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甲子園における延長再試合の歴史を振り返る

2017 6/30 12:56cut
高校野球
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史上初!1日2試合の延長再試合

2017年春のセンバツで、史上初となるできごとが起きた。延長15回引き分け再試合が、1日に2試合行われたのだ。大会7日目の福岡大学附属大濠高校×滋賀学園高校、福井工大福井高校×高崎健康福祉大学高崎高校、両者譲らずに引き分け。本来であれば翌日に組み込まれる再試合だが、1日明けた大会9日目に実施となった。
再試合では、福岡大大濠高校と健大高崎高校がそれぞれ勝利を収め、翌日から始まる準々決勝へと駒を進めている。エースが登板できないことも影響し、両チームとも準々決勝で敗退し、過酷な日程が取り上げられたことは記憶に新しい。
このような延長再試合は、春夏問わず過去の甲子園でも行われており、今回が11回目と12回目になった。どんなドラマが起こっていたのか、過去の延長再試合を振り返ってみよう。

「ハンカチ王子vs.マー君」早稲田実業vs.駒大苫小牧高校

2006年夏の甲子園決勝戦は、1969年夏の甲子園以来37年ぶりの決勝、延長15回再試合となった。この大会には、現在もプロ野球やメジャーリーグで活躍している選手が多数出場していたため、記憶に残っているファンの方も多いだろう。
大会で決勝に駒を進めたのは、南北海道代表の駒大苫小牧高校と西東京の早稲田実業の2校だった。駒大苫小牧高校は、2004年と2005年に2連覇を達成するも、不祥事があり春のセンバツは出場辞退。苦しみを乗り越え、エースである田中将大選手を中心に甲子園の舞台に戻ってきた。一方、東京の名門・早稲田実業は、1980年夏の甲子園以来、実に26年ぶりの決勝進出。「大ちゃんフィーバー」を巻き起こした荒木大輔選手を擁して、準優勝を超える優勝を狙っていた。
7回まで0-0の決勝戦は、緊張した展開が続く。先に均衡を破ったのは、駒大苫小牧だった。三木悠也選手が、8回表に本塁打を放ち1-0と先制する。しかし、その裏に早稲田実業は犠飛で1点を返し、試合は1-1の振り出しに。その後、両者ともに決定打を奪えず延長15回まで無得点に終わり、1-1で引き分けとなり再試合となった。この試合で斎藤選手は15回完投、田中選手は3回途中から15回まで投げきり好投を演じている。
翌日に行われた再試合で、斎藤選手は先発のマウンドに立ち、田中選手は先発ではなくブルペンからのスタートとなった。試合は初回から早稲田実業が得点を奪い、田中選手がマウンドに上がった。しかし、早稲田実業が田中選手から得点を奪い、8回終了まで4-1とリードを広げる。9回表で駒大苫小牧高校の中澤竜也選手が、最後の攻撃となる2点本塁打を放ち3-4と1点差に迫る。最後は田中選手が空振り三振に倒れ、早稲田実業の優勝が決まった。
実況の「燃える思いの静かなエース斎藤佑樹が、都の名門の90年越しの夢を叶えました!西東京、早稲田実業、夏の甲子園初優勝!」 は、今でも名実況として取り上げられることも多くなっている。

もうひとつの再試合「早稲田実業vs.関西」

早稲田実業の再試合といえば、2006年夏の甲子園決勝の駒大苫小牧との一戦を思い浮かべるファンが多いだろう。斎藤佑樹選手と田中将大選手が、死闘を尽くしたあの一戦だ。
しかし早稲田実業は、その一戦の前にも延長再試合を経験していた。2006年春のセンバツ2回戦、関西高校(かんぜい)戦を7-7で引き分け、再試合で4-3と勝利し、準々決勝へと駒を進めている。奇しくも再試合では、駒大苫小牧戦と同じ4-3で勝利を収めているのだ。
2005年夏の甲子園終盤で大逆転負けを喫した関西高校は、リベンジのために戻ってきた甲子園で驚異的な粘りを見せ、早稲田実業を苦しめた。早稲田実業は、7回表終了時点で6-2と4点のリードだったが、7回裏に上田剛史選手(現ヤクルト)の2点本塁打で6-4と2点差に迫られた。
しかし9回に1点を奪い、7-4とリードを3点に広がる。その裏で無死満塁のピンチを招くと、安井一平選手が走者一掃の適時三塁打を放たれ、7-7の同点に追いつかれる。その後、両チームとも譲らずに15回を戦い終え、結果7-7で再試合となった。再試合も関西高校の粘りが効いた試合となった。
2-0とリードし終盤を迎えた早稲田実業は、7回に1点、8回に2点を失い、2-3と1点のビハインドで最終回となる。この回、相手の失策などで2点を奪った早稲田実業は、4-3と再逆転。最後は斎藤選手がピンチを招くが、0点に抑え4-3で勝利している。 これが早稲田実業の「もう一つの延長15回引き分け再試合」だ。

過去には再試合も!徳島商vs.魚津、作新学院vs.八幡商

元祖 延長再試合は、徳島商業高校と魚津高校の一戦だった。これは、延長18回再試合の規定が決まった年に、甲子園で行われている。現在、タレントとして活躍している板東英二は、当時の徳島商業高校エースだったと言うこともあり話題になることも多い。0-0で引き分けに終わったこの試合は、再試合で徳島商業高校が、3-1で勝利して準優勝にまで上り詰めている。
1962年の春夏連覇を果たした作新学院高校も、春のセンバツで延長再試合を経験。0-0の引き分けを耐え抜き、再試合でも2-0と接戦をものにし、春のセンバツ優勝に近づいたのだ。 このように、甲子園のターニングポイントで再試合は起こっているのだ。

他の再試合は?延長再試合まとめ

2017年春のセンバツまでに12回起こった、延長引き分け再試合の結果をまとめた。

1958年夏 準々決勝:徳島商業高校 0-0 魚津高校(3-1)
1962年春 準々決勝:作新学院高校 0-0 八幡商業高校(2-0)
1964年夏 2回戦:掛川西高校 0-0 八代東高校(6-2)
1969年夏 決勝:松山商業高校 0-0三沢高校(4-2)
2003年春 準々決勝:東洋大姫路高校 2-2花咲徳栄高校(6-5)
2006年春 2回戦:早稲田実業 7-7 関西高校(4-3)
2006年夏 決勝:早稲田実業 1-1 駒澤大学附属苫小牧高校(4-3)
2007年夏 2回戦:佐賀北高校 4-4 宇治山田商業高校(9-1)
2008年春 3回戦:龍谷大平安高校 3-3 鹿児島工業高校(1-0)
2014年春 2回戦:桐生第一高校 1-1 新庄高校(4-0)
2017年春 2回戦:福岡大学附属大濠高校 1-1 滋賀学園高校(5-3)
2017年春 2回戦:高崎健康福祉大学高崎高校 7-7福井工業大学附属福井高校(10-2)

長い甲子園の歴史の中でも、たった12回しか起こっていない延長引き分け再試合。
過密日程、投手の連投祖含めた健康状態を考えると日程の調整など議題は多いが、一方で多くの感動を与えてくれていることも事実だ。今後の対策を考えながら球児たちにとってよりよい形になることを期待したい。