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記録的猛暑でどうなる100回目の甲子園 観戦時の熱中症対策を万全に

2018 7/29 07:00SPAIA編集部
甲子園球場,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

甲子園のベンチにはクーラーが

高校野球の季節が到来した。日本各地で夢の大舞台甲子園を懸けた球児たちの熾烈な戦いが始まっている。世界最大のトーナメント大会である全国高校野球選手権。ただの一度も負けることが許されない過酷な戦いだが、内容だけでなく試合環境も過酷さでは類を見ない。

真夏の炎天下、熱が逃げにくいスリ鉢型の会場という条件下では、マウンド表面の温度は50~60度にもなり、体感温度は40度を軽く超え、50度を超えることもあるという。当然、選手には熱中症の危険が付きまとう。

高野連は本大会中、甲子園のベンチをクーラーで涼しく保ち、スポーツドリンクなどを用意、理学療法士もスタッフとして抱え、試合中は定期的な給水を指導し選手たちが全力を出せるように配慮している。

とは言え、それでも万全とは言い難く、ネット上だけでなく報道でも、大人の事情で球児たちを危険にさらしているという非難も出ている。

問われる真夏の大会

以前から地方大会の熱中症対策が不十分であることは報道などで伝えられていたが、現在各地で行われている大会で、既に選手や応援の生徒が熱中症の症状を訴え病院に相次ぎ搬送されている。この事態を受け、日本高野連と朝日新聞は各都道府県の高野連に対して本大会中の取り組みを紹介し、地方大会中でも熱中症対策を万全にするように呼びかけた。

それを受けて各都道府県の高野連は日程を変更したり試合時間をずらしたり、給水を義務付けるなどの対応を行っているが、一方で各試合間のスパンが空くことで休養時間に差が発生し公平さを欠くという理由で真昼の試合を余儀なくされる高校もある。

環境省は35度以上の気温下での運動を原則禁止しており、野球に次いで部員数の多いサッカーでもJFA主催の大会では原則中止となっている。全球児の夢である甲子園が逆に夢を奪うことがないよう、大会の開催時期から在り方まで議論が必要だ。

熱中症対策を万全に

一方で、間もなく開幕する第100回記念大会が例年以上に盛り上がることは間違いない。観戦に行く予定を立てている人も多いだろう。冒頭でも述べた通り、真夏の甲子園の気温は非常に高く、今年は今までにない暑さが予想される。万全の熱中症対策で甲子園に向かってもらいたい。

人間の体は、身体が熱を作る働きである産熱と、体の外に熱を逃がす放熱のバランスが取れている。このバランスが高温多湿の環境や激しい運動で大量の汗をかくことなどで崩れ、熱中症が起こる。主な症状は、めまいや身体のほてり、筋肉のけいれん、吐き気、倦怠感などで、重症となると意識障害を起こし、最悪の場合は命の危険にさらされる場合もある。

地方大会で問題になっている熱中症の多くは観客が発症している。なぜ全力で運動している選手よりも応援している観客が熱中症にかかるのか。普段のトレーニングによるところが大きいが、実は体内に取り込める水分の量も関係している。

成人の場合、体重の約60%が水分とされ、体重が60kgの場合は36kgが水分ということになる。
36kgというと、小学5年生男子の平均体重より少し重いくらいだが、その大量の水分を貯蔵しているのは筋肉なのである。一方で、触るとタプタプする、いかにも多くの水分を保有していそうな脂肪にはほとんど水分は含まれていない。汗腺の発達にも影響されるが、しっかりと筋肉のある人の方が多くの汗をかくことができるのである。

そのため、球児と同じくらい鍛えていない限り、クーラーも専門家の見守りもない観客は、選手以上に自分で熱中症対策を徹底することが必要だ。

スポーツ飲料と濡れタオル、熱中症に強い体作りも

日傘やつばの広い帽子で直射日光を遮ることは当然のこと、汗をかいた分の水分と塩分の補給を心掛けたい。

熱中症対策に飲むものといえば、スポーツ飲料、経口補水液などが挙げられる。汗をかくと身体から水分だけでなくナトリウムも失われるため、日本体育協会は0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質を含んだ飲料を推奨している。効率的に水分を吸収するためには、糖質を4~8%にすると良い。

また、汗を濡れたタオルで拭き取ることも重要だ。人間の体は、汗が蒸発する時の気化熱をメインとした熱放散で体温を下げようとするが、大量の汗をかくと毛穴がふさがってしまい、汗をうまく出せなくなってしまう。濡れたタオルで拭き取ると肌の上に水分が残り、新たに出てくる汗と合わせて熱放散を行うことが可能になる。

甲子園に向けて、となると今からでは遅いかもしれないが、運動後に牛乳を飲むことで熱中症に強い体を作ることができる。

牛乳にはタンパク質と糖質が多く含まれており、運動後の筋肉に効率よく吸収され筋肉の増強に一役買ってくれるだけでなく、血液量の増加にも効果的。暑さへ順応性のある、汗をかきやすい身体作りにも強い味方になってくれるのだ。

運動と牛乳のコラボレーションは、汗腺が未発達な子どもや激しいスポーツができない高齢者にも有効。無理な運動でなく体力に合わせて、早歩きとゆっくり歩きを3分ごとに繰り返す「インターバル速歩」とともに取り入れたい。もちろん、運動だけでなく炎天下の外出で疲れた時にも同じ効果が期待できる。

100回目の夏の甲子園は、猛暑で球児、観客ともに大変な大会となることが予想されるが、一度しかない大会が悲しい思い出になってしまうことのないように、高校野球に関わる人たちには万全の準備で臨んでほしい。