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オリ山本由伸ら「高卒2年目投手」は黄金世代?世代合計43勝49ホールド

2018 10/21 11:00青木スラッガー
ⒸShutterstock.com
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世代全体で43勝・46敗・49H ブレイク相次いだ「高卒2年目投手」

今シーズンもたくさんの若手選手が一軍デビューを飾り、球界にフレッシュな風を吹き込んだ。特に活躍が目立った「世代」は、高卒2年目の投手たちではないだろうか。

プロ野球界で「20歳」というのは、当然ながらまだまだ育成の初期段階にあたる。高卒の入団1年目に体づくりの目途がつき、ようやく本格的に実戦を視野に入れていくところだ。

2年目までに一軍で活躍できる選手はほんの一握りで、20歳以下で新人王となった選手は楽天の田中将大(2007年)以来出ていない。多くの選手にとって、まずは二軍メンバー内での競争を勝ち抜き、二軍戦の出場機会を掴んでいくことが目標となるだろう。

しかし、既に一軍で「戦力」となっている高卒2年目の投手が非常に多かった今シーズン。一軍登板の経験があり、今年で20歳を迎える1998年生まれの投手は、ソフトバンクを除いた11球団で16名。全員の成績を合計すると43勝・46敗・49ホールドとなり、存在感を放つ世代と言える。

今シーズン一軍登板した「1998年生まれ世代」投手

ⒸSPAIA

山本由伸、アドゥワ誠など一軍の「戦力」が多数

「別格」といえる活躍をみせたのは、新人王の有力候補であるオリックス・山本由伸だ。序盤からセットアッパーに定着し、リーグ2位の32ホールドをマーク。54登板で防御率2.89と、リリーフエースクラスの成績を残した。

昨シーズンは登板なしだった広島・アドゥワ誠も、今年は53登板で6勝、防御率3.74とブレイク。67.1イニングと回跨ぎもこなすフル回転で、チームの3連覇に大貢献。彼ら2人はリリーバーとして、チームにとってなくてはならない存在だ。

最終的に防御率7点台でシーズンを終えたヤクルト・梅野雄吾も、かなり良い印象だ。序盤戦で打ち込まれたため二軍落ちとなったが、8月からの再昇格後は好リリーフを連発。徐々に勝ちパターンに入り込み、CSの大舞台でも2試合無失点と堂々の投球ぶりだった。

先発陣も多くの投手が戦力になっている。阪神・才木浩人とDeNA・京山将弥が6勝、入団時に高校生投手の「ビッグ4」と呼ばれたドラ1の楽天・藤平尚真は4勝、西武・今井達也も5勝をマーク。同じくドラ1でシーズン開幕前の日本代表にメンバー入りした日本ハム・堀瑞輝も7月に初先発で初勝利。期待されていた投手が順調に頭角を現してきた。

藤嶋健人ら下位指名選手の活躍。指名漏れや育成入団選手も

ドラフト上位指名ばかりが活躍しているわけではない。アドゥワは5位、山本は4位、京山も4位と、むしろ目立つのは下位指名組の活躍だ。

3勝をマークした5位指名の中日・藤嶋健人も、序盤はリリーフで好投。松坂大輔の登板回避で、緊急登板ながらプロ初先発・初勝利をマークした6月17日の西武戦をきっかけに、後半戦は先発ローテーションに食い込んだ。

6位指名のロッテ・種市篤暉も来シーズンに期待をもてる投球をみせている。終盤には先発で6登板と経験を積み、初勝利とはならなかったが、最終登板は4失点完投と大きく成長をみせた。

下位指名からの成り上がりとして最たる例は、育成2位指名入団のオリックス・榊原翼だ。今シーズン3月に支配下登録を果たすと、9月以降は5回無失点、6回2失点、6回無失点と先発で3試合続けて好投。勝ち星こそつかなかったが、来シーズンは開幕ローテーションの候補に入ってくるだろう。

2016年ドラフトで指名すらなかった投手の活躍もある。四国独立リーグ・徳島でのプレーを経て、今シーズンのルーキーとして入団してきた西武・伊藤翔が終盤戦にリリーフで好投。チームのリーグ優勝に欠かせないピースのひとつとなった。

高田萌生がイースタン投手三冠。二軍にも有望株の姿が

今シーズンは一軍で出番が少なかったが、今後のブレイクが楽しみな投手も多い。

世代のトッププロスペクトとして注目されているのが、150キロ超えの速球とダイナミックな投球フォームから一部で「松坂二世」と称されている巨人・高田萌生だ。今シーズンは二軍の先発ローテーションを回り、11勝・防御率2.69・勝率.846のイースタン投手三冠を獲得。将来のエース候補と呼べる投手のひとりだろう。

2016年ドラフト時に藤平や今井と並び「ビッグ4」と称されていたヤクルト・寺島成輝と広島・高橋昂也。彼らにもエースとしての未来を期待したい。他の投手の活躍が目立つが、決して彼らが遅れているわけではない。ファンとして、最低でも同い年の大卒選手が入団してくる5年目までは、焦らず成長をじっくり見守りたいところだ。

今シーズン躍進したメンバーに加え二軍で力を蓄えた有望株が台頭してくれば、1998年生まれは近年まれにみる投手の「黄金世代」となるだろう。来シーズンのさらなるブレイクに期待したい。