「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

見るものの心を揺さぶる走りを見せる男 川内優輝

2016 12/12 11:38きょういち
川内,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

マラソン界の常識は川内の非常識

 川内という存在は、現在の日本長距離界に対するアンチテーゼのようなものである。

 今の日本の長距離界は、高校で活躍した選手が、関東の強豪大学に進み、箱根を走る。そして、エリートは実業団に進み、やはり、駅伝を走る。ケガを負いやすく、1年に1、2度しか走れないマラソンはリスクが高いから、最近は敬遠されている。

 川内は高校時代、インターハイに出られなかった。「エリート路線から外れた」と思った。でも、大学でも続け、実業団に入らなくても市民ランナーと練習してはい上がった。

 「強豪校じゃなきゃだめ、というのは才能の芽を摘んでいる。僕を見て、ああいう生き方もあるんだと思ってもらいたい」

 埼玉県の公務員。平日は仕事のため、練習があまりできない。レースが練習代わり。マラソンは1年に1、2度という「常識」は通用しない。福岡が64度目のフルマラソンだった。かつて、こう語っていた。

 「常識外れと言われたけど、周りが勝手に常識で限界を決めているだけ」  練習も型破り。練習の最後の彼が自らを追い込む姿は、目を見張る。実業団選手なら仲間と一緒に追い込めるが、彼は1人で自分自身と戦う。時には山を登る。今回の福岡に向けては、100キロ走もした。かつて、瀬古や宗兄弟がした練習を本で知り、実践した。ケガを恐れ、練習量をこなさない今のエリートとは違う。川内は常に考え、行動に移す。それが川内流である。

奇跡がおきた

 

 福岡で涙した後の会見で、川内は言った。

 「奇跡がおこったというしかない」

 状況からすれば奇跡かもしれない。でも、常に考え、闘争心を忘れない「魂の走り」があったからこそ、その奇跡を呼び込むことができたのだ。

 レースに行けば、川内の人気は絶大だ。すぐにファンに囲まれる。なぜ彼が人気なのか。それを分からせてくれた第70回福岡国際マラソンの川内の走りだった。

おすすめの記事