継投策で勝ち上がるブリュワーズ
ナショナル・リーグ中地区を制し、ポストシーズンへと駒を進めてきたブリュワーズの投手陣が好投を続けている。そのブリュワーズの投手起用は他のチームと少し異なっている。
ポストシーズンでは継投が早くなるのが一般的とはいえ、多くのチームが先発投手に少しでも長いイニング投げてもらい、勝ちパターンの投手につなぐという基本方針を変えていない。一方でブリュワーズは、先発投手が苦しい投球となる前の早い段階で降板させ、次々と中継ぎ投手をつぎ込んでいくのである。今シーズン、レイズなどで用いられている「オープナー」とも少し違う起用法だ。
象徴的だったのが、ロッキーズとのディビジョンシリーズ第2戦だ。先発マウンドに上がったのは、本来中継ぎとして活躍しているブランドン・ウッドラフだった。この試合でブリュワーズは、オープナーの目的でもある「上位の強打者を抑え2回から本来の先発に引き継ぐ」継投策をとっていない。
先発のウッドラフは3イニングを投げ無失点、わずか1四球とほぼ完璧に抑えた。その四球で出した走者も盗塁死で退いたため、3イニングを9人で終えたことになる。つまりウッドラフを継いで投げる2番手投手も、1番打者と対峙することになった。この試合は延長10回までにウッドラフ含め6人の投手をつぎ込み、ウッドラフ以外にも3人が回またぎとなる1イニング以上を投げ、勝利を収めている。
このようにオープナーではなく、早めの継投で勝利を掴んできたブリュワーズ。この作戦を可能にするのはコーリー・ネーベル、ジョシュ・ヘイダー、ジェレミー・ジェフレスといった強力な中継ぎ陣が控えているからだ。
驚異の奪三振率を誇るジョシュ・ヘイダー
中でも注目したいのがへイダーだ。レギュラーシーズンでは55試合に登板し6勝1敗、防御率2.43。特筆すべきは奪三振率の高さで、81.1イニングを投げ143奪三振、奪三振率は驚異の15.8を記録。これは50イニング以上を投げた投手の中ではナショナル・リーグトップの数字だ。アメリカン・リーグを含めてもこの数字を超えているのは、16.3を記録したアロルディス・チャップマン(ヤンキース)ただひとりである。
そのヘイダーの持ち味は、投球の大部分となる77.3%を誇るフォーシームと、切れ味抜群で投球の20.7%を占めるスライダーだ。また、1イニングだけでなく、複数イニングを投げることができるタフさも持ち合わせているのが強みだ。実際、今シーズン55試合登板のうち、60%にあたる33試合で1イニングを超える投球となっている。
ポストシーズンでもそれは変わらず、ここまでの5試合中4試合に登板し無失点。そのうち2試合が1イニング以上の回またぎでの登板となっている。特にドジャースとのリーグチャンピオンシップ第1戦では、3番手で登板し3イニングを4奪三振無失点の好投。チームの勝利をたぐり寄せた。
ヘイダーの好投もあり、先発ではなく中継ぎを主体とした投手の起用法がここまでは当たっている。このままワールドチャンピオンを手にすることができれば、来シーズンのメジャーリーグでも、早めの継投策がオープナーに続く新たなトレンドとなるかもしれない。
もちろん短期決戦だからこその作戦で、同じ作戦が長いシーズンでも通用するのかはわからない。だが、この投手起用が今シーズンのブリュワーズの躍進を支えているのも間違いない。ポストシーズンも佳境を迎える中、ブリュワーズの継投策がどこまで通用するのか要注目だ。
※数字は現地2018年10月13日終了時点