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プロ1年目の桐生 再び9秒台を出せるか 陸上セイコーゴールデンGP注目選手(1)

2018 5/18 07:00SPAIA編集部
桐生祥秀,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ


セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪 5月20日開催

昨年、東洋大4年生だった桐生祥秀が男子100メートルで9秒98をマークし、ついに日本も10秒の壁を突破した。男子400メートルリレーでも、2016年のリオデジャネイロ五輪で銀メダル、昨年のロンドン世界選手権でも銅メダルを獲得し、日本の男子短距離がかつてないほど注目を浴びている。

5月20日、男子100メートルの日本のトップが久々に集結。大阪・ヤンマースタジアム長居で「セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪」が開催される。

この大会の男子100メートルには、日本記録保持者の桐生(日本生命)、日本歴代2位タイとなる10秒00を持つ山縣亮太(セイコー)、リオ五輪の銀メダルメンバーであるケンブリッジ飛鳥(ナイキ)、ロンドン世界選手権の銅メダルメンバーである多田修平(関西学院大)が出場する。

さらに、昨年の世界選手権金メダリストのジャスティン・ガトリン(米国)も参戦。ハイレベルな戦いが見られそうだ。注目の選手たちの現状を報告する。

1カ月遅れの始動となった桐生

昨年9月の日本学生対校選手権で日本の悲願だった10秒の壁を突破し、一躍時の人となった桐生。この4月から社会人となり、日本生命の所属となった22歳は、例年より遅めの始動となっている。

今季初戦は5月3日の静岡国際で、種目は200メートルだった。結果は21秒13で5位。風邪による体調不良もあったが、桐生らしからぬ走りだった。指導する土江寛裕コーチは「9秒台を出して浮足立っていた部分もあり、いいおきゅうを据えてもらった」と前向きにとらえる。

100メートルの初戦は5月12日のダイヤモンドリーグ上海大会。五輪、世界選手権に次ぐ格付けのダイヤモンドリーグには世界の強豪が集まる。上海には、ガトリンのほか、リオ五輪で銅メダルのアンドレ・ドグラス(カナダ)、アジア出身選手として初めて9秒台を出した蘇炳添(中国)らもそろった。

レース前には「初戦からすごいメンバーと走ることになった。ドグラス選手と走るのは楽しみ。引退したボルト選手の後継者と言われている選手なので」と語っていた桐生。しかしながら、結果は向かい風0.5メートルの中で、10秒26で9人中9位。スタートは悪くなかったが、持ち味である中盤からの加速がいま一つだった。

レース後、桐生は前向きなコメントを残している。「このメンバーで走ることができてよかった。初戦ということを考えると、そこまで悪くない。世界でもファイナルに残るような選手と走ることができて、これからにつながると思う」

時の人となり、冬季練習が進まず

通常ならば3月下旬に海外のレースを走ったり、4月には国内のレースを走ったりもしてきた桐生。今季の初戦がいつもより遅いのには理由がある。

時の人となったがために、イベントやテレビ出演、行政やマスコミからの表彰に引っ張りだこになり、思うように練習ができなかった。(NHKの紅白歌合戦にスペシャルゲストとして出演。桐生の「勝負曲」である「栄光の架橋」を歌うゆずの場面で登場など)100メートルを走るための土台をつくる冬季トレーニングに入るのが遅れ、今季のスタートも後ろにずれることになった。

だから、今季の結果がいま一つなのも致し方ない。調子が上がってくるとすればこれからだろう。そういった意味で、5月20日のゴールデングランプリの桐生の走りは面白いかもしれない。

言葉にはトップアスリートとしての自覚があふれる

今季の調整が遅れている要因として、イベントに引っ張りだこであることを書いたが、これはトップアスリートとしての宿命かもしれない。そして、桐生も自身の立場を自覚していると思う。

今年1月、360人の親子の前で走り方を教える桐生の姿があった。横浜市で行われたかけっこ教室。桐生は自ら積極的に子どもたちに話しかけ、参加者を喜ばせていた。

「陸上を、子どもたちから憧れられるスポーツにできるよう貢献したい」。その言葉通りの行動だった。

大学の卒業式でも、陸上界を牽引するものとしての思いがあふれるコメントを残している。

大学生活を振り返り、「楽しい4年間でした。メダル取ったり、9秒台が出たり、逆に負けたりもした。一番の思い出は選べないけど、1年1年いろんなことがあった」と語った後、実質的にプロになることについてこう語った。

「野球選手、サッカー選手は憧れられる。陸上選手でも、そんな憧れられる活躍をできるようにしたい」
「ここから先、もう9秒台を出さないと会場が沸くことはないと思う」

100メートルの今季国内初戦となるゴールデングランプリで、桐生は会場を沸かせることができるだろうか。


9秒台へ答えをつかんだ山縣が捲土重来を期す 陸上セイコーゴールデンGP注目選手(2)へ続く