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2018年シーズンこそ復帰なるか?ヤクルトの安打製造機・川端慎吾

2017 11/10 12:24Mimu
>バッターⒸShutterstock.com
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2017年シーズン、1度も試合に出場できなかった川端慎吾

来シーズン、この男の復帰が待望される。東京ヤクルトスワローズ・川端慎吾、2014年に首位打者を獲得した、ヤクルトきっての安打製造機だ。しかし今シーズン、彼の名前は一度も電光掲示板に表示されることがなかった。

シーズン前の2月に発症した椎間板ヘルニア。なんとかシーズン中の復帰に向けてリハビリを行い、7月ごろには2軍戦に出場するまでに回復していたのだが、結局痛みが完全に消え去ることはなく、8月に手術に踏み切ることを決意した。
この手術によって今年中に1軍へ復帰することが絶望的になることはわかっていたが、来シーズンを万全の状態で戦うためには仕方のないことである。

もともとチームに対する思いは人一倍強い。2016年には、進塁打を意識するあまり、打率が上がってこないという時期もあった。それくらい、個人よりもチームを優先する男だ。ましてや、選手会長という立場もある。今年のチームの現状を、いったいどう見ていたのだろうか。

川端がいれば打線の厚みがさらに増す

川端が1人いるかいないかで、打線の厚みは大きく変わってくる。2014年~2016年まで3年連続3割を達成、特に2015年シーズンは、打率.336、195安打で首位打者と最多安打の2冠にも輝いた。そんな選手がポッカリと抜けてしまえば、やはり打線にできる穴も大きくなってしまう。

彼ほどの高い技術を持った選手はなかなかいない。ミート力は球界でも随一だ。どんなコース、どんな球種でも、いとも簡単にヒットにしてしまう。
その技術力には、同じ左の巧打者である坂口智隆も唸るほどである。それでいて長打もあり、少しでも甘いコースに行ってしまえば、スタンドに運ぶパワーも持ち合わせている。2014年には2桁本塁打を記録、2塁打数でも常にセリーグの上位に顔をのぞかせている。

相手投手にダメージを与える球界きってのカットマン

だが、彼の真骨頂はカット打法だろう。2ストライクに追い込まれた後、そのバッティングスタイルががらりと変わる。ボールを手元ギリギリまで引き付けて、難しい球はひたすらカット。アウト1つでも簡単には、引き下がらない。さらに出塁することができれば相手投手へのダメージも大きい。
どうやらこれはプロ入り後に身に着けた技術で、球団の大先輩である青木宣親からヒントを得たらしい。ミートした後に、手首を返さずに我慢することで、うまくファールとなる感覚をつかんだという。

そして、2014年ごろからこの技術をさらに昇華させた。内角の厳しい球に対して、うまく右ひじを抜くようにバットを出す。そうすると、左手でボールを押し込む余裕がうまれ、打球がレフト前にポトリと落ちていくことが多くなったのだ。
単にカットで粘るだけでなく、2ストライクからでもヒットを狙いに行くこともできる。これだけの技術を持っているからこそ、安定して3割以上の打率を残すことができているのだろう。

彼がいるだけで、相手投手への負担が全く変わってくる。彼が万全であれば、後ろを打つ山田哲人やウラディミール・バレンティンはもっと楽に打つことができるはずだ。
ヒットを打つ以上に、相手投手に負担をかけることを知っている。もっとも代わりがきかない選手は、もしかしたら川端なのかもしれない。

休養中に活躍したサードのライバル

もちろん、復帰してもレギュラーが確約されているというわけではない。この川端がいない間、サードを守っている藤井亮太が素晴らしい活躍をしていた。また他球団ファンの方にはあまりなじみのない選手かもしれないが、彼の守備力は本当にすごい。

5月11日の広島戦、5回表の無死1塁で、バッターは相手先発投手の福井優也。当然福井はバントを試みるのだが、これが投手前への小フライとなる。これをマウンドの石川雅規がワンバウンドで捕球していればバントは成功していただろう。
しかし、サードを守っていた藤井が猛ダッシュで投手前に飛び込み、ノーバウンドで捕球してしまったのだ。当然ランナーも戻れずにダブルプレーが完成。この日は2軍から昇格して6試合目であったが、打っては決勝タイムリー、守ってもこの好プレーでチームに貢献した。

7月25日の中日戦でも、7回表の無死2塁3塁から、谷哲也の痛烈なサードライナーを見事にダイビングキャッチ、そのまま3塁ベースにタッチして併殺完成。この時点では6-5と1点リードの状態であったが、もしこの打球が抜けてしまっていれば逆転されてしまうところであった。

守備で勝負するライバルに打撃で差をつけることができるか

藤井は元々はキャッチャー登録であったが、サードでこれだけの高い守備力を誇っている。足も速く、サードの守備では川端選手よりも上、いや12球団でもトップクラスなのではないだろうか。チームもポジションも違うが、カープの菊池涼介の守備を見た時と同じくらいの衝撃であった。ちなみに外野を守らせてもうまい。

藤井の今シーズンの打撃成績は、97試合で打率.257(292-75) 2本塁打12打点というもの。打撃面では、川端の方が上だろう。しかし、守備面では圧倒的に藤井がうえだ。川端も守備が下手というわけではないが、藤井が守備力はそれ以上に圧倒的なのである。

大卒社会人のため、高卒で入団した川端よりも8年遅いが、年齢自体は藤井が1つ下(2017年現在で川端が30歳、藤井は29歳)。彼もまた、今のポジションを必死に守らなければならない立場だ。もし川端が復帰したとしても、打撃で結果を出すことが出来なければ、あっという間に藤井がレギュラーを奪い返すだろう。

来シーズンこそは万全の状態で

今シーズンのヤクルトは、とにかくケガ人に泣かされた。川端以外にも、畠山和洋や雄平、投手では秋吉亮に小川泰弘。だが、結局シーズンで1度も試合に出場できなかったのは、川端くらいだ。
来シーズンから指揮を執る小川淳司監督も、彼の復帰を待望している。チームが浮上するためには、彼が完全復活することが絶対条件なのだ。

余談ではあるが、妹の川端友紀は今シーズン、自信プロ初のホームランをライトスタンドへはなったようだ。女子プロ野球の3度の首位打者を獲得した天才打者は、さらに成長を続けている。この活躍に、兄も負けているわけには行かないだろう。
2018年シーズン、きっと彼にとって勝負の年となるだろう。来シーズン、神宮球場で再び背番号5が活躍してくれることに期待したい。


《関連データ》東京ヤクルトスワローズ 野手データ


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