「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

パが5年連続制覇中の日本S。セ王者カープは"鬼門"ビジター克服なるか

2018 10/24 07:00青木スラッガー
野球ボール,ⒸShutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

パ・リーグが5年連続制覇中の日本シリーズ

今年の日本シリーズは“初顔合わせ”の対戦カードとなった。2年ぶり8回目進出の広島カープと、2年連続18回目進出のソフトバンクホークス。20世紀に黄金期があった両チームだが、それがちょうど入れ替わりだったため、今まで実現していなかった。

3連覇とリーグ内では敵なしの広島と、リーグ2位からCSを勝ち上がり、勢いに乗るソフトバンク。どんな戦いになるのか楽しみだが、近年の日本シリーズを“リーグ対決”目線で振り返ると、完全にパ・リーグがセ・リーグを圧倒している。

昨年ソフトバンクが日本一になったことで全68回のシリーズ対戦成績は、セ35勝・パ33勝となった。通算ではほぼ互角だが、2000年以降に限ってはパ・リーグが12勝6敗。さらに最近10年間では、パ・リーグの10勝2敗と大きく勝ち越している。

現在は2013年の楽天からはじまり、2014と15年のソフトバンク、2016年日本ハム、2017年ソフトバンクとシリーズ5連勝中。この間セ・リーグは、2013年から順番に巨人、阪神、ヤクルト、広島、DeNAとすべて別のチームが日本シリーズに進出したが、第7戦までもつれたのは巨人のみという結果である。

パ優位の要因は指名打者?セはビジター11連敗

パ・リーグ優位は交流戦でも顕著な傾向だ。パ・リーグは2010年から今シーズンまで8年連続で勝ち越しており、交流戦がスタートした2005年以来セ・リーグが勝ち越したのは、2009年の1回のみ。この結果を見ると、セ・パのリーグ間でレベルの差があると言わざるをえない。

その要因の1つとされているのが、パ・リーグで採用されている「指名打者制」だ。指名打者ありきで編成を組むチームとそうでないチームでは、「指名打者制」で戦ったときの打力に差が生じてしまいやすい。

昨年の日本シリーズを例に挙げると、ヤフオクドームのゲームでソフトバンクの指名打者に入ったのは、3試合ともシーズン通りデスパイネだ。一方のDeNAは乙坂智、白崎浩之、ルーキーの細川成也と、デスパイネのような打撃に特化した指名打者をラインナップに加えられなかった。

DeNAのホームゲームでは、デスパイネを左翼につかせたソフトバンク打線の打力は落ちていない。DeNAはホームで2勝1敗と勝ち越したものの、敵地で3連敗を喫して敗退。最近の日本シリーズではこれと似たような展開が多く、パ・リーグ球団のホームゲームでの強さが際立っている。

ここ5年間のホーム成績はセ・リーグが7勝7敗と五分なのに対し、パ・リーグは13勝2敗と圧勝。パ・リーグ球団がホームで負けたのは、2013年の楽天対巨人第6戦が最後で、同シリーズの第7戦から昨年ソフトバンクが日本一を決めた第6戦まで、なんと11連勝中だ。

ホーム対戦成績、指名打者打率

ⒸSPAIA

そしてこの5年間の指名打者の打撃成績を比較すると、パ・リーグは56打数17安打の打率.304、セ・リーグは58打数11安打の打率.190。シリーズ単位でみても、パ・リーグの指名打者は5年間すべてでセ・リーグ指名打者の打率を上回っている。

球界屈指の野手層を誇る広島。“鬼門”克服なるか

ファンの大声援に後押しされるホームゲームそのものが有利ということもあるが、セ・リーグ球団がビジターゲームで苦戦する大きな要因はやはり指名打者制だろう。しかし、今年に限ってはその心配は不要かもしれない。広島は最も指名打者制の影響が少なそうなセ・リーグ球団といえる。

25本塁打をマークした右打者のバティスタ、打率.302に12本塁打をマークした左打者の松山竜平、売り出し中のメヒア、さらにこのシリーズで現役を引退する新井貴浩と、シーズン中はスタメンからあぶれることもあった強打のメンバーを、指名打者で出場させることができる。

この3人の中から2人をスタメン出場させるには、シーズン中は守備の良い野間峻祥を左翼手から外す必要があった。しかし指名打者制なら野間をスタメンのままで、例えばバティスタ、松山を同時起用することも可能だ。ビジターゲームで打線の力が落ちる心配はないと思われる。

今年の日本シリーズは広島ホームのマツダスタジアムで開幕。第3戦からは、近場のヤフオクドームに移動する。広島は“鬼門”ビジターゲームでも球界屈指の野手層で打ち勝ち、セ・リーグから6年ぶり、そして球団34年ぶりの日本一へ登り詰めることができるだろうか。