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日本ハム「新守護神」浦野が覚醒。首位追撃へ救世主となれるか

2018 8/16 07:00青木スラッガー
ⒸShutterstock.com
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若き守護神が離脱。代役の浦野が好リリーフを連発

首位西武を追いかけるパ・リーグ2位の日本ハム。いよいよ終盤戦へラストスパートというところだが、チームにとって痛い離脱があった。クローザーを務めていた石川直也が、右内転筋肉離れで7月25日に登録抹消。信頼できるリリーフを一枚欠く厳しい状況で、投手陣の消耗が激しい夏場の戦いを迎えている。

若き守護神に代わり、現在9回を任されているのは5年目29歳の浦野博司だ。浦野は7月28日オリックス戦で3点リードの9回に登板すると無失点に抑えてプロ初セーブを達成。この好投で、以降も新クローザーとして起用されるようになった。

3位ソフトバンクとの直接対決となった8月11日も同点の9回に味方が2点を勝ち越した後、裏の守りを3人でピシャリと締めてチームの連敗を止めた。初セーブから半月で早くも4セーブ。すっかりクローザーぶりが板についてきた。

増井退団で「絶対的守護神」不在となった日本ハム

今シーズンの日本ハムは「絶対的守護神」不在のまま、ここまで2位という好順位につけている。昨シーズンまで守護神として君臨していた増井浩俊が、FAでオリックスへ移籍。セットアッパーを務めていたマーティンも同時に退団し、「勝利の方程式をどうするか」は開幕前から課題のひとつだった。

開幕当初は22歳の石川と、新外国人のトンキンが代わる代わる9回のマウンドに上がっていた。その後、一旦はトンキンが9回固定となっていたが、6月半ばに先発で不調だった有原航平を暫定的にクローザーへ配置転換。有原が先発へ復帰すると、6月末からは石川がクローザーを務めた。序盤の育成段階を終えて、いざ若き守護神を本格的に確立しようというところで、前述の通り石川がケガで離脱することになってしまった。

そんな中、前半戦の浦野の登板機会はビハインド時や大差がついた場面。1点や2点のリードを終盤に守り抜いた経験は多くない。本来なら、経験のあるトンキンをクローザーに戻すのが定石となるが、栗山英樹監督の選択は違った。

リリーフ転向の浦野は奪三振率が劇的に向上していた

そもそも、浦野は中継ぎの経験すら浅い。入団後、昨シーズンまで39試合に登板し、そのうち33試合で先発としてマウンドに上がっている。しかし、今シーズンは開幕ローテーションから漏れる形でリリーフに。プロ入り後、初めて本格的にリリーフ投手としてのシーズンを送っている。先発でずっとやってきた浦野からすれば、リリーフ転向は不本意な結果かもしれない。だが、新たなポジションで浦野の投球は進化していた。

球速以上の力を感じる150キロ近くのストレートと、落差の大きいフォークが浦野の投球の中心だ。1球目からエンジン全開で投げるリリーフ登板では、このコンビネーションの威力が、ペース配分を考えなくてはならない先発のときよりも格段に増している。

浦野の昨シーズンまでの平均奪三振率は6.03だったが、今シーズンはそれを大幅に上回る10.18をたたき出している。オリックスに移籍した増井の10.06を上回る数字となっており、リリーフ投手としてもトップクラスであることがわかる。その中で防御率1.59と安定感も抜群だ。

新守護神は終盤戦の救世主となれるか

浦野の「飛び級」でのクローザー昇格には、驚かされたファンも多かっただろう。クローザーはセットアッパーで結果を残し、信頼を勝ち取った投手が昇格する形で就任するケースが多い。だがリリーフ転向で投球が進化し、影ながらクローザーとしての適性を見せていた右腕を栗山監督は見逃さなかったのだ。

2013年に社会人のセガサミーからドラフト2位で入団した浦野は、新人年に7勝を挙げる順調なプロデビューを飾った。しかし3年目に肩を故障し、このシーズンは登板なしに終わる。肩の骨が壊死する野球選手としては特殊な症例だった。辛いリハビリを乗り越え、4年目の昨シーズンは695日ぶりの勝利をあげた。

そして迎えた20代最後の今シーズン。慣れ親しんだ「先発」のマウンドに立つ機会には恵まれていないが、巡ってきたクローザーという新たな持ち場で、輝きを放ちはじめている。増井退団の穴はやはり大きく、絶対的といえる存在はまだいない最後の砦。そこに浦野はこのまま守護神として定着し、チームの救世主となれるだろうか。

※成績は2018年8月15日終了時点