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ポスティング制度はどう変わる?

2017 11/27 15:46mono
野球場
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FA、ポスティングでの移籍状況は?

アジアプロ野球チャンピオンシップが終わり、本格的なオフシーズンへと突入したプロ野球。やはり気になるのは移籍情報だ。
日本シリーズが終了し、FA権を行使したのは国内FA宣言3名、海外FA宣言4名の7選手。かれらの移籍は12球団の戦力図を一変させる可能性も秘めており、注目が集まっている。

また、それ以上に注目を集めているのが、ポスティング制度によりメジャーリーグを目指す選手たちだ。
2017年シーズンオフは大谷翔平選手(日本ハム)、牧田和久選手(西武)のふたりが同制度を申請予定となっている。メジャーリーグ機構とNPBとの間で、契約に時間がかかっていたが11月22日に合意。日米含めて慌ただしくなりそうだ。

【国内FA宣言選手】
野上亮磨選手(西武)
増井浩俊選手(日本ハム)
大和選手(阪神)

【海外FA宣言選手】
鶴岡慎也選手(ソフトバンク)
平野佳寿選手(オリックス)
大野奨太選手(日本ハム)
涌井秀章選手(ロッテ)

【ポスティング申請予定選手】
大谷翔平選手(日本ハム)
牧田和久選手(西武)

ポスティング制度のメリットは?

ここで、ポスティング制度についておさらいしたい。この制度は海外FA権を保有していない選手がメジャーリーグ球団へ移籍するための手段だ。選手の権利ではなく、球団が権利を有しており選手からの要望を踏まえて行使するか否かを決定する。

2017年シーズンオフまでのルールではポスティング申請した選手を獲得したい球団は、所属球団の設定する譲渡金額に対し支払う意思があれば交渉が可能といったものだった。
その上限は2000万ドルとなっているが、所属球団の意思で金額を自由に設定することができる。現制度で移籍した田中将大選手(楽天→ヤンキース)、前田健太選手(広島→ドジャース)は上限金額の2000万ドルで設定されていた。

選手にとってのメリットは、海外FA権を手に入れる前にメジャーリーグに挑戦が可能となることだ。2017年現在において海外FA権を取得するには累計で9年の出場選手登録が必要。高卒でプロ入りした場合、最短28歳のシーズンで権利を取得する。
しかし、ポスティング制度を利用すれば、その前に移籍が可能になるのだ。若いうちに移籍することで自身のピークをメジャーリーグで迎えることができる。また、契約金額のアップ、プレー年数の増加といったメリットを享受できる点も見逃せない。

一方、球団側にとってのメリットは金銭的な見返りがあることだ。仮に選手が海外FA権でメジャーリーグへ移籍した場合、メジャーリーグ球団から金銭、人的補償といった見返りはない。選手をタダで送り込むことになってしまうのだ。
しかし、ポスティング制度を用いれば金銭での見返りがある。譲渡金を用いて、施設の改修、新戦力の補強などを行うことができるのが大きい。また、新人獲得時にメジャーリーグ志望の選手が、入団を希望しやすくなるというメリットもある。

新たなポスティング制度とは?

メジャーリーグ機構とNPBにおいて、新たなポスティング制度における契約が合意した。新制度は2018年11月1日から2021年10月31日までの期間で適用されるために、大谷選手、牧田選手は現制度での移籍となる。

新制度は2000万ドルという上限が撤廃され、選手と新球団の契約総額に応じて変動する。また、申請期間が11月1日から12月5日(現在は11月1日から翌2月1日)へと短縮された。
これはポスティング申請が遅れることでその他の選手の契約も進まないことを防ぐためだ。選手と球団との交渉期間は変わらず30日間となった。
譲渡金は下記の比率で支払われることになる。

(1)2500万ドルまで:20%
(2)2500万ドル以上5000万ドルまで:17.5%
(3)5000万ドル以上:15%

※単年ではなく契約総額で算出
※25歳以上、NPB6年以上プレーしている選手において適用

例えば6000万ドルで契約が交わされた場合

(1)2500万ドル×20%=500万ドル
(2)2500万ドル×17.5%=437.5万ドル
(3)1000万ドル×15%=150万ドル
(1)+(2)+(3)=1087.5万ドル
上記が支払われることになる。

これに加えインセンティブ契約が結ばれた場合、選手が獲得したインセンティブ金額の15%が追加で支払れる。
また、マイナー契約の場合は契約金の25%となる。

2018年からどう変わる?

大型契約を結ぶことになれば、所属球団に入る譲渡金額は上がることになる。
しかし、選手の契約が決まるまで譲渡金額がわからない。想定していた金額よりも低かった場合にポスティンの取り下げを行う『撤回権』をNPBは求めていたが、メジャーリーグ選手会が反発した。これによりNPBは『撤回権』を手放し契約金額のパーセンテージを増加させている。

大谷選手、牧田選手にはこの制度の影響はないが、2018年シーズン以降にメジャーリーグ移籍を目指す選手及び、所属球団は2017年までと前提が変わるために、すんなりといかない可能性もある。
将来的にメジャーリーグをポスティングで目指すと言われている、菊池雄星選手(西武)らにどのような影響を与えるだろうか。今後の動きに注目したい。