今年もやはりパ・リーグは強かった
ヤクルトが初の最高勝率という結果になったが、今年もパ・リーグ優勢の図式は変わらなかった。終わってみれば59勝48敗1分とパが11も勝ち越した。ヤクルト以外はすべて負け越してしまったセ・リーグに対し、梨田監督辞任で揺れる楽天以外のパ・リーグはすべて勝ち越している。
ヤクルトが初の最高勝率という結果になったが、今年もパ・リーグ優勢の図式は変わらなかった。終わってみれば59勝48敗1分とパが11も勝ち越した。ヤクルト以外はすべて負け越してしまったセ・リーグに対し、梨田監督辞任で揺れる楽天以外のパ・リーグはすべて勝ち越している。
今年を含め、2009年以外は過去14年すべてパ・リーグが勝ち越している交流戦だが、交流戦が始まった2005年から2009年までの5年間の勝差は毎年8以内に収まっている。74勝66敗6分で勝ち越した2007年を除けば3以内だ。
しかも2005年、2006年は36試合制で計216試合。2007年から2014年までは24試合制144試合で現在よりも多い。ファンが気にしていたのは両リーグの差より、普段戦わない他リーグとの試合で各チームがどんな成績を残し、プレー内容がペナントレースにどう影響するか、だった。両リーグの力は拮抗し、純粋に楽しむことができた。
それが変わってきたのは2010年にパ・リーグが22も勝ち越したあたりからだ。
セ・リーグの多くの球団は「交流戦をどう乗り切るか?」、パ・リーグ、特に上位球団は「交流戦でどれだけ貯金を増やすか?」が、注目されるようになる。以後、2012年67勝66敗11分、2014年71勝70敗3分と競った年もあるものの、108試合まで減った2015年以降は、61勝44敗3分、60勝47敗1分、56勝51敗1分、59勝48敗1分と4年間で3回も勝差が10以上開いてパが圧倒している。
ⒸSPAIA
「パ・リーグはセ・リーグに比べパワー系の投手が多い」「セ・リーグは指名打者制に慣れていない」等、毎度、同じような理由挙げられるが、果たしてそれだけか?
昨年日本一に輝いたソフトバンクがDeNAと戦った交流戦はソフトバンクが3連勝したのだが、3戦目が問題だ。せっかくDeNAは1回表に2点を先取したのに、その裏、1死から中村晃に右中間へ二塁打を許してしまう。
捕球した楠本からの楠本―山下―柴田の返球が傍目にも素早いとは感じられず、中村晃は2塁を陥れ、そこから一気に同点。結局ソフトバンクが逆転勝ちした。少なくとも楠本が俊敏な動きで山下に返球したら、中村晃は1塁をオーバーランした段階で、2塁進塁自体をあきらめていただろうと思われるプレーだ。非常にもったいなかった。
また、巨人は、そのソフトバンクとの3戦目の8回、5-4とリードしていて無死1、3塁のチャンスを掴んだ。ソフトバンクの内野陣は前進守備を敷いていたのだが、そこで、亀井がセカンド正面のゴロ。3塁ランナー岡本が本塁に突っ込んで憤死した。
このプレーはタイミングも完全にアウトで暴走としか考えられなかった。ソフトバンクの内野は、皆、岡本の動きを見ているのだ。
岡本は、もし走るなら3本間に挟まれて、1塁ランナー阿部の代走重信が3塁に到達するまでの時間稼ぎをすべきなのだが、ただ突っ込んだだけだ。結局1死1・2塁となって次打者長野の遊ゴロ併殺打で簡単に攻撃が終了した。打者として進境著しい岡本だが、走塁面ではまだまだだ。
この試合はソフトバンク打線にタイムリーが出ず、巨人が勝って2勝1敗と勝ち越したが、こういったキメの粗さがセ・リーグ各球団には目立つ。これも交流戦でのリーグの勝差を分ける要因といえそうだ。
これも毎度のことだが、交流戦不要論を唱える声が必ず上がる。たった3試合のために先乗りスコアラーを配し6球団を分析。不慣れな土地、球場で試合しなければならないなど各球団の負担になっているのは確かだが、「5月の終わりから6月かけては交流戦」が定着しファンの楽しみとなっているのも事実である。
特に昨年のリーグチャンピオン同士の対戦となったヤフオクドームのソフトバンク―広島3連戦は、新幹線なら広島から1時間で博多に来られる距離ということもあって、球場のほぼ半分が赤く染まった。
広島ファンにとっては東京に応援に行くより、博多に応援に行くほうが時間も交通費もかからず、しかもその対戦相手が昨年の日本一球団。ヤフオクドームに集まるのは道理である。
一昨年のヤフオクドームでのこのカードも同様に盛り上がりだったし、今年のソフトバンク-広島戦の観客動員数は直、前に行われた巨人との3連戦を上回った。
無論、近年のソフトバンク、広島両球団の強さと人気は別格であるとの見方もできよう。しかしこれはパ・リーグ各球団が交流戦を望んでいた理由の本音の部分で「巨人戦をやりたい時代」が過去のものになったことを表す現象でもある。
またマンネリ化してきたという話も耳に入ってくるが、このソフトバンク―広島3連戦でいえば、今年絶好調の大瀬良が、ソフトバンクの分析にハマって打ち込まれた試合もあれば、3戦目に先発した九里が「変化球が多い」との分析の裏をかいて、直球で押してペースを握り、プロ入り初完投勝利を飾った試合もあった。
これは年に一回しか対戦しないからこそ起きた交流戦ならではの結果だろう。こういった交流戦ならではの楽しみは、マンネリ化することはないと思うのだが…。
リーグの違うセ・パ両球団の日本一を目指す本気の対戦が見られるのは、日本シリーズを除けば交流戦だけだ。しかも2球団ではなく、全球団の対戦が楽しめる。交流戦を支持するファンは多いと思うのだが、それでも不要なのだろうか。