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ツーシームに秘密あり!?ベイスターズの絶対的クローザー・山崎康晃

2017 8/3 12:07Mimu
野球ボール,グローブ
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すっかりおなじみとなった康晃ジャンプ

「ピッチャー 山崎康晃」 彼の名前がコールされた瞬間、球場の空気ががらっと変わる。登場曲に合わせて観客たちがジャンプする「康晃ジャンプ」は、もはや横浜スタジアムの名物の1つとなった。球場が一体となり、これからお祭りでも始まるかのように、彼の登場を迎える。
2017年シーズンは、4月中盤ごろに中継ぎ降格となってしまったが、5月頃より再びクローザーに復帰。やはりベイスターズの勝利を締めくくるのは彼しかいない。今回は、今後もベイスターズの守護神として活躍するであろう、山崎康晃選手を紹介していく。

1年目からクローザーに大抜擢!新人王に選ばれるほどの活躍

山崎選手は帝京高校から亜細亜大学を経て、2014年のドラフト1位で横浜DeNAベイスターズへと入団。新人ながら開幕からクローザーを任される。もともとは先発投手として期待されていたのだが、オープン戦でなかなか結果が出ずに中継ぎに降格。
しかし、開幕直前になって前年のクローザーだった三上朋也選手が怪我で戦列を離れてしまい、その代役に山崎選手が抜擢されたのだ。もともと大学3年生の時の国際試合でクローザー経験があった山崎選手、首脳陣の期待以上の働きを見せ、様々な新人セーブ記録を樹立していく。
3月31日のカープ戦でプロ初セーブを記録すると、4月22日から5月8日まで新人記録となる9試合連続セーブも達成。5月の月間10セーブ、そしてシーズン37セーブもNPBの新人記録となっている。最終的な成績は58試合で2勝4敗37セーブ 防御率1.92、セーブ機会での失敗はほとんどなく、文句なしでの新人王に選出された。

2年目後半からやや不安定な投球が多くなるも3年目5月には復調

2年目の2016年シーズンも引き続きクローザーを任されると、前半戦だけで20セーブを挙げるなど前年以上のハイペースでセーブを記録していく。またオールスターにも出場し、帝京高校時代の先輩である原口文仁選手とバッテリーを組むというシーンもあった。
だが8月には不振に陥ってしまい、炎上を繰り返して2軍に降格してしまうなど、やや不安定な部分も多く見られた。それでも2年連続の30セーブ以上を記録し、新人から2年連続で30セーブをマークした史上初の選手となった。
だが2017年シーズンは、2016年シーズンの後半から見られたような不安定な部分が目立つようになる。特に4月13日の阪神戦で3失点、14日のヤクルト戦でも1失点してしまい、2日連続でセーブ失敗。パットン選手にクローザーを譲り、セットアッパーに降格してしまった。
だがそれ以降は安定感を取り戻し、3点以上あった防御率も0点台まで戻してきた。5月20日にはクローザーに復帰。やはり彼には勝利の瞬間のマウンドが1番似合うようだ。

鋭く落ちるツーシームが何よりの武器

そんな山﨑選手の代名詞といえば、鋭く落ちるツーシームだ。ツーシームというと、本来は打者の手元で小さく変化して、バットの芯を外すためのボールである。しかし、山﨑選手のツーシームは、まるでフォークボールかのように大きく落ちていくのが特徴だ。
それでいて球速は140km/h前後を誇っており、右打者には内に食い込んでくるように、左打者からは逃げていくようにストン落ちていく。落差もこの球速からは考えられないほど大きく、その軌道はかつて大魔神と呼ばれた佐々木主浩さんのフォークを彷彿とさせるという声も多い。入団以降、投球回数よりも多い奪三振数を誇っているのも、この球のおかげだろう。
とはいえ、この球はツーシームと呼ぶにはあまりにも変化が大きすぎる。本来ツーシームは空振りを取るための球ではないはずなのだ。この球はいったいどのような経緯で生まれ、どのように投げているのだろうか。

実はスプリット?山崎康晃のツーシームの秘密とは

この球は大学時代に誕生した。亜細亜大学時代、2学年上の先輩に福岡ソフトバンクホークスの東浜巨選手、1学年上の先輩に広島東洋カープの九里亜連選手らがおり、彼らから握りを教わったという。大学時代は山﨑選手も先発投手として起用されており、少しでも長いイニングを投げるために効果的な球を覚えたいという意図で覚えたそうだ。
しかし、大学3年生になる頃にいろいろと工夫しながらこの球を投げていたところ、少し指を開いて投げれば、スピードはそのままにかなり落差が出てくるようになったそうだ。どちらかといえばツーシームよりもスプリットボールに近いだろう。以降この球を決め球として使うようになり、奪三振も大幅に増えた。
実はこの球をツーシームと呼んでいるのは本人だけで、解説者やOBはスプリットのように落ちる球といっているし、この球を捕球しているキャッチャーたちもスプリットとして認識している。あげくこの球を伝授した東浜選手でさえ、スプリットといっているほどだ。
だが山﨑選手はこの球を尊敬する先輩からツーシームとして教わったということで、ずっとツーシームと呼んでいるそうだ。本人がいうには、今後もツーシーム以外の呼び方をすることはないらしい。

特徴的なインステップから力強いストレートを投げ込む

山崎選手のもう1つの特徴は、インステップだ。他の右投手と比べても山崎選手が踏み出す足は、かなり3塁ベースによっている。体の正面に踏み出したときに比べると、右腕が高く上がりやすく、より力のある球が投げやすいフォームである。
横の角度もかなりのものだ。右腕が3塁寄りからでてくるため、特に右打者に対しては自分の体に当たるのではないかという錯覚を与えてしまうほどだ。山崎選手といえば、ツーシームだけでなく、最速152km/hを誇るストレートも大きな武器。威力のあるストレートが、まるで体に向かって飛んでくるのだ。打者にとっては大きな脅威だろう。
ただし、このフォームはひざや腰への負担は大きくなってしまうので、あまり真似することはお勧めできない。幼いころからこのステップで投げてきた山崎選手だからこそ、故障もなくここまで投げてくることができたのだ。

いずれは球史に名を残すクローザーへ

山﨑選手はこのツーシームとストレートを武器に、プロの世界で戦ってきた。どちらも山崎選手にしかない特徴を持った球だ。やはり自分だけの武器を磨き上げていくのが、プロで大成していくには大切なのだろう。
きっとこれから山崎選手は、球史に名を残していくような選手になっていくかと思う。それだけのポテンシャルは十分に持っている選手だ。数十年後、歴代最高のクローザーは誰かという議論になった時、彼の名前を挙げる人も多くなるだろう。