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令和初の箱根駅伝展望、5強の争いか、連覇に挑む東海大の1強か

2019 12/24 06:00鰐淵恭市
イメージ画像ⒸPavel1964/Shutterstock.com
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第96回箱根駅伝エントリーメンバー発表

令和最初の箱根王者はどこになるのか。2020年1月2、3日に開催される第96回箱根駅伝のエントリーメンバー(各チーム16人)が発表された。

これから、12月29日の区間エントリーとレース当日の区間最終エントリーで実際に走る選手が決まるのだが、いずれにせよエントリーメンバーの16人しか走ることができない。順調に大黒柱がエントリーに名を連ねたチームもあれば、ケガでエースを外さざるを得なかったチームもある。

今大会は、連覇を目指す東海大、2年ぶりの優勝を狙う青山学院大のほか、東洋大、駒沢大、国学院大を加えた「5強」の争いと言われている。エントリーメンバーを見ながら、各校の注目選手や展望を紹介する。

最近の学生3大駅伝の優勝校ⒸSPAIA

東海大(19年箱根優勝 出雲4位、全日本優勝)

エントリーメンバーを見て、最も驚かされたのは前回王者の東海大かもしれない。チームの中心は「黄金世代」と言われる4年生の館沢亨次、鬼塚翔太、阪口竜平、関颯人の4人だが、この中から関がエントリーから外れた。さらに、箱根の山下りの6区で2年連続区間2位の実績を持つ中島怜利(4年)も外れた。しかし、力がある選手がいなくても、優勝候補の筆頭で有ることには間違いない。今大会は「5強」ではなく、東海大の「1強」との声もある。

中島がエントリーから外れたことで1人減ったものの、前回大会の優勝メンバーが7人も残っている。また、今年のチームは黄金世代頼みから脱却している。

11月の全日本では、黄金世代の4人が1人も出場せず16年ぶりに優勝を果たした。その原動力となったのが、名取燎太、塩沢稀夕、西田壮志の3年生トリオだ。特に名取は全日本のアンカーとして、勝負強さを見せた。箱根ではエースが集う2区を走る可能性も高い。名取の走りが連覇のカギになるだろう。

青山学院大(19年箱根2位、出雲5位、全日本2位)

前回の箱根は5連覇に挑みながら、2位に終わった青山学院大。その時のメンバーから5人が卒業したため苦戦が予想された今季だったが、しっかりと結果を残してきている。出雲は5位に終わったものの4区を終えた時点ではトップにおり、全日本でも最終8区にたすきをつないだときは先頭だった。いずれも優勝まであと一歩だったのだ。

箱根のエントリーメンバーを見ると、過去2大会で山上りの5区を走った4年生の竹石尚人は足のケガのために外れたが、そのほかは順当な選手が名を連ねた。主将の鈴木塁人、3年生でエース格の吉田圭太に加え、昨年の全日本5区区間賞の吉田祐也と今季力を伸ばした中村友哉の4年生2人も登録された。

その中で最も注目されるのは、1万メートルでチームトップのタイム(28分27秒40)を持つ吉田圭だろう。広島・世羅高時代から将来を期待されてきたランナーは、大学入学後も順調に成長。昨季は3大駅伝全てで区間賞をとり、前回の箱根では復路の9区を走った。今回はその「裏」となるエース区間の2区を走る可能性も高い。

上位10人の1万メートル平均タイムは28分45秒37で出場校中トップ。やはり今年の青学も地力がある。

東洋大(19年箱根3位、出雲3位、全日本5位)

チームの大黒柱は今季の学生ナンバーワンランナー、相澤晃。今年のユニバーシアードのハーフマラソンでは金メダルに輝いた。3大駅伝は過去9回走って区間賞を5度獲得しており、現在4大会続けて区間賞をとっている。ただ、良くも悪くも相澤頼みが続いている状況だ。

前回の箱根では8区途中までトップを守ったように、近年の東洋大は力のある選手を前半に集め、先行逃げ切りの形をとってくることが多い。これは駅伝の常套手段である。そう考えると、相澤は序盤、おそらくエースが集う2区を任される可能性が高いだろう。

6大会ぶりの優勝を目指すには、2年連続1区区間賞の西山和弥の奮起が必要だ。今季はケガに苦しみ、11月の全日本では5区で区間11位と沈んだが、力は十分にある。その復調具合が気になるところだ。

エントリーメンバーを見ると、1年生が6人と、「5強」の中では一番多い。上級生と下級生の力の融合も見どころになる。

駒沢大(19年箱根4位、出雲2位、全日本3位)

かつては「平成の常勝軍団」と言われた駒沢大だが、3大駅伝で最後に優勝したのは2014年の全日本。近年はなかなか頂点に立てていないが、今年は力のあるチームに仕上がっている。出雲は最終区までトップを走って2位、全日本では2位と5秒差の3位で、いずれも3位以内に食い込んだ。

前回の箱根のメンバーからは5人が卒業したものの、残りの5人はすべてエントリーメンバーに選ばれた。2区を2年連続走った山下一貴や山上りの5区の伊東颯汰ら、主要区間のメンバーが残ったことも大きい。

そして、新たな力も加わった。青森山田高から入学してきた1年生の田澤廉だ。全日本では7区区間賞、1万メートルの自己ベストは28分13秒21で、U20の日本歴代5位にあたる。「スーパールーキー」と賞される田澤が、どの区間に配置されるのか。通常、1年生は1区や3区を走ることが多いが、エース区間の2区を任される可能性もある。

国学院大(19年箱根7位、出雲優勝、全日本7位)

近年、急成長を続けている。前回の箱根は過去最高の7位。そして、今年の出雲では3度目の出場で初優勝を果たし、関係者を驚かせた。前回の箱根では往路3位。その時の1~5区のメンバーが全員残り、今回は往路優勝が狙えるチームになった。

前回は2区を走った土方英和が日本インカレの1万メートル日本人トップの3位、1区の藤木宏太も4位に。3区の青木祐人は今年の全日本5区で区間賞を獲得した。前回の箱根の5区で区間新をマークした浦野雄平は、今年の出雲と全日本で区間3位以内と安定している。今回も山上りの5区を任されることになるだろう。

これまで「山の神」と賞される選手が3人も出てきたことからも分かるように、近年はこの5区の走りが勝負を大きく左右する。浦野の走りが、初の往路優勝をつかむポイントになる。