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話題性だけでなく実力もあるぞ!オコエ瑠偉選手

2017 6/28 09:44cut
>バッターⒸShutterstock.com
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驚異的な身体能力を魅せた関東一高時代

オコエ瑠偉選手はナイジェリア人の父、日本人の母を持ったハーフの選手だ。生まれは東京都の東村山市となっておりナイジェリアではない。そのため、日本語も問題なくしゃべることができ、高校も東東京の強豪校である関東一高へと進学している。

関東一高では3年夏の甲子園に出場し全国的な知名度をアップさせた。抜群の身体能力を誇り、躍動感溢れるプレーを魅せたオコエ選手。一塁強襲安打を二塁打にするなど、人間離れしたプレーを魅せたオコエ選手は甲子園終了後のU-18ワールドカップ日本代表にも選出され、打率.364(33打数12安打)を記録する。また、脚力を生かした広範囲にわたる守備もみせ、最優秀守備賞も獲得するのだ。

その後、プロ志望届を提出したオコエ選手はドラフト1位候補として注目を浴びるようになった。迎えたドラフト会議では、オコエ選手と同じく甲子園を沸かせた平沢大河選手(仙台育英高校)の抽選に外れた東北楽天ゴールデンイーグルスがハズレ1位で指名する。

ハズレ1位で指名が重複することはなくオコエ選手は楽天へと入団を果たすのだ。

球団史上初の「サクラサク」

2015年のドラフト1位で楽天へと入団したオコエ選手。2月1日に始まる春季キャンプ初日から注目を浴びる。高卒ルーキー野手としては異例となる一軍キャンプとなったオコエ選手は活躍してもしなくても新聞に取り上げられるほどの注目だった。キャンプ初日に詰まった当たりが多く不安視もされたが、池山隆寛打撃コーチの指導もあり2日目にはヒット性の当たりも見られるようになった。
このような、光景が毎日のようにスポーツ新聞に掲載されるのだ。これは高卒ルーキー野手としては異例のことで、シーズンオフのインタビューでも笑いながら回想していたほどだ。

それほど、周囲からの期待が多かったと言うことだろう。オープン戦でもオコエ選手は13試合に出場し打率.174(23打数4安打)、0本塁打、4打点、1盗塁の成績を残し「期待枠」として開幕一軍入りを果たした。梨田昌孝監督はオープン戦の全日程が終了後に「オコエもサクラ咲くでいいかな?」と独特の表現で開幕一軍入りを示唆。迎えた開幕メンバー発表日にオコエ選手は開幕登録メンバーに名を連ねていた。高卒新人の開幕一軍入りは楽天史上初のことだった。

初盗塁のベースがオークションへ

開幕一軍入りを果たしたオコエ選手は、開幕戦から代走で出場した。指名打者で出場していたジョニー・ゴームズ選手への代走ということもあり守備につくことはない。続く2戦目でも代走で出場したオコエ選手は、試合が延長に入り回ってきた初打席で四球を選ぶと盗塁を敢行。みごとに初盗塁を決めた。高卒新人選手による開幕カードでの盗塁成功は64年ぶりの記録となり話題になる。

オコエ選手の凄さはそれだけではない。この盗塁時の二塁ベースはオークションに掛けられたほど話題となるのだ。オコエ選手の直筆サイン入りのこのベースには100件以上の入札があり、最終的には落札金額が20万円となった。この20万円は東北復興チャリティー活動に当てられている。

オコエ選手はオークションに掛けられることを知ったときに「自分で欲しい。リッキー・ヘンダーソンみたいに掲げたい」と世界最多の盗塁数を誇るリッキー・ヘンダーソン選手のパフォーマンスへの意気込みを語ってくれた。続けて「実績が出ないと価値はないですよ」と冷静に語り自身が活躍し、価値を上げられるような成績を残す意気込みを見せてくれた。

アジアウインターリーグでの挑戦

開幕一軍を果たしたオコエ選手は途中、二軍落ちも経験するが年間を通じて51試合に出場、打率.185、1本塁打、6打点の成績を残す。高卒1年目の野手としては合格点を与えられる成績と言えるだろう。

一定の成績を残し、2016年シーズンを終えたオコエ選手は、さらなる飛躍のためにアジアウインターリーグへと派遣された。アジアウインターリーグは各球団の若手選手が派遣されイースタンリーグ、ウエスタンリーグで選抜チームを結成し欧州、韓国、台湾などの選抜チームとリーグ戦を行うのだ。毎年、日本からも各球団の若手選手が出場し、実力アップのために切磋琢磨しているリーグだ。

オコエ選手はイースタンリーグ選抜に所属し平沢選手、廣岡大志選手(ヤクルト)ら同期の選手たちとともにリーグ戦を行う。オコエ選手は親知らずの治療があるために8試合の出場で帰国するが、その中で打率.296、0本塁打、2打点の成績を残す。

成績以上に目を引いたのがオコエ選手の打撃フォームだった。東京ヤクルトスワローズのウラディミール・バレンティン選手を彷彿させる、上半身を揺らしながらのスイングで長打を4本放ったのだ。本塁打こそでなかったものの、長打が増えたのは成長の証と言えそうだ。

2年目のシーズンに向けて

アジアウインターリーグでフォームを改造し、2年目の飛躍が期待されたオコエ選手。1月から久米島へ入り込み自主トレを行っていたが、2月1日の春季キャンプを前にした1月31日に胃腸炎を発症。キャンプ前に暗雲が漂った。

しかし、2月1日には熱も下がり無事にキャンプへ参加しフリー打撃にも登場した。そのフリー打撃では柵越えが2本に終わり池山隆寛チーフコーチは「一軍クラスの球は打てない」、梨田昌孝監督も「下半身が使えていない」と首脳陣からは酷評されてしまうのだ。1年前のキャンプではボールが前に飛ばなかったオコエ選手だが、1年で周囲の見る目も大きく変わっており、結果が求められているのだ。

胃腸炎による体調不良もあったオコエ選手だが「気合いで大丈夫」と語っていたが、翌日にさらなる試練が待ち受けていた。右手の痛みを訴え急遽帰京し東京都内の病院で検査を受けたオコエ選手。診察の結果「右手薬指の靱帯損傷」と診断されてしまうのだ。この故障によりオコエ選手は開幕が絶望となり、リハビリ調整となってしまう。
梨田監督も「残念だけどやれることをしっかりとやってもらいたい」と語り二軍に合流を命じた。

高卒開幕一軍入りを果たした2年目のシーズンは波乱のスタートとなったが、シーズン途中に一軍昇格を果たし戦力となってくれることに期待がかかる。