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今年も主流は「継投」?ベスト16校の投手起用方法は……

2018 8/16 11:00青木スラッガー
甲子園球場,ⒸSPAIA
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今年も「継投」が主流? 智弁和歌山を破った近江の「4本の矢」

夏の甲子園は第11日(15日)で2回戦が終了した。ベスト16が出そろったが、今大会は複数投手を用いるチームが比較的多く勝ち進んでいるのではないだろうか。

1回戦では、近江が「4本の矢」と称される4投手の継投により、センバツ準優勝の智弁和歌山を撃破した。

先発した背番号11番の右腕・松岡裕樹が2回に2失点すると、3回から背番号18番の2年生左腕・林優樹にスイッチ。6回途中からは背番号10番の右腕・佐合大輔が登板して、林と2人で計6イニングを無失点に抑える。エース左腕・金城登耶の登場は9回から。大会屈指の強力打線を誇る優勝候補に対し、4投手で3失点に凌ぐ見事な継投だった。

近江は2回戦・前橋育英戦も継投で接戦を制した。初戦から強豪校との対戦が続いたが、投手に余力を残してベスト16進出を決めている。

ベスト16は継投チームが多数派

5年ぶり出場の浦和学院も4人の継投で初戦の仙台育英戦を制した。プロ注目の左腕・佐野涼弥が肩の不調で外野手に回る中、先発した背番号11番の右腕・渡辺勇太朗は6回3安打無失点に抑え、球速は最速149キロを計測。なぜエースナンバーではないのか、不思議に思わせるくらい見事な投球であった。

センバツ王者の大阪桐蔭も群を抜いて投手層は厚い。センバツでは背番号6番の根尾昂が決勝戦など重要な試合を任されたが、今大会はエースナンバーを背負う柿木蓮の調子が春より格段に上がっている。柿木は根尾の後を受けてリリーフ登板した2回戦・沖学園戦で、大会最速となる151キロを計測。初戦の作新学院戦も1失点完投と抜群の安定感を見せており、今後も中心投手として起用されそうだ。勝ち進めばプロ注目左腕・横川凱の登板もあるだろう。

常葉大菊川は初戦の益田東戦でエース右腕の漢人友也が7失点と捕まったが、左腕の榛村大吾が終盤に好救援して接戦を制した。2回戦・日南学園戦では漢人が88球完封。初戦、打ち込まれた段階でエースをきっぱりあきらめ消耗を避けられたことが、次戦の好投につながったのではないだろうか。

木更津総合も注目右腕の野尻幸輝が2試合で好投する中、リリーフ登板した2年生右腕の根本太一も149キロを計測。継投が強力なチームに挙げられるだろう。

「絶対的エース」の活躍もあるが……

一方で、絶対的エースにすべてを託す戦い方で勝ち上がったチームもあった。

済美はエース山口直哉が2回戦・星稜戦で13回184球完投。9回、連打で同点に追いつかれときは限界かに見えたが、延長戦で立ち直りタイブレーク突入まで1人で投げ切る形となった。星稜は好投していた2年生エースの奥川恭伸が4回で降板。後続の投手陣で大量リードを守り切れず、継投の難しさを浮き彫りにさせる試合となった。

初戦から2試合合計27奪三振の快投で、一躍スター候補に躍り出た金足農・吉田輝星も他の投手にマウンドを譲る気配はない。秋田大会は5試合を1人で投げ抜き、甲子園でも2試合続けて150球以上の完投。試合序盤や走者がいないときは球威を抑え、状況によって力を抜く投球スタイルでここまで好投しており、本人から完投への強い意志を感じられる。

高知商、下関国際もエース1人でベスト16まで進出した。高知商のエース北代真二郎は初戦の山梨学院戦を12失点しながら完投勝利。下関国際の4番エース鶴田克樹は花巻東戦2失点完投、創志学園戦4失点完投と好投を2戦続けている。

昨夏4強はすべて「継投」のチーム

そのほか報徳学園、愛工大名電などベスト16は複数投手を起用して勝ち上がってきており、全体的には継投のチームが多数派だ。

昨夏の甲子園も継投のチームが最後まで残り、高校野球でも投手の「分業制」へと時代の変化を予感させた。ベスト4に進んだ花咲徳栄、広陵、東海大菅生、天理はいずれも継投で勝ち上がってきたチーム。優勝した花咲徳栄は背番号10番の綱脇慧が先発し、中日入りした清水達也がクローザーとして終盤を締めるダブルエースの継投で本塁打が乱れ飛んだ大会を制したのだ。

昨年は大会本塁打記録が更新されたが、打者のレベル向上により、1人のエースだけでは優勝できない時代に移ってきているのかもしれない。ベスト16時点では多数派の「複数投手制チーム」と、好投手にすべてを託す「絶対的エース型チーム」。トーナメントを勝ち抜くのはどちらになるのだろうか。