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「虎のゴジラ」と「竜のゴジラ」が覚醒か 陽川、福田がチーム浮沈のキーマンに

2018 7/28 07:00青木スラッガー
陽川尚将,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

ゴジラの背番号「55」を背負う中日・福田と阪神・陽川

かつて松井秀喜が背負った背番号「55」。この番号を背負う打者は、ゴジラ松井再来の期待を込めて「○○ゴジラ」と呼ばれることがある。広島当時の「赤ゴジラ」嶋重宣や、オリックスの「浪速のゴジラ」T-岡田がそうだ。

松井が巨人入りした1992年ドラフトでは、巨人を含め計4球団が松井に1位競合指名した。パ・リーグからダイエー、セ・リーグからは中日と阪神。クジ引き次第で、同リーグのライバル球団で松井がプレーする未来もあったわけだが……今その中日と阪神に、チームの未来を担う主砲となるべく奮闘する2人のゴジラがいる。

中日の背番号「55」は、プロ12年目30歳の福田永将。昨シーズン夏場にブレイクし、長い下積み期間を抜け出してレギュラーを掴んだ右の大砲だ。阪神の背番号「55」は、プロ5年目27歳の陽川尚将。昨シーズンまでの2年連続ウエスタン・リーグ二冠王である。二軍では敵なし状態も、昇格すると一軍の壁に跳ね返されていたが、今シーズンは中盤戦から一軍のスタメンを勝ち取り、強打者としての才能を開花させようとしている。

前半戦は2人のゴジラに明暗

今シーズン前半戦、セ・リーグ2人のゴジラは明暗分かれる形となった。活躍が目立ったのは陽川の方だ。4番候補として入団した新外国人・ロサリオが不振で二軍落ちし、その代役として6月3日に初めて一軍昇格。陽川はこの日の西武戦に6番・一塁でスタメン出場を果たすと、いきなり今季1号本塁打を放つ。さらにタイムリーも出て、4打点と抜擢起用に応えスタメン定着のチャンスをものにした。

6月の陽川は26日DeNA戦で決勝3ランを放つなど勝負強い打撃が光り、打率.358・3本塁打・20打点と主軸級の月間成績を残す。すると、7月1日ヤクルト戦から大抜擢で4番の打順も経験した。ここからはしばらくノーアーチで、後半戦開幕後は安打も止まって下位打線に回ったが、7月22日DeNA戦で久々の一発を放つ。チームの勝利に貢献し、結果が出なければスタメン落ちの可能性もあった土壇場を踏みとどまった。

一方、福田は「暗」というほどでもないが、昨シーズン終盤のブレイクを考えると、もっと突き抜けた成績を期待してしまう。昨シーズンは95試合で打率.271・18本塁打・49打点をマーク。最終盤は4番も任された。しかし主砲候補として開幕を迎えた今シーズンは、打率こそ昨シーズンと変わらないものの、本塁打は前半戦終了次点で6本にとどまる。序盤は不振でスタメン落ちすることもあり、代打を出される屈辱も味わった。

福田は気温とともに調子を上昇させる夏男だ。昨シーズンは8月以降だけで13本塁打を放ち、特に8月は9本塁打20打点と大暴れした。今シーズンも子供たちが夏休みに入った21日ヤクルト戦で41日ぶりのアーチとなる2本塁打を放ち、夏の本塁打量産モード突入を予感させている。

共通点の多い「竜のゴジラ」と「虎のゴジラ」……チームを上位に導くのはどちら?

打者。福田181センチ88キロ、陽川180センチ85キロと体格もほとんど同じ。構えやタイミングの取り方など、打撃フォームも似ている。福田の方がキャリアは長いが、一軍に定着しはじめたのは今シーズンの陽川と同じ27歳で、遅咲きである点も重なる。

今シーズンに関しては、チームで期待される役割も近い。主軸打者が返しきれなかった走者をホームへ返す役割だ。一時4番を任された陽川も、さすがに最後まで4番というのは荷が重いだろう。中日は平田良介、ビシエド、復帰が待たれるアルモンテ。阪神は福留孝介、糸井嘉男。この後ろで福田、陽川がクラッチヒッターぶりを発揮すると、両チーム打線の破壊力はぐんと増す。中日のクリーンナップ3人は開幕から好調を継続し、阪神もベテラン2人が頼りになる。それだけに、福田と陽川がどれだけ打つかが、攻撃面においてはチーム浮沈のカギを握りそうだ。

「55」の背番号だけでなく、何かと共通点の多い「竜のゴジラ」と「虎のゴジラ」。後半戦、チームを上位に導くのはどちらだろうか。「本家ゴジラ」松井は高卒1年目で2桁本塁打を放ち、あっという間にスターの階段を駆け上がっていったが、遅咲きゴジラたちの成長もじっくり見守っていきたい。