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何度ケガしても蘇る!劣化を知らない荻野貴司の走力

2017 11/10 12:24Mimu
>バッターⒸShutterstock.com
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度重なる足のケガを乗り越えてきた荻野貴司

何度ケガをしても、必ずグラウンドへ帰ってくる。荻野貴司とは、本当に不死鳥のような男だ。
毎年のように足のケガで離脱を経験しながらも、一時たりとも全力で走ることを止めなかった。2017年シーズンで通算150盗塁も達成し、成功率も高い。さすがに以前よりもスピードは衰えてきたが、高い技術力によって、いまだにトップレベルの走力を保っている。
まだまだ、第一線で戦っていくことが出来る選手だ。今回は荻野の足の凄さ、そしてこれまで乗り越えてきたケガについて紹介していく。

荻野の走力はチームに勢いをもたらす

荻野の走力がチームに与える影響は非常に大きい。今シーズンはチーム状況が悪い中、荻野自身も打撃の調子が上がってこず、6月に2軍へ降格。だが8月に1軍に昇格してくると、そこからは打ちに打ちまくる。降格前は.191の打率しか残せなかったが、昇格後には.322。

だが特筆すべきはやはり盗塁数だろう。今シーズンのロッテの盗塁数は78個なのだが、荻野が8月に昇格してくるまではたったの26個しか記録していなかった。荻野自身も4月29日に1つ記録しただけである。

しかし、荻野復帰後はなんと52盗塁と倍増。荻野自身も25盗塁を記録した。それに比例するように、チームの勝ち数も増えていく。8月までは29勝61敗だったのが、復帰後2か月だけで25勝26敗とほぼ5割に。
特に9月・10月は15勝11敗と、シーズン初の月間勝ち越しを記録した。荻野の存在、そして荻野の走力というのは、それだけチームにとって大きいということだろう。

鮮烈なデビューだったルーキーイヤー

彼がルーキーだった年、今までにない衝撃を受けた。普通のショートゴロを内野安打にし、塁に出ればすかさず盗塁。5月までの46試合で25盗塁を記録し、彼が走る度に球場が大きく沸くほどであった。打率も.326と高く、きっと彼はロッテの新たなスターになる、誰もがそう確信していた。

だがその活躍は、わずか2か月足らずで終わりを迎える。5月21の試合でスライディングを試みた際、右足を痛めてしまいそのまま戦線離脱。診断の結果、右膝外側半月板損傷が判明し、手術を行うこととなった。
そして、そのままシーズン終了まで復帰することはかなわず、春先に大きなインパクトを残したまま1年目が終了した。

決意のコンバートも3度目の手術

復帰をかけて挑んだ2年目のシーズン、なんとショートへのコンバートを決断してしまう。もともと高校・大学時代はショート。大学時代にはその守備力でスカウトから評価されていたほどなのだが、やはりショートの動きは外野以上の下半身への負担が大きく、またも5月に右ひざを痛めてしまい、戦線離脱してしまった。

そのまま手術を受け、後半戦からの復帰を目指したものの、リハビリを焦りすぎ、今度は別の個所を痛めてしまうことに。そして8月に2度目の手術が決まり、これでプロ入り3度目の手術。2年連続でシーズン復帰も絶望的になってしまった。

どれだけケガに見舞われても全力で走ることはやめない

実は荻野の足のケガは、プロ入り後だけの話ではない。社会人のトヨタ時代にも、左ひざの半月板を痛めていたこともある。この時は秋に復帰し、そのまま都市対抗野球大会で優勝に貢献する大活躍を見せたのだが、この当時の経験が、リハビリ中の荻野に焦りをもたらしてしまったのかもしれない。

その後も太ももの肉離れや、ひざの関節炎などを繰り返し、何度も何度も戦線離脱を経験した。1シーズンをフルで働けたことはない。3年目からはこれまでの反省を生かし、ケガが完治してから1軍に復帰しているのだが、それでも、ずっとケガにつきまとわれている。

だが、どれだけケガをしようと、彼は全力で走ることを止めなかった。出場試合数が少なくても、入団以来毎年2桁盗塁は継続しており、しっかりと自分の役割を果たしている。キャリアハイの数字は2013年および2017年の26盗塁。いまだチームでもっとも盗塁に期待できる選手である。

100盗塁以上の選手では最高の盗塁成功率

何よりも荻野の凄さを表しているのが、盗塁成功率だろう。
今シーズンは26盗塁に対して盗塁死はたったの3つ、成功率になおすと.897という高い数字になる。さらに通算の成功率も非常に高く、2017年まで通算153盗塁に対して盗塁死は21、成功率は.879。これは通算100盗塁以上記録した選手の中では、堂々の1位である。
この数字がどれだけすごいものなのかは、過去の一流選手たちと比較しても一目瞭然だろう。

主な選手の盗塁成功率

荻野貴司 .879(盗塁企図174 盗塁数153 盗塁死21)
西川遥輝 .858(盗塁企図212 盗塁数182 盗塁死30)
福本豊  .781(盗塁企図1364 盗塁数1065 盗塁死299)
広瀬叔功 .829(盗塁企図719 盗塁数596 盗塁死123)
イチロー .825(盗塁企図858 盗塁数708 盗塁死150)※日米通算
松井稼頭央.826(盗塁企図562 盗塁数464 盗塁死98)※日米通算
赤星憲広 .812(盗塁企図469 盗塁数381 盗塁死88)
鈴木尚広 .829(盗塁企図275 盗塁数228 盗塁死47)

短い距離でトップスピードに乗ることができる

荻野の盗塁で注目すべきなのは、トップスピードに乗るまでが非常に早いという点だ。
すこしスタートが遅れたとしても、あっという間にトップスピード達し、そのまま2塁へと滑り込む。50m走のタイムはそれほど速くないそうだが、野球に必要な20mのタイムであれば、プロ選手の中でもトップクラス。
ルーキーイヤーには、右打者ながら1塁までの到達時間が3秒57を記録したそうだ。さすがに今は少し遅くなっているだろうが、4秒を切れば早いほうという世界の中で、圧倒的な数字をたたき出している。

もちろん盗塁だけでなく、走塁面でも高い技術を誇っている。ベースを回る際に一切スピードを緩めることなく、トップスピードを維持したままホームへ。その姿はまさに韋駄天と呼ぶにふさわしい。2塁にいれば、必ずワンヒットで帰ってくる。相手投手だけでなく、相手の外野陣にまでプレッシャーをかけていくことが出来るほどの走塁技術だ。

ケガを0にして盗塁王獲得なるか

今シーズンは「ケガが0になるように」という想いから背番号を0に変更して挑んだところ、不調で2軍に降格したものの、ケガで離脱することはなかった。荻野がケガなくシーズンを終えることが出来たのは、プロ入りしてから初なのではないだろうか。
そして試合に出場することさえ出来れば、その足でチームに貢献することが出来る。まだまだ荻野はチームにとって必要な選手だ。
来シーズンこそ、フルシーズンでの活躍、そして盗塁王の獲得に期待したい。それを達成できるだけのポテンシャルは、十分にあるはずだ。