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試練の楽天で躍進する新戦力 二軍には「仙台のアルトゥーベ」も!?

2018 7/6 12:04青木スラッガー
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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最下位楽天の「希望の光」躍進した新戦力

パ・リーグで、5球団が同時Aクラスという珍事が発生した。25年ぶりの「単独Bクラス」となってしまったのは楽天だ。交流戦期間中に借金が今季最多の「20」となり、そのタイミングで3年目の梨田昌孝監督が辞任。前半戦を首位ターンした2017年とは一転、ここまで苦しい戦いを強いられている。

だが、そんなチーム状況でも下ばかり向いてはいられない。幸い、楽天は将来が楽しみな若手選手が前半戦で何名か台頭しており、後半戦の巻き返しや来期以降の戦いに希望はある。チームの「救世主候補」となる、今季躍進した新戦力たちをピックアップしたい。

1番・中堅手に定着「トリプルスリー候補」田中和基

前半戦、チームで一番のブレイクを果たしたのは大卒2年目の田中和基だ。俊足強肩に、左右両打席で本塁打を打てる長打力も備えたスイッチヒッター。攻守に「外野版の松井稼頭央」を思わせるプレーを見せている。

2017年出場した51試合は代走・守備固めが主で、打つ方が課題だったが、今季はその打撃が急成長。5月末にスタメンに起用されはじめると、6月から1番・中堅手に定着。打率.315、5本塁打、11盗塁(7月3日終了時点)と好成績を残し、一躍新人王候補に躍り出てきた。

40試合にも満たない出場成績でこれだけ本塁打を打ち、盗塁を決めているとなれば、将来的にはスイッチヒッターで松井稼しか達成していないトリプルスリーを期待したいところ。梨田前監督も田中のことはルーキー年から「トリプルスリーを狙える」と素質を高く評価していた。辞任間際、リードオフマンに抜擢してくれた梨田前監督のためにも、このまま定位置を確固たるものにしてチームを引っ張っていきたい。

将来の「エース候補」古川侑利と「セットアッパー候補」宋家豪

投手にも将来の「エース候補」として楽しみな存在が出てきた。高卒5年目右腕の古川侑利だ。6月初めの今季2登板目でプロ初勝利を挙げ、ここから一気に3連勝。交流戦期間中、なかなか勝てなかったチームの救世主となった。

古川の武器は、最速153キロで浮き上がるような球筋のストレート。球速だけ見ても立派だが、それ以上に高めで空振りを奪える「球質」の良さが光る。パ・リーグの注目選手をフィーチャーする「パ・リーグTV」で、古川のストレートだけをまとめた動画が作成されるほど、古川の真っ直ぐは魅力的だ。

クローザー松井裕樹が再調整で台所事情が苦しいリリーフでは、今季27歳になる3年目の宋家豪が後半戦で重要な役割を担いそうだ。2016年に育成契約で楽天へ入団し、2017年途中に支配下昇格した台湾出身右腕。今季6月末に嬉しいプロ初勝利をマークした。

185センチの長身から投げおろす150キロオーバーの「重い」ストレートは、セットアッパーで活躍できる素質を感じさせる。序盤戦は外国人枠の関係で一軍と二軍を行ったり来たりだったが、6月半ばにウィーラーが指を骨折して離脱。一軍定着のチャンスを迎えている。

ドラフト6位ルーキー西巻賢二は「仙台のアルトゥーベ」!?

ファームでプレーする選手にも注目したい。ここまで少し「意外」な活躍を見せているのは、すでに一軍デビューも飾った6位指名高卒ルーキーの西巻賢二だ。楽天のジュニアチーム出身で、高校は仙台育英という仙台市民にはプロ入り前から馴染み深いご当地プレーヤー。身長167センチと小柄で、遊撃手として抜群の守備センスを買われて入団したが、長打力でもルーキーの中で存在感を放っている。

西巻は現在イースタンリーグ5本塁打。二塁打はチームトップ、リーグ3位タイの14本だ(7月3日終了時点)。今年の高卒ルーキー選手の中で、5本塁打は15本の清宮幸太郎(日本ハム)、10本の村上宗隆(ヤクルト)という、競合1位指名のゴールデンルーキーに次ぐ数字である。

小兵ながら本塁打を打てる右打ちの内野手……といえば、大リーグではアストロズの二塁手、アルトゥーベが思い浮かぶ。現在の米球界を代表する首位打者3度の名選手も、西巻と同じ身長167センチだ。すでにファンからは「仙台のアルトゥーベ」という異名も聞こえており、西巻は強打者としての未来を期待されている。

最下位という厳しいチーム事情も、出番を狙う若手選手にはチャンスだ。今回ピックアップしたような選手たちの活躍で、楽天は後半戦巻き返しとなるだろうか。