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「最強ブルペン陣」で10年ぶりの世界一を目指すヤンキース

2019 1/22 11:00勝田聡
アダム・オッタビーノ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

FAのオッタビーノを獲得

田中将大の所属するニューヨーク・ヤンキースが、FAとなっていたアダム・オッタビーノを3年2700万ドル(約30億円)で契約し、獲得。NPBMの中継ぎ投手では、到底考えられないほどの大型契約だ。

主にコロラド・ロッキーズで守護神、セットアッパーを含む中継ぎとしてプレーしてきたオッタビーノ。これまでに366試合に登板し、防御率3.68の成績を残している。特に奪三振の多さは圧巻で、2018年も77.2回で112奪三振(K/9:12.98)、通算でも413回で464奪三振(同10.11)を記録している。スライダーとツーシームを武器としており、フォーシームはほとんど投げない。

球団によっては、守護神として起用してもおかしくないほどの実力を持っている選手だ。しかしヤンキースは、その他の中継ぎ陣が豪華だからという理由で、守護神どころか8回を投げるセットアッパーとしても起用しない可能性があるという。


【ロッキーズ公式】オッタビーノの投球

チャップマンにベタンセス、そしてブリトンもいる

2019年ヤンキース主なブルペン投手の2018年成績

ⒸSPAIA


2018年、ヤンキースの守護神はアロルディス・チャップマンだった。55試合の登板で32セーブを挙げ、防御率は2.45。51.1回を投げ93奪三振。K/9はキャリア2番目の数字となる16.31を記録している。この数字はMLBトップ(30イニング以上)でもあった。2019年も昨年と同様に守護神としての起用が濃厚だ。

生え抜きのデリン・ベタンセスもいる。2014年から本格化した中継ぎ右腕は、4年連続60試合以上に登板しており、ブルペンには欠かせない存在となっている。2018年も66試合に登板し、チームに大きく貢献してきた。

そして、このオフに再契約を果たしたザック・ブリトン。ボルチモア・オリオールズ時代の2016年には69試合で47セーブ、防御率0.54と圧倒的成績で最多セーブのタイトルも獲得した。この年は中継ぎ投手ながらサイ・ヤング賞の投票で、4位となるほどの活躍を見せていた。

確かに、この豪華メンバーを見れば「オッタビーノを守護神やセットアッパーとして起用しない」という可能性にも頷ける。


【MLB公式】ベタンセンスとチャップマンの投球

※2番目に投げているのはアンドリュー・ミラー

重要な試合では「ジョーカー」として

近年のMLBは中継ぎ投手の起用法が変わってきた。特に優勝争いやポストシーズンなど、いつも以上に負けられない一戦では、先発投手を早めに降板させ、4、5回あたりからでも惜しまずに中継ぎ投手を投入するのだ。その戦法を取るためには、質のよい中継ぎ陣が複数必要になる。

たとえば、昨年ナショナル・リーグ中地区を制したミルウォーキー・ブリュワーズがそうだった。ジェレミー・ジェフレス、コーリー・クネベル、ジョシュ・ヘイダーといった力のある中継ぎ陣を複数揃え、ヘイダーを「ジョーカー」として様々な場面で起用。

ロッキーズとのディビジョンシリーズでは1戦目から3連投、ロサンゼルス・ドジャースとのリーグ・チャンピオンシップでは4試合に登板したヘイダー。実にポストシーズン10試合中7試合に起用され、10回を投げ、防御率0.00。奪三振は16個と圧巻の投球を見せた。

登板シチュエーションも固定されていたわけではない。僅差の終盤に投げることもあれば、ビハインドの序盤もあった。また、4点リードの試合では流れを渡さないよう5回から7回の3イニングを投げた試合もある。


【MLB公式】ジョシュ・ヘイダーの投球

このように、中継ぎの役割を固定しないで登板させる「臨機応変な起用法」が増えてきた。

ヤンキースは、特にひとつのプレーで流れが変わることも多い短期決戦で(シーズン序盤からではないだろうが)優秀な中継ぎ投手を集め、力で押し切る戦法を取っていくつもりだろう。

田中をはじめ、ルイス・セベリーノやジェームス・パクストンら先発投手にとっても中継ぎ陣の充実は心強いはず。ヤンキースは、2009年以来10年ぶりのワールドチャンピオンを「最強ブルペン陣」で目指す。

※数字は2018年シーズン終了時点