苦境でも負けない菊池
交流戦も終盤となった6月15日の西武対中日の一戦は投手戦となった。西武の先発はエース・菊池雄星。一方、中日は2年目の笠原祥太郎だった。菊池はここまで離脱期間があったものの7勝0敗と無敗を継続しており、戦前の予想は圧倒的に西武が有利だった。
ところが試合は中日優位で進行し、4回に1点を先制する。笠原は5回までノーヒットピッチングを見せ、7回無失点の好投。8回には、木下拓哉(中日)が第1号本塁打を放ち2-0とし、中日に軍配が上がるかと思われた。
しかし、ここから粘りを見せた西武打線は、笠原の後を受けた岩瀬仁紀から2点を奪い、試合は振り出しへ戻る。
負けが消えたところで菊池はマウンドを降り、9回以降はリリーフ陣に後を託すことになった。試合は延長10回に山川穂高がサヨナラ適時打を放ち、西武が劇的な勝利を収めている。
この試合で白星こそつかなかった菊池だが、無敗を継続したことになる。ここまで9試合に登板し、7勝0敗、防御率2.86で規定投球回にも到達した。交流戦での登板はこれが最後と見られており、リーグ戦で再びローテーションの軸となり優勝を目指すことになる。
2013年田中と勝ち星はほぼ変わらず
ここまで無敗を貫いている菊池。
過去、戦後でシーズンを通し無敗で規定投球回に到達したのは、間柴茂有(1981年/日本ハム)と、現在ニューヨーク・ヤンキースで活躍する田中将大(2013年/楽天)のふたりだけだ。間柴は15勝0敗、田中は24勝0敗1セーブの成績を残し、ともにチームをリーグ優勝へ導いている。
菊池には、無敗記録とともに最多勝への期待がかかる。2013年時の田中と比較すると、6月15日終了時点で菊池は7勝0敗となっているが、田中は6月16日に9勝目をマークしており、現時点における勝ち星の差はさほどない。
もちろん、勝ち星は味方打線の援護にも左右されるので単純比較はできない。だが、日付だけで見ると無敵を誇った2013年の田中と菊池は、同等の勝ち星を挙げていることがわかる。
2013年の田中は24勝をマークしているが、ここまで菊池も20勝以上が目指せる成績で来ている。田中以降、20勝以上をマークした投手はおらず、5年ぶりそして平成最後の20勝投手としての期待もかかっている。
また、「負けない」ためには実力はもちろん「運」も必要と言える。全ての試合で完封できれば良いが現実的には難しく、リードを許して降板することもあれば、降板後に逆転されることもある。中日戦では菊池に「運」があったようだが、今後はどうだろう。
約1カ月後にはオールスターゲームが行われ、シーズンは後半戦へと突入する。現時点のチーム状況を見ると、優勝争いとクライマックスシリーズ争いになる可能性が非常に高い西武。また、ポスティング制度を用いてメジャーリーグ挑戦も視野に入れていると囁かれる菊池。
田中のように「負けない」球を投げ続け「不敗神話」を作れば、チームを日本一に導くことができるだろうか。今後の「鍵」となる投球に注目が集まる。
【シーズン無敗投手】
※規定投球回以上
- 間柴茂有(日本ハム)
(1981年)27試合/15勝0敗/防御率3.46
- 田中将大(楽天)
(2013年)28試合/24勝0敗1S/防御率1.27
※数字は2018年6月15日終了時点