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新人王最有力!中日・京田陽太の成長スピードの秘密とは

2017 9/13 14:03Mimu
野球,ボール,グローブ,バット
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新人ながら不動のリードオフマンに

2017年シーズン、中日ドラゴンズのルーキーが躍動している。京田陽太選手、青森山田高校から日本大学を経て、入団してきた選手だ。今季はこの選手が、ドラゴンズのショートに定着している。シーズン当初は2割に満たない打率であったが、5月から一気に当たり始め、2割8分前後まで打率を上げてきた。横浜DeNAベイスターズの濱口遙大選手と並び、セリーグの新人王候補だ。
一体なぜ、これほどまでのハイペースで成長していけるのだろうか。開幕当初とはまるで別人のようだ。今回は京田選手の成長の秘密について迫ってみよう。

意外?まず結果が出たのはバッティング

京田選手がレギュラーを確固たるものとしたのは、意外にも打撃でのアピールだった。オープン戦から打撃好調をアピールすると、99年の福留孝介選手(現:阪神タイガース)以来の新人開幕スタメンの座を獲得。4月終了時点では打率が.198しかなかったが、5月には.323、6月にも.326と大幅に上げ、3割目前まで打率を上げてきた。1番打者としては出塁率が物足りないが、ルーキーとしては十分すぎるだろう。

この打撃向上の理由には、もちろんプロの球に慣れたということもあるだろうが、ここ数ヶ月だけでも大きな変化が見られている。体重移動の仕方を工夫して強い打球を打てるようになったり、体の開きの早さを修正して緩急にも対応できるようになった。
足の速い選手にありがちな当てるだけのバッティングをせず、しっかりとボールをとらえることができている。バッティング練習でも、速い球と遅い球を交互に投げてもらっているそうだ。もともと大学時代から、バッティングに大きなクセがなかったため、コーチ陣からの指導をすさまじいスピードで吸収力していっている。大島洋平選手からアドバイスがもらえているのも大きいようだ。

そして、走塁面でも存在感を放っている。盗塁数はセリーグでも2位の16個、さらに2塁打12本、3塁打5本にいたってはセリーグでもダントツの数字だ。実際に京田選手の走塁を見てみるとわかるが、とにかく速い。少し打球に目をやった瞬間には、もう次の塁へと向かっているのだ。打撃と走塁が一体になったスピード感のある攻撃、なかなかルーキーにできるようなものではない。

守備面ではプロの打球に苦労していた

一方で守備に関しては、やや苦労していたようだ。プロの打球の速さに対応できず、球際でのプレーが雑になってしまうことが多かった。足の速さで多少はごまかせていたが、シーズン序盤はとにかくミスが多く、守備のミスで落としてしまった試合もあったほどだ。
学生時代から基本に堅実なプレーには定評があったが、プロではそれが仇となり、無理に正面に入ろうとしてミスになってしまう事もあった。しかし、今ではかなり改善されてきたように思う。

転機となったのは5月28日のヤクルト戦だ。この日の2回ランナー1塁の場面で鵜久森淳志選手の放ったセンター寄りのショートゴロを後逸。しっかりと取っていれば併殺だった打球だが、このプレーでピンチがさらに広がってしまい、打者一巡の猛攻に遭ってしまい6失点を喫してしまう。試合も1-7と大敗してしまった。このエラーがシーズン7個目、チーム内では最多の数字だ。

コーチ陣とのマンツーマン指導で守備力向上

ここから奈良原浩と森脇浩司両守備走塁コーチとのマンツーマン守備練習、さらに荒木雅博選手のアドバイスなどもあって、守備はかなり上達した。グラブさばきに足の運び、打球への入り方、ポジショニング、徹底的にたたき込まれた。3人とも守備の名手として知られた人物だったため、相当に充実した練習だったのだろう。

その結果、開幕から2ヶ月足らずで7個も記録したエラーが、その後オールスターまでの1ヶ月半でわずか1個と激減。持ち前の俊足がさらに生かされ、いまやセ・リーグのショートでは坂本勇人選手に次いで、2位の捕殺数(ゴロアウトの数)を誇っている。シーズンが始まってからにもかかわらず、ここまで打撃と守備両面で成長を見せた選手というのも、なかなかいないのではないだろうか。

アマチュア時代からプロ入り後まで常にライバルがいた

京田選手の野球人生を振り返ってみると、常に注目されたライバルがいた。青森山田高校時代には、同じ青森県内の八戸学院光星に北條文也選手(現:阪神タイガース)がおり、自身は甲子園に1度も出場していない。だがそんな京田選手とは対称的に、北條選手は光星の4番ショートとして、田村龍弘選手(現:千葉ロッテマリーンズ)とともに春夏連続の準優勝。高校No.1のショートの座をほしいままにしていた。

大学ではリーグこそ違うものの、同学年に吉川尚輝選手(中京学院大学 現:読売ジャイアンツ)がおり、大きな注目を集めていた。大学No.1ショートどころかNo.1野手と呼ばれるほどの選手。
当時は「打撃なら吉川、守備なら京田」と評価されており、大学日本代表に共に選ばれた際も、吉川選手が5番セカンド、京田選手はショートながらも8番や9番といった下位打線で出場することが多かった。巨人や中日が吉川選手を指名するとも噂されており、やはり注目度ではかなわなかったように思う。

その後、吉川選手は外れ外れ1位で巨人へ、京田選手はドラフト2位で中日ドラゴンズへと入団となった。だがここでも京田選手に大きなライバルが立ちはだかる。堂上直倫選手だ。2006年にドラフト1位で入団し、2016年には10年目にして初の規定打席に到達、その後10年かけてようやく才能を開花させた苦労人だ。
時間がかかった分ファンからの期待も非常に大きく、京田選手をドラフトで獲得した際もセカンドや他のポジションあたりで使うしかないのでは?といったものが非常に多かった。

努力する重要性を知っているからこその成長スピード

現在の京田選手は中日不動の1番ショートとして、そして新人王争いの筆頭候補として、大きな注目を集めるようになった。高校・大学、そしてプロ入り後、ずっとライバル選手たちに囲まれてきた京田選手にとって、プロの世界でここまで大きく注目されるなんて予想だにしなかっただろう。
だがそんな環境で野球をやってきた京田選手だからこそ、誰よりも努力することの大切さを知っているし、必死に食らいついていけば道が開けるということを実感しているのではないだろうか。
今後のドラゴンズは、間違いなく彼が引っ張っていくことになるだろう。これからは今まで以上に、京田選手に注目していきたい。


《関連データ》セ・リーグ打者 個人成績


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