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台湾のスター的存在でもある陽岱鋼選手

2017 5/17 09:55cut
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台湾から高校野球留学のスポーツエリート

陽岱鋼(よう だいかん/ヤン・ダイガン)選手は1987年、スポーツ一家の三男として台湾で生まれ、少年時代は台湾のナショナルチームに所属していた。日本チームと対戦する機会があり、日本が好きだった陽岱鋼選手は、高校は野球留学で福岡第一高等学校へ入学。高校時代は4番遊撃手として39本塁打を記録すなど並々ならぬ才能を開花させた。

2005年のドラフトでは、日本ハムとソフトバンクの一巡指名を受けた。くじ引きの抽選結果の勘違いで王監督が交渉権を得たかに見え、一度はソフトバンク入団を期待した陽岱鋼選手だったが、くじ引きの本当の結果は日本ハムが交渉権を獲得。もともとは、兄・陽耀勲(ヤン・ヤオシュン)選手と同じソフトバンク入団を熱望していた陽岱鋼選手にとってはぬか喜びとなり、ドラフトの珍事件として話題になった。
その後、日本ハムの本拠地北海道に訪れるなどし、日本ハムの粘り強い交渉が実り入団に至った。その後のファイターズでのめざましい成果と人気を思えば、入団は決して間違いとは言えない。

日本ハム入団当初の登録名は「陽仲壽(ヤン・チョンソ)」としていたが、2009年に登録名を改名。「台湾には虎がいる」という意味の「岱」の入った登録名とし、「陽」の読みも、台湾風の「ヤン」から日本風の「よう」と変更した。
その後の活躍は目覚ましく、4度にわたるゴールデングラブ賞の受賞、ケガに泣かされることも多く、打率は3割には及ばないもののレギュラーとして活躍した日本ハム時代だった。二刀流の大谷翔平選手、スラッガー中田翔選手らとともに2016年日本一の立役者となったことは間違いない。

台湾のアスリート家族の存在 兄弟対決も

台湾アミ族出身の家族はトップアスリートばかりだ。妹はバスケットボール台湾代表選手、叔父やいとこもプロ野球選手と驚くほどのスポーツエリート家系に育っている。

2012年8月8日、ソフトバンクの長兄・陽耀勲(ヤン・ヤオシュン・兄は台湾読みで登録)投手と陽岱鋼選手との兄弟対決が実現した。プロ野球界でも珍しい兄弟対決の結果は、陽岱鋼選手がヒットを放ち、初の兄弟対決は弟の勝利。兄も弟も楽しんでいる様子の対戦は、ファンにも微笑ましい印象を与えたのだ。

長兄の陽耀勲投手はソフトバンクに所属、その後アメリカに渡ってピッツバーグパイレーツとマイナー契約する。次兄の陽耀華選手は日本の独立リーグ、愛媛マンダリンパイレーツなどでプレーし、2011年には独立リーグのベストナインに選ばれている。2017年現在、同じチームでプレーすることはできていないが、皆プロで活躍するトップアスリート家族なのだ。

チームをリーグ制覇に導いた二度のスーパーキャッチ

2016年、シーズン初旬に重ねた勝利から優勝確実かと思われたソフトバンクに対し、日本ハムは猛烈な追い上げで勝ちを重ね反撃する。交流戦終盤からは、球団新記録となる15連勝を達成し、ソフトバンクを追いすがる。そして、リーグ優勝の決定が近い大切な試合で、陽選手が素晴らしいプレーを見せた。

10月16日、優勝へのカウントダウンがかかったソフトバンクと日本ハムの直接対決。1点リードで迎えた7回裏、陽岱鋼選手は、ソフトバンク今宮選手からのフェンス直撃の長打コースをジャンピングキャッチ。過去にも同じような捕球で、ケガをしたとは思わせない迷いないスーパープレーだった。
しかし、その日のスーパープレーは一度ではなかった。1点リードのまま9回裏をむかえ、対するソフトバンクはランナー2死二、三塁。一打サヨナラというピンチで、ソフトバンク江川智晃(えがわ ともあき)選手から長打を思わせる大きな当たりが飛び出した。
それを陽岱鋼選手は、背走での「ザ・キャッチ」。ハラハラする試合展開は、陽選手の素晴らしい捕球で幕を閉じた。一試合2度のスーパープレーは、陽選手の守備力を野球ファンの心に強烈に焼き付けた。 敗れたソフトバンクの工藤公康監督も「あれを取られたら仕方ない」といった諦めのような顔が印象的な試合でもあった。

台湾との架け橋 いわば「台湾のイチロー」

陽選手といえば、その整った顔立ちとモデル並みのスラリとした体型で、女性からは絶大な人気だ。イケメンでプロ野球選手、奥様は台湾で芸能活動もこなすスターという、誰もがうらやむような経歴だ。

巨人入団が決定し、2017年のWBCチャイニーズタイペイとしての出場は辞退したものの、2013年のWBCでは一次リーグMVPを獲得するなど活躍し、日本のみならず台湾での人気は不動となっている。

台湾でも日本プロ野球がテレビ放送を企画されるなど、もともと親日の方が多い台湾で、両国に経済効果をあたえる架け橋としても大切な存在だ。ある意味「台湾のイチロー」といっても過言ではないだろう。巨人への移籍会見では台湾メディアも多数訪れ、台湾通訳が同席するなど異例のものとなった。

甘いマスクとモデル並みの体型を買われて、CMのみならずドラマ出演までもチャレンジするという陽選手は、プレーだけでなくさまざまな分野で目にする機会も多くなっている。

笑顔が輝くキャラクターで、スーパープレーが飛び出したあとのヒーローインタビューのお立ち台では、お笑い芸人のチャラ男ネタを彷彿とさせる「サンキューでーす!」を決め台詞とし、ユーモア溢れる切り返しでファンを沸かせる。

プライベートでは家庭を大切にする愛妻家というイメージが強く、礼儀正しくファンにも優しい印象だ。それが母国でもファンを増やした理由だろう。

巨人での活躍に期待

2016年に日本ハムで日本一となったものの、陽選手はFA宣言をし他球団との交渉を行ったが、同時に日本ハムとも交渉を行っている。オリックス、楽天などが獲得に乗り出す中で、陽選手は「実力派人気選手」に惜しみない年俸で迎え入れる巨人軍に入団。背番号は「2」で、推定5年15億円と好待遇での新天地。今後は、巨人軍での活躍が期待される。

日本ハム時代も2015年の肋骨亀裂骨折に耐えながらのプレーなど、怪我に泣かされることが多かった陽岱鋼選手だが、2017年の春季キャンプも下半身の張りなどから遅れをとっての参加となっている。

怪我をも恐れない全力プレーのスーパーキャッチは感動的だったが、今季は身体を万全に心がけてのプレーを期待したいものだ。