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5年目64勝は日本人歴代トップの田中将大 スタイルを変えて復活した2018年

2019 1/12 07:00青木スラッガー
田中将大,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

メジャー5年目終了時点で日本人歴代トップの64勝

2018年シーズンでメジャー5年目を終えたヤンキース・田中将大。大谷翔平と同じく、1年目途中に靱帯損傷が発覚しながら、ここまで名門のローテーションを守り続けている。改めてその活躍を振り返りたい。

昨季の田中は、27先発156イニングで12勝6敗・防御率3.75。13勝12敗・防御率4.74だった2017年から大きく防御率を向上させた。序盤は防御率4点台で推移したが、6月に走塁で足を痛めて一旦故障者リスト入りした後は、復帰3戦目で完封勝利を飾るなど安定。正念場の9月は3勝1敗・防御率2.79と抜群の投球を見せ、良い形でシーズンを締めくくった。

13勝を挙げた1年目から、5年連続の12勝以上を達成。通算成績は64勝34敗・防御率3.59となり、現時点でメジャー通算勝利数はダルビッシュ有(57勝)、岩隈久志(63勝)を抜いて日本人3位に位置している。

トップ1・2は野茂英雄(123勝)、黒田博樹(79勝)となるが、5年目シーズン終了時点での通算勝利数は田中が歴代最多(野茂61勝、黒田57勝)。楽天時代の野村克也監督に「マー君、神の子、不思議な子」とまで言われた「負けない」投手ぶりは、大リーグでも健在だ。

安定感の裏にあった変化

抜群の安定感とは裏腹に、ここまで田中の投球スタイルは変化を繰り返してきている。

MLBの『Baseball Savant』で公開されているデータによると、2018年の球種別投球割合はスライダー(33.3%)、スプリット(30.8%)、フォーシーム(22.6%)、ツーシーム(5.4%)、カットボール(4%)、カーブ(3.9%)。スライダー・スプリットの決め球2つは毎年多投している。大きく変動してきているのはフォーシームとツーシームの割合だ。

1年目はフォーシーム(22.6%)、ツーシーム(23.4%)と同程度だったが、3年目の2016年はフォーシーム(6.5%)、ツーシーム(21.6%)とほとんど純粋なストレートを投げていない。当時チームメイトの黒田のようなツーシームを主体とするスタイルでキャリアハイの成績を残した。しかし、不振だった2017年を経て、昨季はツーシーム(5.4%)に対し、フォーシーム(22.6%)と割合が逆転している。

「魔球」とまで言われたツーシームを捨てる柔軟さ

2017年の田中は、ツーシームの被長打率が前年の.367から.674と攻略されていた。これは、同じころに流行したボールの下を狙ってフライを打ちにいく「フライボール革命」の影響を受けたとも考えられる。小さく沈む変化球はアッパー気味のスイング軌道に合いやすい。アストロズのバーランダーをはじめ、同時期から高めで勝負できるフォーシームの需要がMLB全体で高まってきている。

田中は速球系をフォーシーム主体に切り替えると同時に、スライダー・スプリットの合計割合が初めて60%に到達。コーナーを突く抜群の制球と大きな変化量で「魔球」とまで評されたツーシームをあっさり捨て、スタイルを変えて成績不振を乗り越えた。

楽天時代は剛腕といっていいだけの球威があった田中のボールも、大リーグでは並みの扱いになってしまう。それでもここまで安定した活躍を毎年続けているのは、状況を見て必要な方向へシフトしていく柔軟さ、器用さといった能力のたまものだろう。6年目となる今季は、一体どんな投球スタイルで勝ち星を積み上げていくのだろう。