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松井裕樹選手へ5球団入札!2013年ドラフトを振り返る

2017 6/30 12:56cut
グローブとボール
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Photo by ygor/Shutterstock.com

2013年のドラフト事情とは?

第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催され調整に苦しむ選手も出てくる中で始まった2013年のペナントレース。
シーズンでは田中将大選手(現ヤンキース)、アンドリュー・ジョーンズ選手、ケーシー・マギー選手(現巨人)らの活躍で東北楽天ゴールデンイーグルスが球団創設以来初のリーグ優勝。田中選手は前人未踏の24勝1セーブという記録をひっさげて日本シリーズに臨む直前にドラフト会議は行われた。
この年の目玉は前年(2012年)夏の甲子園で大会史上最多となる10者連続三振、1試合22奪三振を記録した松井裕樹選手(桐光学園高)だ。そして、大学生では大瀬良大地選手(九州共立大)が福岡六大学で38勝、防御率1点台を記録しており即戦力として注目が集まっていた。
他には藤浪晋太郎選手(阪神)の一学年下ながらバッテリーを組み春夏連覇に貢献した森友哉選手(大阪桐蔭高)、東京ガスのエースである石川歩選手あたりも1巡目指名候補として取り上げられていたのが2013年だ。

1位指名で10球団が重複

ドラフト1巡目は大方の予想通りに松井選手に人気が集まり5球団競合となった。ここで当たりくじを引いたのはパ・リーグ制覇で勢いに乗る楽天だった。前年(2012年)の森雄大選手(東福岡高)に続き2年連続で抽選に勝ち運の強さを見せた。
大瀬良選手、石川選手はそれぞれ広島、ロッテが交渉権を獲得。即戦力候補として期待の高い投手を補強することに成功している。阪神が獲得に動くと思われていた森選手は西武が一本釣りに成功。
また、日本ハムは3度抽選を外す結果となっている。

【ドラフト1巡目指名重複選手】
松井裕樹選手(桐光学園高):☆楽天、日本ハム、DeNA、ソフトバンク、中日
大瀬良大地選手(九州共立大):☆広島、ヤクルト、阪神
石川歩選手(東京ガス):☆ロッテ、巨人

【単独1巡目指名】
吉田一将選手(JR東日本):オリックス
森友哉選手:(大阪桐蔭高):西武

【ハズレ1巡目指名重複】
柿田裕太選手(日本生命):☆DeNA、日本ハム、阪神
杉浦稔大選手(國學院大):☆ヤクルト、ソフトバンク

【ハズレ1巡目指名】
小林誠司選手(日本生命):巨人
鈴木翔太選手(聖隷クリストファー高):中日

【ハズレハズレ1巡目指名重複】
岩貞祐太選手(横浜商科大):☆阪神、日本ハム

【ハズレハズレ1巡目指名】
加治屋蓮選手(JR九州):ソフトバンク

【ハズレハズレハズレ1巡目指名】
渡辺諒選手(東海大甲府高):日本ハム

☆は交渉権獲得

広島は前年の高校生2人から大卒社会人へ

前年(2012年)のドラフト1巡目で高橋大樹選手(龍谷大平安高)、2巡目で鈴木誠也選手(二松学舎大附属高)と2人の高校生を指名した広島東洋カープ。この年は1位から大瀬良大地選手(九州共立大)、久里亜蓮選手(亜細亜大)、田中広輔選手(JR東日本)、西原圭大選手(ニチダイ)と4巡目まで大卒、社会人を指名し即戦力を集めることに成功した。
特に上位3選手はチームの戦力アップに大きく貢献。
大瀬良選手は1年目から期待に応え、10勝をマークし新人王を獲得。その後は中継ぎとして起用されている。2016年シーズンは故障もあり、1年を通じて働くことはできなかったものの17試合に登板。
久里選手も2016年に先発、中継ぎとして27試合に登板し、ローテーションの谷間を埋めるなど要所で役割を果たした。田中選手は菊池涼介選手、丸佳浩選手とともに「タナ・キク・マル」としてチームを牽引。第4回WBCに参加するなど日本を代表する選手に成長している。
1年目から即戦力となったのは大瀬良選手のみだったが、3年目のシーズンまでに3選手共に結果を出しており成功したドラフト事例といえそうだ。

下位指名から飛躍を遂げた選手達

この年のドラフトでも下位指名から飛躍を遂げた選手が数多く存在している。
ロッテは5巡目、6巡目で井上晴哉選手(日本生命)、二木康太選手(鹿児島情報高)を指名した。井上選手は「アジャ」の愛称で親しまれ、一時は4番を任されるなど奮闘中。2017年シーズンも開幕一軍を掴んでいる。
二木選手は2016年シーズンにブレイク22試合の登板で7勝9敗と一定の結果を残した。2017年シーズンも低迷するチームの中でゴールデンウィーク現在まで好投を続けており一年を通じた活躍が期待される。
日本ハムは4巡目で獲得した高梨裕稔選手(山梨学院大)が3年目のシーズンとなる2016年に10勝をマークし新人王を獲得。大卒3年目で新人王獲得は史上初の出来事だった。下位指名ということもあるが、大卒にありながら即戦力として計算せずに、育成を行い後の戦力にする日本ハムの方針がうかがえる。

光るソフトバンクの下位・育成指名

ソフトバンクは支配下で4名のみの指名となった2013年。最後の指名となった4巡目で獲得したのが上林誠知選手(仙台育英高)だ。2015年シーズンに一軍デビューを果たし、初アーチが逆転満塁本塁打と強烈なインパクトを残した。この年、15試合の出場ながらも打率.318、2本塁打、6打点をマークし2016年シーズンの飛躍を最も期待させてくれた選手でもある。
しかし、2016年シーズンは大不振。一軍でチャンスを与えられたものの結果を残すことはできずに、前年の出場試合数を下回る14試合に終わる。
そして迎えた2017年シーズンは開幕から好調をキープ。恐怖の下位打線として8番・右翼のポジションを確保し、年間を通じた活躍に期待が掛かる。
育成で指名した4選手の中で石川柊太選手(創価大)、曽根海成選手(京都国際高)、張本優大選手(佛教大)の3名が支配下登録された。
なかでも石川選手は第4回WBCでも活躍した千賀滉大選手、吉見一起選手(中日)らと自主トレを行っており絶賛されていた。2017年シーズンは開幕一軍切符を勝ち取り、中継ぎとして起用され飛躍が望まれている。
ソフトバンクは外国人選手の補強、FA選手の補強も行うが育成に力を入れることを重視しており、二軍、三軍の整備を行った。これが近年、ソフトバンクが上位争いを行っている理由の一つでもある。
2013年ドラフト組は、2016年シーズンで3シーズンプレーしたことになる。2017年シーズンは高卒の選手も4年目を迎え勝負の年だ。ここで結果を残すことができないと先は見えない。与えられてチャンスをものにし、1年でも長く現役生活を送れることを願いたい。