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中継ぎから先発へ転向し結果を残す!美馬学

2017 8/25 10:07cut
野球、ボール、グローブ
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横綱・稀勢の里関と同郷!

茨城権取手市出身の美馬学選手は、中学校時代には第72代横綱である稀勢の里関とも親交があった。稀勢の里関は中学時代に軟式野球を行っており、対戦経験もあるという。現在は互いにLINEを送り合う仲だ。

高校は地元の藤代高校へ進学するも甲子園出場はならなかった。その後、中央大学へと進学したが、一部リーグでは2試合のみの登板で未勝利。二部リーグでは27試合に登板し4勝4敗の成績を残している。また、4年春は二部ではあるものの、10試合に登板し21.2回を投げ防御率1.68で優勝に貢献。MVPを獲得している。しかし、その後大学生活で2度目の手術を経験。安芸のリーグ戦でも1試合のみの登板に終わっている。

プロ志望届は出さずに社会人野球の東京ガスへと入社。榎田大樹選手(現阪神)とチームメートとなった。東京ガスでは榎田選手が先発、美馬選手がクローザーとして活躍。美馬選手は都市対抗野球でも2年間で4試合に登板し4.1回を投げ、被安打0、奪三振5、防御率0.00の成績を残している。

ドラフト解禁年となった2010年のドラフト会議では榎田選手が阪神タイガースに1位指名され、美馬選手が東北楽天ゴールデンイーグルスに2位指名を受けた。東京ガスの2枚看板が揃って上位指名でプロ入りを果たしたのだ。プロ投手2人が抜けた東京ガスではあるが、翌年には石川歩選手(現ロッテ)が入社するなど好投手の循環は続いている。

中継ぎから先発へ転向した2年目のシーズン

2010年ドラフト2位で楽天へと入団した美馬選手。ルーキーイヤーとなった2011年は開幕から中継ぎとして起用され、6月までで23試合に登板。2勝1敗、5ホールド、防御率3.08の成績を残す。しかし、ヒジを痛め登録を抹消されリハビリに専念。一軍での登板は6月29日以降なくシーズンを終えている。

2年目のシーズンとなった2012年は中継ぎから先発へ転向。中継ぎで毎日投げるよりも、先発として週に1回投げる方がヒジへの負担が少ないことからである。星野仙一監督が美馬選手へとアドバイスを送ったことによりこれが実現した。

先発となった美馬選手は二軍で調整後に一軍へ昇格。年間を通じて23試合(22先発)で8勝10敗、154.2回を投げ防御率3.08をマーク。二ケタ勝利には届かなかったものの、転向1年目で規定投球回に到達し田中将大選手(現ヤンキース)の10勝に次ぐ勝ち星を挙げている。

翌2013年シーズンは開幕ローテーションに入り5月下旬までローテーションを守り4勝(3敗)をマークするなど、自身初となる二ケタ勝利への期待が高まった。しかし、ヒジの痛みで2度の登録抹消があり6勝(5敗)に終わっている。

2013年日本シリーズMVP

2013年シーズンは6勝(5敗)に終わった美馬選手だが、クライマックスシリーズでは神がかり的な投球を見せてくれた。ロッテと争ったクライマックスシリーズファイナルステージでは第3戦に先発し、ロッテ打線を4安打に封じ込め完封勝利。日本シリーズ進出へ王手を掛ける1勝をマークした。

クライマックスシリーズでの登板は1試合のみだった美馬選手。日本シリーズでは日本一の立役者となる活躍を見せる。1勝1敗で迎えた第3戦の先発を任された美馬選手は、6回途中まで巨人打線を無四球、被安打4に封じ込めみ無失点でリリーフ陣に後を託す。2番手のレイ選手が8回に1点を失ったものの、5-1で楽天が勝利し美馬選手に勝ち星がついた。

楽天が3勝2敗で迎えた第6戦。エースの田中選手で必勝を期したがまさかの敗戦。巨人先発の菅野智之選手に楽天打線は7回2失点に抑えられ敗戦。3勝3敗で運命の第7戦を迎えることになる。

最終決戦の先発を任された美馬選手。雨が降る中で淡々と投げ続け6回無失点でルーキーの則本昂大選手へとバトンを繋ぐ。則本選手も2回を無失点に抑え、最終回のマウンドには前日に完投し160球を投じていた田中選手がマウンドへ登る。田中選手はピンチを招くものの無失点に抑え勝利。楽天は球団創設以来初となる日本一に輝いた。

美馬選手は第3戦、第7戦で勝利投手になりMVPを獲得。クライマックスシリーズ含めて3試合で3勝、防御率0.00の成績を残している。

苦悩の2年間から復活へ

2013年シーズンに日本シリーズMVPを受賞するなど、2014年は更なる飛躍を期待されていた美馬選手。しかし14試合の登板で2勝9敗、防御率4.83と期待を大きく裏切ることとなり、チームは最下位となってしまう。

翌2015年シーズンも16試合の登板で3勝7敗、防御率3.44と今ひとつ。シーズン途中にはヒジの手術も行うなど思うような活躍はできなかった。

2年続けて不本意な成績となった美馬選手が、再起を賭けて臨んだ2016年シーズン。シーズン初登板を自身初の完封勝利で飾ると4連勝を達成。前半戦で6勝3敗、防御率3.69の成績を残した。後半戦は勝ち星が伸びず、年間を通じて9勝9敗、防御率4.30に終わっている。自身初となる二ケタ勝利はならなかったものの、2012年以来の規定投球回に到達するなど復活を印象づけた。

オールスターゲームにも初選出された2017年

2013年ポストシーズンの栄光からどん底に落ちた美馬選手だが、2016年シーズンに復活。2017年シーズンは再び期待を掛けられる存在となった。

この年の開幕投手は、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に則本選手が日本代表として参加していた影響で美馬選手が務めている。本来はFAで埼玉西武ライオンズから加入した岸孝之選手が、則本選手の代わりに開幕投手を務める予定だった。しかし、開幕前にインフルエンザを発症。美馬選手に大役が回ってきた。

この試合で美馬選手は6回3失点と、勝ち星はつかなかったものの、試合を最低限作っている。その後もローテーションを守り4連勝。前半戦では15試合に登板し7勝2敗、102.1回を投げ防御率2.46と好調をキープ。この成績からオールスターゲームにも初めて監督推薦として出場することになった。

アマチュア時代にクローザーだった選手がプロで先発に転向。日本シリーズMVPを獲得し、ローテーションの一角にまで上り詰めた。1986年生まれの美馬選手はまだ若い。これから中堅、ベテランとなっても楽天の投手陣を支えてくれることに期待したい。


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