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ルーキーイヤーからフル回転!則本昂大選手

2017 6/28 09:44cut
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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29年ぶり!ルーキーイヤーに開幕投手

2012年ドラフト会議で東北楽天ゴールデンイーグルスから2位指名を受けた則本昂大(のりもと たかひろ)選手。2013年のルーキーイヤーから開幕投手を任されるほどの期待を背負った船出だった。この年は第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)もありエースであった田中将大選手(現ヤンキース)が開幕戦を回避したため則本選手に白羽の矢が立ったのだ。

1984年の高野光選手(元ヤクルト)以来の新人投手による開幕投手となった則本選手は6.1回4失点、奪三振6、与四球1の投球で敗戦投手となってしまう。2試合目の登板となった翌週の試合で6回2失点と先発投手の役割を果たしプロ初勝利をマーク。この試合では打線の援護も10点あり則本選手も余裕を持って投げることができたのだ。

この年は田中選手が開幕から24連勝という大記録を打ち立て球団創設以来、初めてのリーグ優勝、日本一を達成した。メディアなどでは投手は田中選手、打線ではアンドリュー・ジョーンズ選手、ケイシー・マギー選手が多く取り上げられたが則本選手も27試合に登板し15勝8敗、170回、奪三振134、防御率3.34の成績を残し新人王を獲得した。シーズンにおいて則本選手も大きな貢献をしていたのだ。

日本シリーズでのフル回転

1年目のシーズンで開幕投手を務め15勝をマークした則本選手はポストシーズンでも活躍する。千葉ロッテマリーンズとのクライマックスシリーズファイナルステージ第2戦で先発登板を果たした則本選手は9回1失点の好投を見せるが、打線の援護がなく延長戦の末に試合には敗れてしまった。

田中選手らの活躍でチームはロッテを下し日本シリーズへと進出した楽天。日本シリーズ初戦の先発投手に則本選手を起用する。エースの田中選手ではなく則本選手を起用した星野仙一監督の采配は注目を集めた。

その則本選手は第1戦で読売ジャイアンツ相手に好投を見せるが、この試合でも打線の援護がなく敗戦投手となってしまう。これが則本選手にとってこの日本シリーズにおいて最後の先発登板となった。星野監督は則本選手を日本シリーズで中継ぎ待機させる作戦をとったのだ。

第5戦でその機会は訪れた。先発の辛島航選手が5回無失点でマウンドを降りると6回から則本選手が中継ぎとしてマウンドに登ったのだ。2-0とリードした状態だったが7回、9回に得点を許し2-2のビハインドのまま試合は延長戦へ。その延長10回、則本選手は打席が回ってくる。誰もが代打を送られると思われた瞬間だったが星野監督は則本選手を打席に向かわせる。結果、四球を選び出塁した則本選手は後続の安打もあり決勝点となるホームを踏んだのだ。

そして、迎えた第7戦では美馬学(みま まなぶ)選手が6回まで無失点と巨人打線を抑え7回から登板。7回、8回を0点に抑え田中選手へとバトンを繋いだ。

田中選手が最後、ピンチを招いたものの3-0で巨人を下しチーム史上初の日本一に輝いたのだ。その裏には則本選手のフル回転があったことを忘れてはいけない。

2014年シーズンからエースとして君臨

2013年シーズンオフにチームのエースであった田中選手がポスティング制度を用いてニューヨーク・ヤンキースへと移籍。則本選手は田中選手に替わるエースとして2年目にして期待されることになった。

その期待通りに開幕戦から埼玉西武ライオンズ相手に完投勝利を挙げ絶好のスタートを切ることに成功する。このとき西武の先発は2017年シーズンからチームメートとなる岸孝之選手だった。

その後も順調に白星を重ねた則本選手は30試合に登板し14勝10敗、202.2回を投げ204奪三振をマーク。リーグ最多の投球回数を投げ最多奪三振に輝く。この年から2016年シーズンまで則本選手は3年連続で最多投球回、最多奪三振をマークし名実ともに球界を代表する投手へと成長した。

則本選手の実力があったことはもちろんだが、田中選手が不在と言うことから生まれる責任感も大いにあったのだ。2014年シーズン以降でチームは低迷しているが則本選手はまさにエースとして奮闘しておりチームの大黒柱と言えるだろう。

プレミア12での悪夢

則本選手ペナントレースで好成績を残し日本代表にも選出されるようになる。日本代表としての則本選手で忘れられないのが、2015年のシーズンオフに行われたプレミア12だろう。

則本選手はチームでの役割である先発としてではなく、日本代表では中継ぎとして起用される。球威があり、三振を奪うことのできる変化球を持っている則本選手は中継ぎでも生きる、と小久保裕紀日本代表監督は判断したのだ。その起用に答えた則本選手は予選リーグから準々決勝まで5回を投げ自責点は0、奪三振7と圧倒的な成績を残した。

しかし、準決勝の韓国戦で悪夢がおそう。大谷翔平選手が完璧な内容で韓国打線を封じ7回を無失点に抑え3-0と3点リードの8回から則本選手がマウンドに登る。その則本選手は8回をわずか8球で抑え誰もが勝利を確信した状態で9回のマウンドに上がったのだ。

しかし、9回に則本選手は三連打を浴び1点を失うと続く打者にも死球を与え1死も取れず降板してしまうのだ。則本選手の後を受けた松井裕樹選手も押し出し四球などで失点を許し、この回なんと4失点。チームは逆転負けを喫してしまうのだ。

小久保監督が則本選手を9回も続投させたことにメディア、ファンからのバッシングが起こる。この悔しさを胸に則本選手は再起を誓い第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨んだのだ。

WBCではジョーカーを期待されるも……

プレミア12で悔しい思いをした則本選手だが、日本代表から外れることはなく第4回WBCでも日本代表入りを果たす。小久保監督は則本選手を「ジョーカー」と表現し先発、中継ぎどちらでも対応できるように準備を進めた。

迎えたWBCの1次ラウンド開幕戦で則本選手は先発石川歩選手(ロッテ)の後を受けて2番手として登板。しかし、2.2回を3失点と打ち込まれてしまう。2次ラウンド2戦目となったオランダ戦では6-5と1点リードの9回に登板するもまたしても失点を許してしまう。
ジョーカーとして期待された則本選手だったが2試合、3.2回を投げ防御率9.82と結果を残すことができなかった。
しかし、則本選手はこの悔しさを乗り越え次回の国際大会でも主戦投手として日本代表のマウンドに登ってくれることを期待している。