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ベイスターズ・今永昇太のピッチングの本質とは?その投手像に迫る!

2017 10/13 10:05Mimu
野球 ピッチャー
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左腕王国ベイスターズの中心、今永昇太はどんな選手?

今、DeNAベイスターズは左腕王国になっている。開幕投手の石田健太選手に、ルーキーながら活躍を見せる濱口遥大選手、中継ぎでも田中健二朗選手に、砂田毅樹選手、日本ハムからトレードで移籍してきたエドウィン・エスコバー選手も力のあるストレートを投げている。
その中でも、今最も安定感があり、エースとして成長しつつあるのが、今永昇太選手だ。

2017年8月には、2年目ながら初の2桁勝利を達成。ベイスターズの左腕投手が2桁勝利を挙げるのは、2005年の土肥義広さん以来12年ぶり、生え抜き左腕となると2002年の吉見祐治さん以来15年ぶりとなる。
2016年に石田選手が9勝で惜しいところまで行ったのだが、今永選手が先にクリアとなった。今回は、そんな今永選手の投手像に迫ってみよう。

進学校出身ながら当時から期待されていた!大学ではチームを優勝に導く

まずは今永選手のキャリアから紹介していこう。今永選手は、福岡県立北筑高校から駒澤大学を経て、2015年のドラフト1位でベイスターズへと入団した。この北九州市にある北筑高校は進学公立高校だ。運動部の活動も盛んな高校ではあるが、特に野球強豪校というわけではなく、プロ野球選手の輩出も今永選手が第1号なのだ。

今永選手は3年の春に折尾愛真高校戦で14奪三振の好投を見せると、その後の試合でもイニング数を上回る三振を奪い、徐々にプロの球団からも注目を集めるようになった。2年生の時からエースで、当時から140km/hを計測していた。1回戦でコールド負けをした夏の大会から驚異的なスピードで成長し、一躍注目の選手となったのだ。

卒業後は駒澤大学へ進学し、1年生から試合に出場している。後にプロでもチームメイトとなる戸柱恭孝選手とバッテリーを組み、2年生の春には大学初勝利を含む6勝を上げ、最優秀投手とベストナインの2冠を達成した。
3年生時には春夏合わせて11勝3敗、春は3連続完封勝利を含む4勝で防御率0.87、特に秋には7勝を上げ、MVP・最優秀投手賞・ベストナインの3冠を獲得するなど、最高の1年となった。スカウトたちも、翌年のドラフト上位候補と声をそろえていたほどだ。

こうして高校時代以上にプロに注目されていた今永選手であるが、4年生で左肩を故障してしまい、春は登板無し、秋も0勝3敗という数字に終わり、ドラフト前の重要な1年に、1勝も上げられなかった。
そのためユニバーシアードの代表にも選ばれたが、辞退している。だがプロからの評価は依然として高いままであったため、無事にベイスターズから単独1位指名を受けることとなったのだ。

最速150km/hの本格的左腕!変化球も抜群のキレを持つ

プロ入りした今永選手であるが、投手としての特徴を簡単に表すと、「本格的左腕」という言葉がピッタリだ。ストレートは最速150km/hを計測。平均では140km/hほどだが、球速以上にノビてくる。
その球質の良さは、筒香嘉智選手のお墨付きで(春季キャンプのフリー打撃にて対決)、肩甲骨周辺が非常に柔らかく肘の使い方もしなやかだ。
球持ちも良く、腕はリリースギリギリまで隠れているので非常にタイミングが取りづらいフォームでありながら、スピンの効いたストレートは、手元でグンッとノビていく。このように空振りが取れるストレートは、大きな武器となる。

特に右打者への内角へのストレート、いわゆるクロスファイヤーが本当に素晴らしい。今永選手は縦の角度こそあまりないが、横の角度はかなり有効に使ってくる。球持ちの良いフォームと横の角度は相性が良く、腕がいきなり出てきたかと思えば、体に近いところにボールがズバッと切り込んでくるので、打者は恐怖すら感じるだろう。

スライダーはキレがあり、カウント球にも決め球にも使うことができ、カーブ、チェンジアップも精度が高く、変化球も一級品だ。このように、ストレートを軸に、キレのある変化球でピッチングを組み立てていくことができる。まさに本格的左腕である。
2016年はラミレス監督の方針もあり、早い回で降りることも多かったが、2017年シーズンはすでに完投が3つとスタミナも十分。エースと呼ぶにふさわしい存在になりつつある。

本質は内面にあり?強気と謙虚さを両方持ち合わせる

だが今永選手のピッチングの本質は、その内面にあるように思う。実は今永選手は、かなりの理論派で完璧主義者だそうだ。負けがついたときは勿論、勝ち星がついたときですら「なぜ勝てたのか」をしっかりと考えているという。
仮に7回1失点の好投を見せたときでも、その1点をなぜ取られたのか、どのようにすれば防げたのか、常に課題を見つけながら次の試合を見据えている。

そして何より、絶対に他人の責任にはしない。1-0で負けたとしたら、それは1点を取られた自分のせいで、味方が点を取ってくれるまで粘れなかった自分の責任だと考える。仮に味方のエラーで失った点だとしても、それは自分が取られたことには変わりないと考えているそうだ。
味方の援護に文句を言えるのは、常に0点に抑えている投手のみで、むしろ味方のミスを帳消しにするのが真のエースだともいう。こんな風に考えられる投手が今までにいただろうか。

こういった謙虚さを持ちながらも、マウンドでは強気に内角を突いてくるから不思議だ。謙虚すぎず、かといって強気になりすぎることもなく、良いバランスを保っている。

心のバランスを保つことに長ける

バランスという意味では、他にも面白い話がある。実は意外なことに、今永選手は右打者のアウトローを突くのは苦手だという。かつての名投手が「アウトローはピッチングの生命線」というほど大事なコースだ。
あれだけ強気に内角に投げ込むことができているというのに本当に意外だが、本人曰く、アウトローの重要性も理解した上で、内角に比べて角度がない分、投げにくいらしい。
実際に2017年のキャンプでは、このコースへのコントロールを徹底的に磨いていた。

しかし最近では、試合で投げ込るときにはあえてアウトローを意識しないようにしているという。アウトローを意識しすぎると、置きに行った球を痛打されることが多くなったことがきっかけだそうだ。探究心は常に持っているが、そのテーマを意識しすぎると、逆に力が入ってしまうのが課題である。

他の例でいえば、今永選手は空振りを取れるストレートを持っているが、空振りを取ろうと意識をしてしまうと、逆に力が入りすぎて棒球になりやすいという。そのため、普段はそういったことを考えず、リラックスしながら投げているそうだ。
あれだけの探究心がありながら、マウンドで考えていることはシンプルなようだ。やはり心のバランスの取り方が上手いのだろう。

心・技・体、すべてを持ち合わせたエース候補

今永選手は、これだけの凄い球を持っていながら、常にいろいろなことを考え、自分の心をコントロールすることもうまい。やはりプロで活躍する選手には、心・技・体のすべてが必要ということなのだろう。

プロ入り後、1つずつ自分の課題をクリアし、レベルアップしている今永選手は、今後もベイスターズ投手陣の柱になるだろう。左腕王国ベイスターズを象徴する選手として、注目していきたい。