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影のMVP?抜群の勝負強さでチームを救ったカープ・松山竜平

2017 11/10 12:24Mimu
ⒸShutterstock.com
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カープのピンチを救った男、松山竜平

8月23日、カープに最大の危機が訪れた。今まで4番を務めてきた鈴木誠也が守備の際に足を痛めてしまい(後日、右脛骨内果の剥離骨折と判明)、さらにこの試合も梶谷隆幸のタイムリーツーベースでサヨナラ負け。
実はこの前日にも筒香嘉智・ロペス・宮﨑敏郎の3者連続ホームラン、翌日にも倉本寿彦のタイムリー内野安打でサヨナラ負けを喫しており、なんと3日連続のサヨナラ負け。チームには最悪の状態であった。

だがとんでもない勝負強さで、重苦しい雰囲気を吹き飛ばした男がいる。そう、松山竜平だ。8月25日にシーズン初の4番に座って以降、打率.395(81-32) 5本塁打 25打点と大暴れ。得点圏打率に至っては.452という数字を残している。
9月までチームが失速することなく優勝まで駆け抜けることができたのは、彼の存在が非常に大きいだろう。

9月以降発揮された抜群の勝負強さ

9月からの松山の活躍は、本当に素晴らしかった。1日のヤクルト戦(神宮)で3安打2打点と活躍を見せると、2日のヤクルト戦で決勝点となる2点タイムリー。さらに3日の試合では4番に座って初のホームランを放ち、3試合連続で4番の役目を果たした。

さらに5日の阪神戦(マツダスタジアム)では、先制ツーランを含む2安打3打点。鈴木誠也離脱以降、2位から猛追をかけていた阪神を突き放す1発であった。9日の中日戦(ナゴヤドーム)ではスリーベースを含む4安打4打点を記録すると、翌10日の試合では2点ビハインドから同点ツーランホームラン。
これで4番に座ってから3本目のホームランだ。チームも1日から10日まで破竹の9連勝。一気に優勝へ向かう。

優勝決定戦でもタイムリーヒット

そしてマジック1でむかえた18日の阪神戦。球場全体に緊張感が漂う中、第1打席で見事に先制のタイムリーヒットを放ち、チームに勢いをもたらす。その後、1度は逆転を許すものの、最後はサビエル・バティスタのタイムリーヒットが飛び出し、そのまま勝利。見事に2連覇を達成した。

結局この9月・10月は16勝5敗と貯金を11個も作るほど勝ち、シーズン全体で最も多くの貯金を作った月にもなった。その立役者は、まちがいなく松山だ。
思えば、2016年に優勝した際も、9月10日の試合で決勝ホームランを放ち、優勝を決める一打を放っている。きっとこういった場面に強いのだろう。9月・10月の成績は.408(79-29) 5本塁打 23打点となり、月間MVPも獲得した。

実はレギュラーだった年はない

今シーズンの最終的な成績は打率.326(350-114) 14本塁打77打点。勝負強い打撃で4番の役目をしっかりと務めてくれた松山であるが、実は過去のシーズンでは規定打席に到達した経験がない。今シーズンも春先は不振で2軍暮らしの時期があり、規定に50打席ほど足りていない状況だ。
つまりは、完全なレギュラーではないのだが、これだけの成績を残す選手でもレギュラーでないというところに、カープの選手層の厚さがよく表れている。

また松山は、そのガッシリとした見た目や引っ張った打球が多いことからも、長距離打者のようにも見えるが、実は優れた技術を持った巧打者だ。
特に落ちる球にはめっぽう強く、内角のフォークをうまく拾ってライトへと運ぶさまは、もはや芸術のひと言。勝負所で何度も相手投手の決め球を打ち砕いてきた。長打の割には三振が少なく、打率も高い数字を残せている。苦手な球種やコースも無く、穴が非常に少ない打者だ。

実は高い技術を持った巧打者

この技術の高さは、これまでのシーズン成績を見てもうかがい知れる。松山がフルシーズンで1軍に定着しだしたのは2013年ごろからだが、ここから昨シーズンまでの成績をまとめてみると

2013年:123試合 .282(372-105) 10本塁打52打点
2014年:80試合 .318(233-74) 7本塁打34打点
2015年:100試合 .277(202-56) 7本塁打26打点
2016年:103試合 .291(254-74) 10本塁打41打点

いずれの年も、2割後半~3割台と、安定して打率を残すことができている。チームの中軸を任せるには、十分な成績だ。

一方でやはり打席数の少なさがやや気になるところ。100試合以上出場した年でも、打席数が200~300ほどに収まってしまっているのだ。実はほとんど毎シーズン、極度の不振に陥る時期があり、スタメンを外されることが多いのだ。今シーズンも春先に打率1割台に沈んでしまっていたために、規定打席に到達することができなかった。

レギュラー争いに不利なポジションだが、チームには欠かせない存在に

松山が守るのは主にレフトやファーストだが、これらのポジションは助っ人外国人との兼ね合いもあり、さらに松山自身もそれほど守備が得意というわけでもないため、少しでも打てなければすぐにレギュラー落ちしてしまうのだ。
今年も新井貴浩やブラッド・エルドレッドと入れ替わりで出場している。調子のムラの大きさと、ポジションの関係、これが松山のレギュラー獲得の大きな壁となっていた。

しかし、結果的に見れば、今シーズンはこの3人の併用が非常に効果的だったのではないだろうか。3人の成績は以下の通り。

松山:120試合 .326(350-114) 14本塁打 77打点
新井:100試合 .292(243-71) 9本塁打 48打点
エル:116試合 .265(344-91) 27本塁打 78打点

3人合計で276安打、50本塁打、203打点を記録。チームのムードメーカーである新井、抜群の勝負強さを誇る松山、一発長打があるエルドレッド、3人とも規定打席には到達していないが、それぞれの形でチームに貢献している。
さらにスタメンから外れた1人が、試合終盤で代打で登場するというのも、相手チームからすれば驚異だろう。

このように、松山は数字上で見れば確固たるレギュラーという扱いではないかもしれないが、その抜群の勝負強さでレギュラー陣に一切引けを取らない活躍をしている。
特に9月以降、松山がいなかったらと考えると、ゾッとしてしまう。それくらい、今シーズンは大きな大きな仕事をしてくれていたということだ。来シーズンも、きっと抜群の勝負強さで活躍してくれることだろう。セリーグ3連覇に向けて、松山が打ちまくる。


《関連データ》広島東洋カープ 野手データ


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