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2017年選抜大会で活躍した選手たち【投手編】

2017 6/28 09:44Mimu
高校野球
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前年秋の雪辱を晴らし優勝投手となった大阪桐蔭・徳山壮磨

2017年の高校野球春の選抜大会では、好投手揃いの非常に面白い大会となった。今回はそんな選抜大会から、特に印象的だった投手を紹介していこう。まずは優勝した大阪桐蔭の徳山壮磨選手からだ。

徳山選手といえば、やはり決勝の履正社戦でのピッチングが素晴らしかった。味方の先頭打者ホームランで先制した後、その裏のピッチングでは三者連続三振。良い流れをぐっと引き寄せる投球を見せる。結局8回に3点を取られ、完投とはならなかったが、それでも5回までを無安打、トータルでは8回130球3失点7奪三振の力投で優勝に貢献した。

それまでの試合でも、決勝までの5試合にすべて登板。準々決勝の東海大福岡、準決勝の秀岳館戦では2試合連続の完投勝利を収めている。最速は145km/hとびっくりするほど速いわけではないが、コントロールの良さとキレのあるスライダーを武器に、相手打線を封じ込めていった。

実は前年秋の大阪府大会でも、準決勝で履正社高校と対戦しているのだが、そのときは安田選手に1発を浴びて敗戦投手になってしまったのだが、その雪辱を甲子園の大舞台でみごとに晴らした。

これぞエースという姿を見せた履正社・竹田祐

一方、準優勝となった履正社の竹田祐選手。決勝では連投の疲れからか球があまり走っておらず、8回までに3本のホームランを浴びてしまったが、それでも粘って相手打線を抑えていくピッチングが印象的だった。

最速145kmに抜群のコントロール、そしてキレのあるスライダー。どうしても徳山選手と似ているところはあるかと思う。しかし、竹田選手の魅力は、やはりその気の強さ、精神力の強さだろう。3本のホームランを打たれてもなお、自分のピッチングを崩すことなく、攻め続けたその姿勢、まさにエースと呼ぶにはふさわしい姿だった。彼が粘り強く投げていたからこそ、8回の同点劇が生まれたのだと思う。

竹田選手は大阪府大東市出身で、大阪桐蔭の目と鼻の先に実家があるそうだ。大阪桐蔭からも誘いもあったが、強いチームを倒したいとのことで、あえて別の市にある履正社を選んだそうだ。そういったところからも、気の強さがうかがえる。期待したくなる選手だ。

切れ味抜群のスライダーで三振の山を築いた日大三・櫻井周斗

日大三では、エースの櫻井周斗選手が注目を集めていた。キレ味抜群のスライダーが武器のサウスポーで、履正社戦では3番の安田選手から3つ、4番の若林選手から4つの三振を奪った。中学時代にケガをしたことによって一時的にセンターへとコンバートされ、2年の秋の大会までは背番号8をつけていたのだが、再びマウンドを任されるようになると、その秋期大会決勝戦で早稲田実業の清宮幸太郎選手から5三振を奪うピッチングを見せ、一躍注目を集めた。

甲子園でも3番で出場していたように、バッティングの方も非凡なものを持っている。1回戦の履正社戦ではツーベースを放ったし、実は秋季大会でも3本のホームランも放っている。つくづく、もっとみたいと思わせてくれる選手だ。夏に向けて楽しみにしておこう。

静岡のドクターKが見せたポテンシャルの高さ 静岡・池谷蒼大

注目左腕といえば、静岡の池谷蒼大選手も良い投球を見せていた。初戦の不来方(こずかた)戦では先制点こそ許してしまうものの、その後は伸びのあるストレート、キレのあるスライダーを織り交ぜて完璧な投球を見せていた。続く2回戦の大阪桐蔭戦でも初回に6失点と、不安定な立ち上がりも目立っていたのだが、2イニング目以降のピッチングが彼の本領だろう。最速は140キロほどだったが、肘や手首を柔らかく使ったフォームから投げ出されたストレートは、相手打者から面白いように空振りを奪った。2回から7回までの6イニングを、3安打7奪三振。ポテンシャルの高さは、十分に見せてくれただろう。

2試合で326球の熱闘 福岡大大濠・三浦銀二

つづいては熱投が印象的だった選手を紹介しよう。福岡大大濠の三浦銀二選手だ。三浦選手といえば、やはり2回戦の滋賀学園戦でのピッチングの話は欠かせない。健大高崎ー福井工大福井戸ともに、史上初の2試合連続引き分け再試合となったあの試合だが、三浦選手は再試合も含めて、26イニングすべて1人を投げきったのだ。

1試合目は初回に先制点を許してしまうものの、8回に4番の東怜央選手のタイムリーで同点に追いつくと、そのまま1人で15回まで投げきってしまった。この日の球数は196球。そして再試合は2日後。普通なら登板を回避して、別の投手に投げてもらうところだ。しかし、三浦選手は再試合でも先発で出場するのだ。

この試合も先制点は許してしまうが、打線の方が好調で、すぐに逆転をしてくれた。この日滋賀学園は2度も同点に追いつく場面があったのだが、そのたびに打線が三浦選手を援護する。特に2度目に同点に追いつかれた5回には、その直後に女房役の古賀悠斗選手にツーランホームランが飛び出した。結局これが決勝点となり、5-3で見事勝利。三浦選手は試合でも130球を投げて、合計で326球の熱投となった。

キレのある変化球で空振り三振を量産 報徳学園・西垣雅矢

報徳学園の西垣雅矢選手も非常に良いピッチャーだった。とにかく変化球の切れ味が鋭く、2種類のフォークにスライダーの組み合わせで、奪三振を量産した。25イニングで25個の三振を奪ったのだが、そのうちの10個がフォーク、9個がスライダー。しかも25個のうち24個を空振りで奪っており、相当にキレのある証拠だ。2回戦の前橋育英戦では、9回を投げて10奪三振完投勝利をマーク。サードを守る池上颯選手も好投手であり、2枚看板でベスト4まで勝ち上がってきた。

実は秋まではストレートの最速が138km/hだったのだが、この大会では141km/hを記録。練習試合では143km/hを記録したともいう。すでにスカウトの評価も高いのだが、夏に向けてさらに球速が上がっていけば、ドラフトでも上位で指名されるような選手になっていくのではないだろうか。

田浦文丸・川端健斗の左の2枚看板で勝ち上がってきた秀岳館

熊本の秀岳館では、左腕の2枚看板で勝ち上がってきた。背番号1をつけた田浦文丸選手、そして背番号10をつけた川端健斗選手だ。2人とも2016年春・夏の甲子園でも登板経験があり、2大会連続のベスト4に貢献した。

田浦選手は最速144kmのストレートに、スライダーやカーブ、チェンジアップなどの多彩な変化球を持つ、総合力の高い選手だ。2回戦の作新学園戦では6回2/3を1失点、準決勝の大阪桐蔭戦では7回1/3を2失点と、強豪校を相手に安定したピッチングを披露した。

一方の川端選手は最速148kmの速球派投手だ。ストレートとスライダーを交え、今大会では4試合すべてに登板して、21イニングで33個の三振を奪った。やや四球が多く、先発登板した初戦の高田商業戦、中継ぎ登板した2回戦の作新学園の2試合では、10回1/3で10四球を出してしまったほどだ。

しかし、続く準々決勝の健大高崎戦では、9イニングを投げて1失点3四球。相手の機動破壊にも一切動じず、バッターとの勝負に集中したのが功を奏した。結果13奪三振を記録し、チームをベスト4に導く見事なピッチングだった。

2017年の選抜選手権大会は好投手揃いの大会だった。これから夏に向けて、彼らはさらにパワーアップしてくる。今回紹介した選手たちはみんな3年生。きっとその集大成を見せてくれる大会となることだろう。今から楽しみだ。