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13回目の東京マラソン 大迫の日本記録更新なるか

2019 3/2 07:00鰐淵恭市
大迫傑,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

第13回東京マラソン、3・3号砲

第13回となる東京マラソンが3月3日に行われる。東京マラソンは世界のトップランナーが集う「ワールドマラソンメジャーズ」の一つ。東京五輪を翌年に控えた2019年大会の見どころをピックアップしてみた。

日本記録保持者参戦

ワールドマラソンメジャーズの一つとはいえ、やはり気になるのは日本選手の走り。その中でも、昨年のシカゴ・マラソンで日本人初の2時間5分台をマークした大迫傑(ナイキオレゴンプロジェクト)の走りに注目が集まる。

ここ10数年低迷していた日本男子マラソンを再び活性化させたのは大迫だ。長野・佐久長聖高、早大と長距離の名門校で活躍。大学卒業後は実業団の日清食品に所属したが、世界で戦える選手になるために退職して、プロ選手となった。現在は米国にあるナイキオレゴンプロジェクトでトレーニングを積んでいる。

トラックでも活躍した大迫だが、マラソン転向後の成績は目を見張るものがある。初マラソンの2017年ボストン・マラソンでいきなり3位に入った。ボストンの表彰台に日本人が立つのは、その30年前に優勝した瀬古利彦氏以来の快挙だった。2度目のマラソンとなった2017年福岡国際マラソンでは当時の日本歴代5位となる2時間7分19秒で3位に。そして、昨年10月のシカゴ・マラソンで2時間5分50秒の日本新記録をマークした。

大迫成績表,ⒸSPAIA

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東京マラソンの説明によると、現時点でのペースメーカーは2段階に分けて設定される予定。速い方は1キロを2分57~58秒のペースで刻み、2時間4分30秒~2時間5分10秒のゴールをイメージしているという。おそらく大迫はこのペースについていくはず。力のある外国人選手はこのペースで走りきることが可能だから、大迫が海外勢にうまく食らいつけば、自身の持つ日本記録の更新も見えてくる。

次の6分台を狙う日本勢

昨年の東京マラソンは気象条件にも恵まれ、好記録が続出した。日本勢トップの設楽悠太(ホンダ)は16年ぶりに日本記録を塗り替える2時間6分11秒をマーク。日本選手2位の井上大仁(MHPS)も2時間6分54秒の自己記録で走った。今年も気象条件がよければ、2時間6分台を狙える選手がいる。

昨年のベルリン・マラソンで2時間8分16秒の自己ベストで3位に入った中村匠吾(富士通)がその筆頭だろう。学生駅伝の名門・駒沢大出身の26歳に期待する声は大きい。現在、日本男子マラソンの力のある選手4人は「ビッグ4」と呼ばれる。大迫、設楽、井上、そして昨年12月の福岡国際マラソンで優勝した服部勇馬(トヨタ自動車)の4人だ。そして、この4人に割って入る力があると見られているのが中村だ。

今年の東京マラソンのペースメーカーは2段階に分けられると説明したが、遅いペースは1キロを3分で刻む。2時間6分35秒でゴールするイメージだ。中村がつくのはこのペース設定だろう。

昨年の東京マラソンで日本選手3位となる2時間8分8秒をマークした木滑良(MHPS)も、2時間6分台を視野に入れる1人だ。大学駅伝出身者が幅をきかせる日本男子長距離界だが、木滑は長崎・瓊浦高出身の28歳。地元のMHPS(三菱日立パワーシステムズ)に進み、力をつけてきた。もし、木滑が2時間6分台を出せば、MHPSでは井上に続き、2人目となる。同じチームに2時間6分台を持つ日本人が2人いるとなれば、初の快挙になる。

名門を救えるか

今年の元日、全日本実業団対抗男子駅伝(通称・ニューイヤー駅伝)で3連覇を果たした旭化成が苦しんでいる。かつては宗兄弟、1991年世界選手権金メダリスト谷口浩美、1992年バルセロナ五輪銀メダリスト森下広一らを輩出した名門だが、東京五輪代表選考レースとなるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の出場権をチームの誰も得ていないのだ。

駅伝で結果が出ていることから分かるように、力のある選手はそろっているが、なぜかマラソンでの結果はいま一つ。今回の東京マラソンには、双子の村山兄弟の兄、謙太が出場する。村山謙の自己ベストは昨年のゴールドコーストマラソンでマークした2時間9分50秒。これまでマラソンには4回出場しているが、ほかの3回は2時間15分~17分台と不本意な結果に終わっている。

とはいえ、5000メートルや1万メートルで結果を出してきた村山謙の力を評価する人は多い。MGCに旭化成から誰も出場しないとなれば、由々しき事態である。名門を救えるかどうかは、この26歳の走りにかかっている。

世界のトップランナーも

日本選手ばかり触れてきたが、ワールドマラソンメジャーズの一つである東京マラソンには、世界的ランナーも出場する。

最大の注目は世界歴代3位となる2時間3分3秒の記録を持つケネニサ・ベケレ(エチオピア)だ。5000メートルと1万メートルの世界記録保持者でもあり、2004年アテネ五輪では5000メートルで銀、1万メートルで金メダルを獲得、2008年北京五輪では2冠に輝いた。マラソンに転向後は自己ベスト以外では、2時間5分台を3回マークするなど、安定した力を誇っている。36歳になったベケレが東京でどういった走りを見せるかに注目だ。

そのほか、2時間4分台の記録を持つ選手が5人、2時間5分台の選手が2人出場する。海外勢の動向も楽しみの一つになる。