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高校、大学共にビッグ3が注目を浴びた2007年のドラフトを振り返る

2017 6/30 12:56cut
野球
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西武は裏金問題により指名権剥奪

2007年のドラフトは埼玉西武ライオンズの裏金問題が発覚したことで例年と様相が違っていた。
シーズンの開幕前3月上旬に西武の太田秀和球団社長がアマチュア2選手に1300万円前後の裏金を支給していたことを認め謝罪を行った。この一件があり西武はドラフト史上初の指名権剥奪となったのだ。
西武はドラフト1巡目から3巡目までを剥奪となり、高校生ドラフトの上位選手を指名することは出来なかった。そのために、11球団から遅れて4巡目で武隈祥太選手(旭川工業高)を指名したのが高校生ドラフトにおける最上位指名となっている。
この武隈選手が2014年から中継ぎでブレイクし2015年、2016年シーズンは2年連続で60試合以上に登板。今や、ブルペンでの中心的な存在となっているから野球は面白い。

高校生ドラフトはビッグ3に人気が集中

この年の高校生ドラフトで注目を集めたのは「高校ビッグ3」と呼ばれた中田翔選手(大阪桐蔭高)、佐藤由規選手(仙台育英高)、唐川侑己選手(成田高)だ。中田選手は1年時から超高校級スラッガーとして話題を集め「平成の怪物」とも称されていた。高校通算87本塁打だけでなく150キロを超えるストレートを投げており、今の時代なら大谷翔平選手にあやかり「二刀流」ともてはやされていただろう。

そして、2007年夏の甲子園で史上最速となる155キロを記録した佐藤由規選手。そのスピードボールに魅力が詰まっており、ドラフトでも人気を集めることが予想されていた。

成田高の唐川侑己選手も2006年春のセンバツで2試合に登板し18回を投げ自責点2、2007年夏の甲子園では強豪の広陵高相手に延長12回2失点完投。敗れはしたものの、まとまりの良さが注目を集めていた。

1巡目の入札では「高校ビッグ3」に指名が集中。

中田翔選手:オリックス、阪神、ソフトバンク、日本ハム
佐藤由規選手;ヤクルト、楽天、横浜(現DeNA)、中日、巨人
唐川侑己選手:広島、ロッテ

と指名権を剥奪された西武を除く11球団が3選手へ入札を行った。抽選の末に中田選手は日本ハム、佐藤選手はヤクルト、唐川選手はロッテがそれぞれ交渉権を獲得し入団に至っている。

3選手共に紆余曲折ありながらも2017年現在も現役を続けており、各チームの主力として活躍。アマチュア時代のビッグ3がそろってプロでも結果を残す希有な例となった。

大学生・社会人ドラフトもビッグ3!

高校生ドラフトが開催された10月3日からおよそ1ヶ月半を経て大学生社会人ドラフトが行われた。高校生ドラフト同様にこのドラフトも「大学ビッグ3」が注目の的となる。

2006年の北京オリンピック予選においてアマチュアから唯一の選出となった愛知工業大のエース左腕である長谷部康平選手。東都大学野球の名門・東洋大で大学通算33勝をマーク。現在は東浜巨選手(亜細亜大→ソフトバンク)が420奪三振で記録を更新しているが、奪った三振410個は当時の東都大学記録でもあった。慶応大のエース左腕で東京六大学で30勝をマークした加藤幹典選手。

この3人が注目を集め1巡目の指名を独占した。
大場翔太選手:ソフトバンク、巨人、阪神、横浜(現DeNA)、日本ハム、オリックス
長谷部康平選手:楽天、中日、広島、ロッテ、西武
加藤幹典選手:ヤクルト

加藤選手はヤクルトが単独での指名となり交渉権が確定。大場選手は6球団、長谷部選手は5球団が重複しソフトバンク、楽天が当たりくじを引き当てている。

即戦力として期待された3選手だったが、入団1年目となる2008年シーズンは好結果を残すことができずにプロの壁の厚さを思い知らされた。10年目のシーズンとなるはずだった2017年には3選手とも現役を退いており、アマチュア時代の評価が必ずしも好結果に結びつかなかったともいえる。

高校生ドラフトの下位指名から10年後の主力へ

高校生ドラフトではビッグ3に注目が集まったが、その他の指名にも有望選手は多く存在した。広島東洋カープは1巡目指名で安部友裕選手(福岡工業大附属城東高)、3巡目で丸佳浩選手(千葉経済大付属高)を指名。安部選手は2016年シーズンにルナ選手と併用され三塁手としてキャリア最高の115試合に出場。規定打席に到達しなかったものの打率.282をマークし優勝に貢献した。2017年シーズンも開幕から好調をキープし、高打率に加え足でも見せており盗塁王を狙える勢いだ。
3位で指名された丸選手は2011年にレギュラーを獲得し、2014年シーズンからは3シーズン連続で全試合に出場。2016年シーズンはキャリア初の20本塁打20盗塁を達成し「タナ・キク・マル」の一員としてリーグ優勝の原動力となった。
福岡ソフトバンクホークスの高校生ドラフトでは1巡目に岩嵜翔選手(市立船橋高)、3巡目に中村晃選手(帝京高)と2017年現在チームの主力として活躍中。
このようにビッグ3以外からも有望な選手が多数輩出されたのが2007年の高校生ドラフトだった。

行く選手、戻ってきた選手!メジャー選手2人が1巡目に

高校ビッグ3のインパクトが強く大学ビッグ3のインパクトは大きく無かった大学生・社会人ドラフト。しかし、10年経った現在でも活躍している選手は多くいる。

読売ジャイアンツのドラフト1位である村田透選手(現日本ハム)は上原浩治選手(カブス)の後輩に当たる大阪体育大学出身の即戦力候補だった。しかし、巨人での一軍出場は無く2010年シーズンで自由契約となり単身アメリカへ。マイナーリーグで経験を積み2015年にはクリーブランド・インディアンスで待望のメジャーデビュー・2017年シーズンからは逆輸入選手として北海道日本ハムファイターズでプレーしている。

村田選手が10年後に入団することになる日本ハムの1巡目は2004年、2005年にインディアンスでプレーしていた多田野数人選手を指名。即戦力として期待され1年目から8勝を挙げている。

日本ハムは3巡目に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表にも選出された宮西尚生選手(関西学院大)を指名。入団以来、9年連続で50試合以上の登板を果たすなど中継ぎの柱として実績を残している。

東北楽天ゴールデンイーグルス4巡目で聖澤諒(ひじりさわ りょう)選手(國學院大)、広島は4巡目で松山竜平選手(九州国際大)といった主力級の選手を指名しており、1巡目指名だけが全てでは無いと言うことを見せてくれている。