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複雑なルールも分かれば面白い④ アメリカンフットボールは「だまし合い」のスポーツ

2018 8/4 15:00SPAIA編集部
アメフト,アメリカンフットボール,ⒸShutterstock.com
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見るものを欺く「フェイク」

アメリカンフットボールの魅力の一つが、その攻撃の複雑さだ。基本はランとパスで行われるが、相手守備陣にランと思わせてパスを投げることもあれば、その逆もある。相手をだますプレーを「フェイク」と呼ぶ。アメフトとはある意味、だまし合いのスポーツである。

試合中によく見るのが、「プレーアクションパス」というプレーだ。

これは、ランプレーのふりをして、パスを投げるというもの。ラインのセンターからボールをスナップされたクォーターバック(QB)が、ランニングバック(RB)にハンドオフする(ボールを渡す)ように見せかけて、パスを投げる。ハンドオフのふりをするのが「フェイク」である。

相手守備陣はランプレーと思って突進してくるから、後ろのスペースが空く。そこにワイドレシーバー(WR)が走り込み、パスを受ける。QBのフェイクがうまいと、見ているものはランプレーと思って、RBの動きを追ってしまう。テレビの中継でも、カメラマンが時々だまされてしまう時がある。

逆にパスと見せかけて、ランプレーをするときもある。その一つに「ドロー」というプレーがある。

スナップを受けたQBがパスを投げるようにドロップバックする(前を向いたまま後ろに下がる)ふりをして、近くにいるRBにハンドオフをして、RBがランプレーで前進する。

QBがパスをするように後ろに下がるので、相手守備陣はパスを警戒して後ろに下がる。そのため、守備陣の前方にスペースができる。そのスペースを狙って、RBがゲインするというものである。

QBが選択する「オプションプレー」

「オプションプレー」にはいろいろな形があるが、QBが2人のRBと横に走りながら、相手の守備陣の対応を見て、QBがそのまま走るか、RBにピッチする(後ろに投げる)かを選択するのが一般的。QBがプレーを選択(オプション)するから、「オプションプレー」と呼ばれる。フェイクで「だます」というより、相手に対応するという感じかもしれない。

ただ、2人のRBのうち、QBに近い方のRBが相手陣に向かって縦に走り、そのRBにハンドオフするふりをして、QBともう1人のRBが横に走りながら、オプションプレーをするときがある。法政大が1990年代に得意としていたプレーである。

このオプションプレーだが、本場米国のプロリーグNFLではほとんど見ることができない。QBがボールを持って走るということは、相手の守備からタックルを受けるということになるが、NFLの守備選手は体が大きく、そのパワーはとてつもない。タックルを受けるとQBはケガをしてしまう。だから、NFLではオプションプレーを選択することはほとんどない。

かつて、日本の大学ではこのオプションプレーが攻撃の主流だったが、近年ではパス主体のフォーメーションを採用する大学が多く、オプションプレーを見る機会が減ってきている。

ここ1番のスペシャルプレー

試合中、一度見られるかどうかの特別なプレーがある。これを「スペシャルプレー」という。その中でも、見る機会が比較的多いのが反転を意味する「リバース」というプレーだ。

ボールを持ったQB(もしくはRB)とWRがお互いの方向へ走っていき、ボールを持っていた選手がWRにボールを渡し、WRがそのままランプレーで前進する、というものである。守備陣を片方に引っ張っておいて、その逆側を突くというものだ。このプレーは攻撃方向が反転するから「リバース」と呼ばれる。

このリバースにフェイクを加えた「フェイクリバース」というプレーもある。これは逆方向に走るWRにボールを渡すところまでは一緒。守備陣がリバースに気づき、前に出てきた裏をかいて、ボールを持ったWRがパスを投げるというものだ。

もう1つ比較的お目にかかる機会が多いスペシャルプレーとして「ダブルパス」というプレーがある。これはスナップを受けたQBがWRかRBに横にパスを投げる。そして、パスを受け取った選手が、前方にパスを投げるというものである。アメフトでは前方へのパスは1プレー中1回しか投げられないが、横や後ろは何度でも投げられる。だからこそ、こんなプレーが生まれるのである。(続く)