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山田打撃不振の陰で菊池は補殺大幅減。東京五輪の正二塁手はどうなる?

2018 3/20 17:22青木スラッガー
野球ボール,グローブ
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「打撃」の山田・「守備」の菊池。球史に名を残した2人の二塁手

3月中旬を過ぎ、まもなく2018年シーズンの開幕を迎えようとしている。今のプロ野球界には、ヤクルトの山田哲人と広島の菊池涼介「規格外」の二塁手が2人同時に並び立っている。これまで、山田は「打撃」、菊池は「守備」で、それぞれプロ野球史上に残る活躍を見せてきた。

「打撃」の山田は、入団4年目の2014年に初めて規定打席に到達すると、いきなり打率.324、29本塁打の成績を残し大ブレイク。チームがリーグ優勝を果たした2015年は、プロ史上9人目のトリプルスリーを達成。翌2016年に、史上初の「2年連続トリプルスリー」という偉業を成し遂げた。昨年は、打率2割4分台でシーズンを終える不振だったが、守備力が重視される二塁手というポジションで、久々に表れた和製スラッガーなのだ。

「守備」の菊池は、入団2年目の2013年にレギュラーを確立すると、この年に528補殺を記録して二塁手のシーズン最多補殺記録を更新。簡単にいうと「補殺」とは、どれだけゴロをさばいて打者をアウトにしたかという記録だ。補殺が多いということは、それだけ守備範囲が広いという証である。

翌2014年に菊池は、自身の二塁手補殺記録を535個へ更新。2016年には自身のキャリアで3番目に多い525補殺を記録し、二塁手のシーズン補殺数ランキング歴代トップ3を独占した。ほとんど右翼手の守備位置にかかるようなゴロをアウトにしてしまう守備範囲は、まさに「異次元」。守備に関しては、二塁手として間違いなく歴代最高の名手である。

では、「現役ナンバーワン二塁手」といえるのはどちらだろうか。2017年3月に開催された第4回ワールドベースボール・クラシック(WBC)で、二塁を守ったのは守備で規格外のプレーを見せる菊池の方だった。

第4回WBCで正二塁手を務めたのは菊池だった

第4回WBCで侍ジャパンの初陣となったのは、3月7日のキューバ戦。以下はこの一戦のスターティングラインナップだ。

【2017年3月7日・日本代表スタメン・対キューバ代表】


  • (指)山田哲人
  • (二)菊池涼介
  • (中)青木宣親
  • (左)筒香嘉智
  • (一)中田 翔
  • (遊)坂本勇人
  • (右)鈴木誠也
  • (三)松田宣浩
  • (捕)小林誠司
  • 先発 石川 歩

菊池は、広島での定位置と同じ「2番・二塁手」を勝ち取る。一方、山田は、「1番・指名打者」でスタメン入り。ポジションにつく8人の野手の中で、最も打撃が期待できる選手としてレギュラーに選ばれた。

このときの侍ジャパンには、序盤戦で控えに回ることが多かったメンバーに、右打者の内川聖一、左打者の秋山翔吾と、打撃のスペシャリストが左右揃っていた。

山田が二塁に入って指名打者を空ければ、内川・秋山のスタメン機会を増やし、より攻撃的な布陣を組むこともできた。それでも、侍ジャパンを率いた小久保裕紀監督は、二塁手から菊池を外さなかった。打撃が好調だったということもあるが、やはり菊池には守備でゲームを左右する能力があると、絶対的な信頼を置いていたのだろう。

二塁手シーズン補殺記録を持つ菊池だが、2017年は山田が補殺数で勝利

菊池はWBCで好守備を連発。準決勝アメリカ戦では雨でグラウンドコンデイションが優れない中、失点につながる痛恨の失策もあったが、再三見せた「忍者」と表現されるアクロバティックなプレーは海外からも絶賛されている。しかし、WBCを終えて臨んだ2017年シーズン、菊池の超人的守備に異変が生じていた。

2017年の菊池は、自身のプロ野球記録樹立で注目を集めた「補殺」に関して、前年までから大きく数字を落とした。
失策はセ・リーグ二塁手最少の5個にとどめ、2013年から続くゴールデン・グラブ賞連続獲得は継続したものの、補殺は前年から118個減となる407個。一試合平均の補殺数は2.95個で、レギュラーに定着した2013年以来、初めて3個を割った。

対して、同シーズンの山田の補殺は442個(1試合平均3.09個)。これまでは、守備で山田ら他球団の二塁手を圧倒してきた菊池だったが、2017年に限っては山田の方が多くの補殺を記録していたのである。統計学的見地から客観的に分析し、選手を評価する「セイバーメトリクス」による守備の指標には、「同じポジションの平均的な選手と比べ、どれだけ失点を防いだか」を表す「UZR」というものがある。株式会社DELTAのデータによると、2017年の菊池のUZRは前年の17.3から3.2へ大幅にダウンした。

同年、山田のUZRは-1.6。菊池のUZR3.2は、まだ12球団の二塁手トップの数字ではあるが、セイバーメトリクスで見ても、やはり昨季の菊池の守備は2016年までほど圧倒的ではなかった。5月には、コンディション不良で欠場した試合もあったが、どこか慢性的な故障を抱えて試合に出続けていたのかもしれない。

パ・リーグには長打力が売りの浅村も。侍ジャパン正二塁手の座は誰の手に

2017年の山田と菊池を比較すると、山田の打撃不振ばかりが目立ったように思うが、菊池も持ち味の守備で本領を発揮できていなかった。ともに長所が影をひそめ、打撃面・守備面両方で互いの差が縮まったシーズンだった。

ここまで山田・菊池ばかりを取り上げたが、パ・リーグには西武・浅村栄斗という二塁手ベストナインに、2年連続選出中の選手もいる。第4回WBCには呼ばれなかったが、今年の「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2018」ではメンバー選出。2020年夏の東京五輪に向け、常任監督を務める稲葉篤紀監督の構想に入っている。5年連続で2桁本塁打を記録中と、長打力が売りの大型二塁手だ。

山田・菊池が復活を果たせなければ、侍ジャパンの二塁手のポジションは浅村が獲得することも十分に考えられる。もっとも、これだけ同世代に良い二塁手がたくさんいるというのは、日本球界にとって明るい話だ。果たして、東京五輪で日の丸を背負って二塁のポジションにつくのは、どの選手になるのだろうか。