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2度のゴールデングラブ賞もレギュラーは危うい!?荒波翔は復活なるか

2017 5/17 09:55Mimu
野球 外野
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2017年はその存在をアピールすることができるか

2017年シーズンは後のないシーズンとなってしまうのが、横浜DeNAベイスターズの荒波翔(あらなみしょう)選手です。横浜高校から東海大学、そしてトヨタ自動車を経て、2010年のドラフト3位で横浜ベイスターズ(当時)に入団すると、2年目の2012年からレギュラーに定着。そこから2年連続のゴールデングラブ賞に輝く活躍を見せてくれました。そのスピード感のあふれるプレーはファンを魅了し、待望の地元出身スター選手の誕生かと思われていました。
しかし2014年からはケガの影響もあってか出場試合数が激減。特に2016年シーズンには桑原将志(くわはらまさゆき)選手がセンターに定着したこともあり、ますますその立場は危うくなってしまいました。その高い守備力も、試合に出場しなければ意味がありません。はたして、荒波選手は復活することができるのでしょうか。今回は彼の過去の成績を振り返るとともに、その復活のためのポイントを紹介していきましょう。

レギュラー定着1年目でゴールデングラブ賞獲得

まずはこれまでの荒波選手を紹介していきましょう。やはりその存在を大きく印象づけたのは、2012年ですね。開幕スタメンから試合に出場し、4月後半からは1番に定着。そしてそのまま1年間レギュラーを守り抜き、141試合に出場しました。
特に守備走塁面での活躍は本当に見事というほかありません。俊足を生かした広い守備範囲はもちろん、肩の強さもかなりのもので、10個の捕殺(送球でランナーを刺した回数)を記録したほどです。この数字が評価されてか、ゴールデングラブ賞を獲得しました。走塁面でも、リーグトップの7本の三塁打をマークしたほか、リーグ2位となる25盗塁も記録。スピード感あふれるプレーでファンを魅了します。
一方で打撃面ではやや課題が残りました。春先は非常に好調で、6月頃までは3割前後の打率をキープしていたのですが、好不調の波が激しく、特に6月後半と9月中盤の2度の不振は大きく響きました。最終的な打率は.268という数字でしたが、6月前半には3割近くあった打率が7月には.250になり、8月には.280まで戻すものの、9月には再び.260まで下降。来シーズンに向けての課題が大きく見つかったのです。

打撃成績を下げるも2年連続ゴールデングラブ賞

そして迎えた3年目の2013年シーズン、この年も1番センターの定位置を確保します。しかし、4月の中頃の広島カープ戦、3塁への盗塁を試みた際に接触プレーで右頬を痛めるアクシデントが起こります。診察の結果、右頬が陥没骨折していることが判明し、そのまま2軍に落とされてしまうのです。しかもこの盗塁もチームの作戦ではなく、独自の判断でのことでした。
チームの流れを止めた上にケガで離脱してしまい、当時の中畑監督に強く批判されました。5月に復帰できたのですが、今度は極度の打撃不振に陥ってしまい、打順を下位に下げられてしまいます。秋頃には2試合連続で満塁のチャンスを逃してしまったこともあり、再び中畑監督から厳しい言葉をかけられてしまいました。最終的な成績は126試合の出場で.258に19盗塁。全体的に成績を下げてしまいます。
それでも、外野守備では良いところを見せました。この年はナイジャー・モーガン選手がセンターを希望していたこともあり、ライトのポジションを主に守っていましたが、捕殺は前年を超える16を記録。セリーグの外野手の中でNo.1の数字を残したのです。さらに失策数も0に抑え、2年連続のゴールデングラブ賞を獲得します。

期待された3年目も、若手にポジションを奪われる

2014年からはモーガン選手の退団によって再びセンターに戻ります。さらに、この年は梶谷隆幸(かじたにたかゆき)選手、筒香選手がそれぞれライト、レフトのポジションにコンバートされたため、彼らのサポートのためにも経験豊富なセンターの荒波選手には期待がかかっていました。しかし、荒波選手の立場はこの年からだんだんと怪しくなっていきます。
まず開幕は右手薬指のケガの影響で間に合わず。復帰後は満塁ホームランを打つなど、打撃好調をアピールするのですが、夏頃には右足のケガで再び登録抹消。その間に桑原選手が台頭してきたこともあり、それ以降はほとんど出番なしの状態となってしまいました。63試合の出場で.271 3本塁打を残すも、盗塁はたった9つに終わってしまい、アピールポイントであるはずの足を全く生かせず、悔しいシーズンに終わります。

若手と競争となった2015年シーズン

荒波選手のレギュラーが白紙に戻ってしまったわけですが、その競争相手は主に若手選手となります。93年生まれの桑原選手を中心に、94年生まれの乙坂智(おとさかとも)選手や95年生まれの関根大気(せきねたいき)選手らと争うことになったのです(荒波選手は86年生まれ)。それでも、開幕スタメンこそ桑原選手に譲ったものの、中盤以降は存在感を発揮しました。4人の成績は以下の通り

荒波翔  70試合 .298(188ー56) 4本塁打 14打点 4盗塁
桑原将志 60試合 .184(104ー19) 1本塁打 5打点 1盗塁
乙坂智  52試合 .226(124ー28) 3本塁打 10打点 2盗塁
関根大気 55試合 .222(144ー32) 1本塁打 10打点 8盗塁

こうしてみると、荒波選手の面目躍如と言ったところでしょうか。開幕スタメンだった桑原選手は調子が上がらず、4月中にスタメンのチャンスがやってきます。打撃も好調をキープし、前半戦での首位ターンに大きく貢献したといえるでしょう。特に得点圏打率は.355と勝負強さを見せました。
しかし、6月の後半に昨年と同じく右足の付け根を負傷してしまい、登録抹消。そして後半戦からはチーム全体が不調になってしまい、結局最下位になってしまったのです。チームが苦しいときに戦列を離れてしまっていたのは、すこし痛かったですね。

どん底を味わった2016年シーズン

2016年シーズン、荒波選手はどん底へとたたき落とされてしまいます。開幕戦こそスタメンを勝ち取るものの、調子が上がってこず、5月序盤へ2軍落ち。その後は9月まで1軍に上がってくることができず、結局36試合で.195という数字に。ヒットは17本、盗塁に至っては0という結果に終わってしまいました。
そして何よりも荒波選手にとって向かい風なのが、この間に桑原選手が完全にレギュラーに定着してしまったということです。桑原選手は133試合に出場し、規定打席にも到達。.284(462-131) 11本塁打 49打点 19盗塁という見事な成績を残したのです。特に打撃成績では荒波選手が今まで残せなかったようなの打率、本塁打数をマークしており、すっかりベイスターズの1番センターとしておなじみになりました。チームにとっては喜ばしいことですが、荒波選手にとっては首筋が寒くなる一方です。
今後荒波選手がレギュラーに返り咲くには、桑原選手以上の打撃成績を残し、かつケガをせずに1年間戦い抜くことが大切になるでしょう。その守備力では未だにDeNAの外野陣の中ではトップクラスです。それだけに、粗い打撃とケガの多ささえなんとかなれば、と願わずにはいられません。