田哲人、柳田悠岐に次いでトリプルスリーに迫っていたのが外崎なのだ。

「ユーティリティプレーヤーでトリプルスリー」なら史上初の快挙

ここで、改めて歴代のトリプルスリー達成者を振り返ってみたい。

歴代トリプルスリー達成者

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今シーズン3度目の山田を含めて、過去10名が12回トリプルスリーを達成した。この中に、「内・外野」を同時に守ってトリプルスリーのシーズンを送った選手はいない。プロ入り当時三塁手だった秋山幸二は、トリプルスリー達成の9年目にはすでに外野手一本。松井稼頭央は楽天時代から外野を守るようになったが、西武時代は不動の遊撃手だった。

外崎が内外野を守るユーティリティプレーヤーとしてトリプルスリーを達成すれば、史上初の快挙となる。

今シーズンの外崎は、守備面でもリーグ優勝に大きく貢献した。やや荒削りなところはあるものの、俊足を活かして内外野とも抜群に守備範囲が広く、肩も強い。ソフトバンクと雌雄を決したCSファイナル第5戦でも、9回絶体絶命のピンチにダイビングキャッチでチームを救う。なにより怪我を恐れないアグレッシブなプレーで投手を盛り立てた。

直接プレーに現れないところでの貢献もあった。右翼手で開幕スタメンを迎えた外崎は、開幕スタメン三塁手中村剛也の不振に伴い、すぐに三塁手でスタメン出場を重ねるようになる。中村が6月に本格復帰するまで外崎が代役を務めたことで、チームの守備力・攻撃力は極端に下がらなかった。一軍復帰後、中村は大活躍して優勝の立役者となる。その活躍の陰には、不振時に外崎がいたおかげで素早く再調整に移せたことが大きかったはずだ。

ある程度の打力があって、内外野の複数ポジションを高いレベルで守れる選手がチームにもたらす貢献度は絶大だ。ある程度どころか、打者として最高峰の高みも期待できる外崎は、ブレイク2年目の25歳。この先、史上最高のユーティリティプレーヤーへと階段を昇っていくのだろうか。