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途中加入ヒースが獅子の救世主に データが示す圧倒的なクローザーぶり

2018 9/5 11:51青木スラッガー
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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新クローザー・ヒースが西武の救世主に

シーズン途中の5月にBCリーグ富山から西武に入団したヒースが、8月からクローザーに回り、圧巻の投球を見せている。

9月1日のオリックス戦では、中島裕之にサヨナラ3ランホームランを打たれ敗戦投手となったが、7月21日楽天戦から8月31日オリックス戦まで17試合連続無失点を記録。8月3日の日本ハム戦の初セーブ以降、8月だけで13登板8セーブ4ホールドを挙げている。まるで、後半戦のチーム投手MVPといえるほどの活躍ぶりだ。

広島時代のヒースを知るファンは、現在のクローザーぶりが信じられないかもしれない。2014年に広島入りし、先発ローテーションの一角を期待されたが好不調の波が激しく、この年は7登板で3勝に終わる。2015年はリリーフに転向。43登板で防御率2.36の数字を残したが、走者を出しがちで安定感に欠け、翌年の契約は勝ち取れなかった。最速150キロ以上のストレートを持ちながら、今シーズン途中まで国内外の独立リーグを転々としていた。

日本球界で、指を立てた握りで鋭く落ちる「ナックルスライダー」を決め球としているのは、恐らくヒースしかいないだろう。その投球スタイルは広島時代から変わらない。しかし、投球の安定感がまるで「別人」のように違っており、いくつかのデータがそれを証明している。

データが示す抜群の安定感

9月4日終了時点で、ヒースの成績は「33登板・3勝1敗・8セーブ・9ホールド・防御率2.35」。クローザー昇格は8月からのため、開幕からクローザーを務めている他の投手と成績で比較することは難しい。そこで、いくつかの指標をもとに「投球内容」を比較してみる。

ここで用いる指標は、1イニングあたり何人の走者を出したかを表す「WHIP」、9イニングあたりの奪三振数「K/9」(奪三振率)、9イニングあたりの与四球数「BB/9」(与四球率)。この3つの指標をもとに、広島時代及び現時点でクローザーを務める他球団の投手との成績を比較する。

まず、広島時代の2014、2015年時と比較すると、BB/9が大幅に改善されていることがわかる。もともと奪三振率はそれなりにあったが、奪三振能力は保ったまま与四球が減ったため、「WHIP」も改善。コントロールの向上が今季の安定感につながっているといえそうだ。

ヒース,成績,ⒸSPAIA

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次に、他球団のクローザーと比較すると、3部門とも驚異的な数字を残していることがわかる。ヒースは「走者を少なく抑え」「三振を多く奪い」なおかつ「四球を出さない」という理想的な投球内容で、他のクローザーを圧倒している。

シーズン途中加入ということもあり、イニング数が少なく、今後数字が大きく変動することも考えられるが、現時点では「最も安心して見ていられるクローザー」といって間違いないだろう。

ヒース,成績,ⒸSPAIA

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他のリリーフ陣も復調「唯一の弱点」解消へ

9回を投げる投手がしっかりすると役割が明確になるため、そこへつなぐリリーフ陣も力を発揮しやすくなる。ヒース効果か、最近は他のリリーフ陣もリズムが出てきた西武。

序盤二軍落ちも経験した平井克典は8月に2勝。中日から金銭トレードの小川龍也、7月末加入の外国人投手マーティンといった新戦力もしっかり機能している。8月末には、独立リーグから加入した19歳のルーキー伊藤翔も続けて2勝を挙げた。

猛打で他球団を圧倒してきた西武。開幕から勝ちまくる中、「唯一の弱点」と言われていたのがリリーフ陣の整備だったが、その課題も今や解消に向かいつつある。10年ぶりのリーグ優勝と日本一へ向け、最後のピースとなるのは、本来クローザーである増田達至の復活だろう。救世主ヒースの勝ちパターン継投がしっかり固まれば、首位を突き進む獅子に隙はなくなる。

※成績は2018年9月4日終了時点