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夢の4割打者は生まれる?打率にまつわるアレコレ

2017 8/25 10:07cut
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シーズン最高打率はバース選手

日本プロ野球でシーズン最高打率は、1986年にランディ・バース選手(阪神)が記録した打率.389(453打数176安打)だ。
バース選手は前年に打率.350(497打数174安打)、54本塁打、134打点の成績で三冠王を達成。1986年は他球団から例年以上のマークを浴びていた。そのなかで史上最高打率を達成したのだ。30年以上が経過した今でも(2016年終了時点)この打率は破られていない。
このバース選手の打率に肉薄したのが、イチロー選手(1994年、2000年)だ。当時のシーズン最多安打記録を塗り替えた1994年に、イチロー選手は打率.385(546打数210安打)を記録している。また、メジャーリーグへ移籍する前年にも打率.387(395打数153安打)とあと一歩に迫っていた。しかし、8月下旬に脇腹を負傷し、1カ月以上を残して戦線離脱。夢への挑戦はできなかった。

シーズン右打者最高打率は内川聖一選手

シーズン最高打率、通算最高打率と上位に名を連ねるのは左打者が多い。それは、左打者が右打者に比べて一塁ベースに近いことで内野安打となるケースが増えるからだ。1秒も変わらない世界ではあるが、プロ野球とはその中でしのぎを削っているのである。

その不利とも言える状況の中、右打者でシーズン最高打率をマークしているのは内川聖一選手(ソフトバンク)だ。内川選手がソフトバンクに移籍する前の横浜ベイスターズ時代、2008年に記録した打率.378(500打数189安打)が2016年終了時点で歴代トップとなっている。
この年、初の規定3割を記録した内川選手は7年連続で打率3割を達成。球界を代表する打者へと成長した。その内川選手を指導したのが杉村繁コーチだ。杉村コーチは横浜からヤクルトに移籍後も山田哲人選手(ヤクルト)も指導しており、その指導法には定評がある。

また、右打者における通算打率での歴代1位はブーマー・ウェルズ選手(ダイエー他)の打率.317(4451打数1413安打)だ。内川選手は2016年終了時点で打率.310(6114打数1896安打)となっており記録更新に期待が掛かる。

通算打率トップはレロン・リー選手

プロ野球において通算打率の歴代1位(4000打数以上)はレロン・リー選手(元ロッテ)だ。リー選手は1977年から11年間にわたりロッテオリオンズで活躍。実弟のレオン・リー選手(元ヤクルト他)も日本でプレーし実績を残すなど、兄弟揃って日本球界で活躍した外国人選手でもある。

レロン・リー選手は来日1年目に打率.317(467打数148安打)、34本塁打、109打点の成績を残し、最多本塁打、最多打点の二冠王を獲得。1980年には打率.358(489打数175安打)で首位打者に輝くなど、日本球界で1315試合に出場し打率.320(4934打数1579安打)を記録した。1987年に現役を引退しているが、30年以上にわたり歴代1位の座をキープしている。

日本人選手で通算打率トップなのは「ミスタースワローズ」若松勉選手(元ヤクルト)だ。若松選手は公称168センチと小柄ながら首位打者を2回獲得。打率3割を12回達成し「小さな大打者」とも呼ばれていた。1989年に引退しているが、19年間の現役生活で打率.3198(6808打数2173安打)を記録。1987年に引退したレロン・リー選手に追いつくことはできなかったが日本人トップとなった。

また、イチロー選手は日本で9年間プレーしているが4000打数に達しておらず、通算打率ランキングに顔を出すことはない。しかし、打率.353(3619打数1278安打)とレロン・リー選手を.030以上も上回っており、別次元の成績ということは間違いないだろう。

通算代打打率トップもあの人が!

試合終盤のチャンスで登場し、球場を大きく盛り上げる代打の切り札。ここ最近では前田智徳選手(元広島)、金本知憲選手(元阪神)などが挙げられる。レギュラーとして長らく活躍した選手が、体力の衰え、若手の台頭などでスタメンから外れ、役割が代打へと変更され「切り札」となることが多い。

スタメンとは違い、1試合で1打席のみの勝負になることが多く、プレッシャーは並大抵ではない。その代打において歴代最高打率(起用回数300回以上)を誇っているのは若松勉選手(ヤクルト)だ。通算打率ランキングでも2位に名を連ねる若松選手が、代打部門でトップとなっている。
主に晩年の3年間を代打として起用された若松選手は通算代打打率.349(258打数90安打)、12本塁打を記録。晩年は成績を落とす選手が多い中で結果を残している。

また、若松選手は代打サヨナラ本塁打を3本放っている。これは代打本塁打の世界記録保持者(27本)である高井保弘選手と同じくトップ。また、2試合連続代打サヨナラ本塁打の日本タイ記録も保持しており、まさに「代打の切り札」だった。

夢の4割打者は現れるか

2017年シーズン開幕から好調をキープしていた近藤健介選手(日本ハム)。6月6日(出場50試合目)の時点で打率.407(150打数61安打)と4割をキープ。大谷翔平選手が離脱しチームが下位に低迷する中で、ひとり気炎を吐いていた。しかし、故障により手術を選択。シーズン中の復帰は絶望的となり、夢の4割はお預けとなった。

かつて、日本球界で規定打席に到達しての4割打者は誕生していない。一方、メジャーリーグの世界では1900年以降で8人の選手によって13回記録されている。歴代1位の記録を持っているのは野球殿堂入りも果たしているナップ・ラジョイ選手(元フィラデルファイア・アスレチックス他)だ。
1901年にラジョイ選手は打率.426(544打数232安打)を記録。100年以上が経過した2016年終了時点でも破られていない。また、ラジョイ選手は所属したクリーブランド・ブロンコスのチーム名をクリーブランド・ナップスとされるほど影響力の強い選手でもあった。

最後の4割打者は1941年。テッド・ウイリアムズ選手(レッドソックス)となっており打率.406(456打数185安打)を記録している。近年では1994年にトニー・グウィン選手(元パドレス)が記録した打率.394(419打数165安打)が最も4割に近づいている。
メジャーリーグにおいても長らく誕生していない4割打者が誕生する日は訪れるのだろうか。打率4割の夢を叶えてくれる選手の登場を期待したい。