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横浜DeNAベイスターズ宮崎敏郎は天才!?そのバッティングに迫る

2017 8/25 10:07Mimu
バッター
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前半戦を打率トップでターン

2017年シーズン、首位打者争いに彗星のごとく現れた宮﨑敏郎選手。前半戦までの成績は打率.351(248-87) 7本塁打 36打点。読売ジャイアンツの坂本勇人選手らとハイレベルな首位打者争いを繰り広げ、オールスターにも選出された。2016年シーズンも規定打席不足ながら素晴らしい成績を残しており、打率トップに躍り出た際も、DeNAファンからすれば「とうとう出てきたな」という印象だ。

172cmと小柄ながらもがっちりとした体型をしており、一見すれば長距離砲のようにも見える。しかし、実際はかなりの巧打者であり、洗練された技術を持っている選手だ。2017年でプロ5年目にもかかわらず、ベテラン選手のような熟練した技を持っている。

抜群のバットコントロール!右にも左にも満遍なく打てる

宮﨑選手の最大の特徴は、やはり抜群のバットコントロールだろう。特に内角打ちは絶品の一言。腕をしっかりとたたみ、体を回転させて上手く裁くことができる。まるで落合博光氏を彷彿とさせるような内角打ちだ。6月15日のロッテ戦では、唐川侑己選手の内角高めの変化球を上手く裁き、満塁ホームランも放っている。

それでいて流し打ちの技術も高く、ライト方向へきれいなヒットを放つこともできる。前半戦終了時点での安打方向を見てみると、レフト方向に25本、センター方向に32本、ライト方向に30本と、本当にきれいに打ち分けていることがわかる。球種によっても苦手が無く、ストレートも変化球もしっかりととらえている。本当に見事なバットコントロールだ。

ツーストライクからの打率も高い!簡単に打ち取ることのできない打者

宮﨑選手のバットコントロールの高さを示す数字に、ツーストライクからの打率がある。どんな一流打者でも、追い込まれてからの打率はガクッと下がってしまうものなのだが、宮﨑選手は追い込まれてからでも.291という高打率を残している。特にカウント2-2の時の打率は.400。唐川選手から放った満塁ホームランも2-2からだった。

三振も非常に少なく、2017年前半戦終了時点で三振は25個(274打席)。2016年シーズンでも101試合335打席でたったの30個しかない。選球眼の良さもあるが(ボール球見極め率は8割近い)、追い込まれてからも自分の打撃がしっかりとできているのだろう。

独特のバッティングフォームは小学校から

宮﨑選手といえば、その独特のバッティングフォームも印象的だ。左足のかかとは浮かせるぐらいで体重はほとんど軸足に乗せ、バットを胸よりもやや低い位置で揺らしながらタイミングを取っている、非常にリラックスしたフォームだ。ピッチャーの始動に合わせて左足を大きくあげると、そのままスッと下ろし右足に体重を残したままスイングする。このフォームだと体が前に突っ込むことがないため、ボールをしっかり引きつけて打つことができるし、軸が安定としているため、内角も体の回転で対応することができるそうだ。

実は小学校時代からほとんどフォームが変わっていないらしく、その理由も「打てない時期がなかった」からだという。同僚の梶谷隆幸選手は彼のことを「天才」と評しているが、まさにその通りだろう。

実際に宮﨑選手のアマチュア時代の成績を見てみても、その非凡さを伺うことができる。佐賀県立厳木(きゅうらぎ)高校時代は投手ながら4番も務め、高校通算24本塁打を記録。日本文理大学進学後も、4年生の秋までの7シーズンで首位打者2度、MVPを3度獲得する大活躍を見せた。特に4年秋の打率は.619と驚異的な数字を残している。当時からずば抜けたバッティング技術を持っていたということだ。

技術だけでなく勝負強さも持ち合わせる

加えて今年は勝負強さにも磨きがかかってきた。2017年シーズンの得点圏打率は.343、これがビハインド時になると.391にもなる。ロッテ戦での満塁ホームランも、1-2と1点ビハインドからの逆転ホームランであった。
ちなみにこのホームランは今シーズン5号であったが、6月9日にはなった4号ホームランも、西武戦で9回表2-3の1点ビハインドから飛び出した逆転ツーランホームランだった。こちらもカウント2-2から、相手守護神の増田選手の甘いストレートを見事に1発で仕留めていた。ホームランの本数こそ多くはないが、ここぞの場面で試合を決める1発を放つことができる打者なのだ。

この勝負強さもアマチュア時代から伺うことができる。セガサミー時代の2年目、都市対抗野球初戦の日本通運との試合でのことだった。この日はミスターこと長嶋茂雄さんが観戦していたのだが、そのミスターの目の前で逆転満塁ホームランを放ったのだ。8回裏2点ビハインドの場面で飛び出した、劇的な1発。3年ぶりとなるセガサミー初戦突破に大きく貢献する活躍であった。

ちなみに長島さんは2007年から「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ(ゴルフの大会)」を主催しており、その縁もあって試合前にセガサミーの選手たちを激励していた。

過去には守備で大失態も

これだけの高い技術、勝負強さを持ち合わせていながら、チームバッティングも欠かさない。ランナー2塁の状況ではほとんどの打球を右に打っており、たとえヒットにならなくともキッチリとランナーを進める打撃をする。宮﨑選手の後ろにはこれまた勝負強い戸柱恭平選手が座っており、宮﨑選手はチームの潤滑油のような存在だ。

このように今となってはチームに欠かせない宮﨑選手であるが、数年前には1軍に呼ばれない時期もあった。以前からの宮﨑選手を知っているファンの方なら、2014年4月、阪神戦でのことはよく覚えているだろう。
この日セカンドの守備についていた宮﨑選手であったが、大和選手のバント処理の際にファーストベースに入るも、なんとよそ見して送球をスルーしてしまう大失態を犯してしまった。これには当時の中畑監督も激怒し、その日のうちに1軍を抹消されてしまった。

ひたむきに前を向き続け、初の首位打者となるか

これには宮﨑選手も「プロ生活、終わったな」と思ったそうなのだが、皮肉なことに直後の2軍戦ではバッティングが大当たり。下を向いてばかり居ても仕方がないから前を向こうと誓い、ひたすら練習に集中。学生時代から「練習の虫」といわれるほど練習熱心ではあったが、この失態以降は、今まで以上に守備への意識を高く持ったそうだ。

そして翌2015年の6月に1軍に昇格すると、7月頃からはスタメン・代打で出番がどんどん増え、打率は.289(152-44)を残すと、守備では40試合セカンドを守りながらノーエラー。成長した姿を見せることができた。

今となっては、セリーグの3塁手の中ではトップクラスと評価されるほどの守備力を持っているが、数年前はこんなことがあったのだ。今でも試合がある日は誰よりも早く球場入りし、練習しているという。デーゲームの日はなんと朝7時に球場入りすることもあるそうだ。目下首位打者争いをひた走っているような選手でも苦しい時期を乗り越え、知られざる努力を重ねここまでやってこれたのだ。