モンゴルだけじゃない!世界各国からやってきた外国人力士 | SPAIA

モンゴルだけじゃない!世界各国からやってきた外国人力士


19年ぶりの日本人横綱誕生。それまでに角界はますますグローバル化。

大相撲では、平成二十九年(2017年)の三月場所に稀勢の里関が横綱に昇進しました。日本人横綱の誕生はなんと19年ぶりです。これまで外国人力士旋風が吹き荒れてきた大相撲。今も現役横綱4人のうち残る3人はモンゴル出身で、すっかり角界には外国人力士の存在が定着しています。
今回は、一大勢力モンゴルだけでなく、ヨーロッパやアメリカ、一見相撲と馴染みのなさそうなアフリカや南米出身の力士など、外国人力士に焦点をあててみます。

最大勢力モンゴル勢

外国人力士の出身国で最も多くの力士を輩出しているのはモンゴルです。平成二十九年の三月場所の時点で、621人の現役力士のうち、なんと23人がモンゴル出身です。
その代表格は、なんと言っても数々の歴代最高記録を更新している横綱白鵬関でしょう。ほかにも横綱には日馬富士関と鶴竜関、大関には照ノ富士関、関脇には玉鷲関もおり、関取(十両、幕内の力士のこと)だけで12人、その下に11人のモンゴル人力士がいます。
また過去にはモンゴル人横綱第一号となった元横綱・朝青龍のドルゴスレン・ダグワドルジさんや、現在は母国モンゴルで政治家に転身したモンゴル人関取の第一号である元小結・旭鷲山さん、そして元関脇・旭天鵬の大島親方などもいました。
モンゴル勢の強さは相当なもので、稀勢の里関が横綱昇進するまでの間、ほとんどの横綱がモンゴル出身でした。この状況に「日本人力士情けないぞ」と苦言をいう相撲愛好家や親方もいました。

モンゴル勢強さの秘密は「ブフ」

モンゴル人力士がこれほどまで多い理由、そして強い力士が多い理由は、母国モンゴルにある「モンゴル相撲」の存在が大きいでしょう。
モンゴル相撲はモンゴル語で「ブフ」と呼ばれる伝統競技で、立ち姿勢で組み合って行う格闘技です。その競技スタイルは日本の相撲に類似しているほか、起源も日本のものと同じく儀式的なものでした。
歴代のモンゴル人力士の中にはお父さんやお兄さんがこのモンゴル相撲の強豪選手だったという人が何人もいますし、自身が少年部門の選手だったという力士もいます。大相撲と共通点の多い競技が母国にあり、しかもそれが身近な存在であったことから、大相撲への親和性が高いのだと考えられます。

ハワイ出身力士がもたらした黒船旋風と外国人力士増加の土壌

稀勢の里関の前に最後に横綱になった日本人力士は、若貴フィーバーで大相撲を盛り上げた兄弟のお兄ちゃん、元横綱・若乃花の花田虎上さんです。そして稀勢の里関以前に最後に横綱だった日本人が、その弟の元横綱・貴乃花、現貴乃花親方です。
この二人が大人気だった当時の大相撲で、いわばヒール(悪役)のように立ちはだかったライバルが、元横綱・曙で現在プロレスラーの曙太郎さんです。2mの長身といかつい風貌、そして絶大な人気の若貴兄弟の存在から、悪者のように描かれることもあった曙さんですが、実際は「相撲で成功しないとだめだ、失敗してハワイには帰れない」という不退転の決意のもと全力で相撲に取り組んでいました。
そんな曙さんをスカウトしたのが、初のアメリカ人力士だった元関脇・高見山で東関親方としても活動された高見山大五郎さんです。曙さんと同じくハワイ出身の高見山さんは、現役時代は192cmの巨躯を活かしたパワフルな相撲を取り、日本帰化前の本名「ジェシー」の愛称で親しまれました。ハワイ・ポリネシア出身の力士を発掘したことでも知られ、現役時代には弟弟子で元大関の小錦八十吉さんをスカウトし面倒を見ていたほか、親方時代には曙さんを見事横綱にまで育て上げました。
元横綱・武蔵丸の武蔵川親方もハワイ出身力士として有名です。現在は、武蔵川部屋に所属の武蔵国が、唯一のアメリカ出身力士です。この武蔵国は武蔵川親方の実の甥で、本名は「フィアマル・ムサシマル・ペニタニ」。自身の師匠にして偉大な叔父の四股名からつけられた名前だそうです。
大関や横綱になったハワイ出身力士はみな仲が良く、また日本や相撲の文化をとてもリスペクトし、そこで戦う自身に強いプライドも持っていました。異文化の日本の中でもさらに特殊な角界という世界で、高見山さんや曙さんたちは出身に関係なく外国人力士に親身に接していました。若貴フィーバーの裏で、彼らのこうした意識や振る舞いが、外国人力士が活躍できる素地を築いていたのではないでしょうか。

ヨーロッパ出身のイケメン力士

モンゴル、ハワイと見てきましたが、近年はヨーロッパの国から来た力士も増えてきています。ヨーロッパ出身の関取第一号である元小結の黒海さんは東ヨーロッパのジョージア出身。現役のジョージア人力士には栃ノ心関や臥牙丸関がいます。栃ノ心関はその高い鼻筋が似ていることから「角界のニコラス・ケイジ」とも呼ばれています。
イケメン力士として名をはせた元大関・琴欧洲の鳴戸親方はブルガリア出身。ヨーロッパ出身の力士としては初めて日本に帰化しており、引退後に親方となっています。現在は現役時代から所属していた佐渡ヶ嶽部屋で後進の指導にあたっています。また、鳴戸親方と同じブルガリア出身の現役力士が碧山関です。鳴子親方は碧山関にとって地元の先輩であこがれの存在であり、部屋こそ違いますが交流があるようです。
千賀ノ浦部屋所属の舛東欧はハンガリーの出身です。四股名は舛東欧旭(ますとうおう・あきら)と言いますが、この旭は本名のアティラの当て字だとか。またハンガリーのご近所チェコ出身で元関取の隆の山さんは、100kg前後という力士にしてはスマートで筋肉質な体形だったことから、技のデパートと称された舞の海さんの再来かと注目を集めた力士でした。
エストニア出身の元大関で現在タレントや格闘家として活動する把瑠都さんは、角界のディカプリオという愛称もついた甘いマスクの持ち主。読書家でまじめな性格だったこともあり、人気の力士でした。
彼らヨーロッパ出身力士の多くは、相撲を始める前はレスリングや柔道などの格闘技で優れた成績を収める若者でした。日本の「スモウ・レスリング」の力と力のぶつかり合いに惹かれて、力士への道に進んだそうです。

アフリカ、南米……意外な国から来た力士

東ヨーロッパにはレスリングや柔道が人気という、相撲への架け橋になる素地があります。ですが外国人力士の中にはそうではない意外な国から来た力士もいます。
たとえばアフリカはエジプト。エジプト出身の大砂嵐関は、初のアフリカ出身力士、そして初のイスラム教徒の力士であることから、たびたび話題になる力士です。イスラム教の教えにある通り、豚肉など食べられない食材があるほか、ラマダーン(断食月)の間は日が昇っている間は食事ができません。
食事の制限は力士にとって大きなハンデになるものですが、所属する大嶽部屋と大砂嵐関は、食事を他の力士と分けたり、日没後にちゃんこ鍋を食べるなど、工夫して乗り切っています。実はカイロ大学で経営学を学んでいたということで、文武両道の力士でもあります。
ぐるっと地球を裏返した南米出身の力士もいます。魁聖関はブラジル出身の日系3世。ブラジル出身日本人の元力士・若東さんのスカウトで友綱部屋に入門しています。サッカー大国の出身ですが意外なことにサッカーにはあまり興味はなく、好きなものはゲームだとか。日系ではない純ブラジル人では、元十両の国東さんが2005年に史上初の純ブラジル人の関取になっています。またブラジル以外には、パラグアイ出身の日系人力士に若潮という力士がいたそうです。
サッカーではブラジルのライバル国とされるアルゼンチンからも力士が生まれています。星誕期(ほしたんご)と星安出寿(ほしあんです)という四股名の力士で、ともに十両昇進まで進んでいます。四股名の由来は母国アルゼンチンにあり、星誕期さんはアルゼンチンのダンス「タンゴ」から、そして星安出寿さんは、南米大陸を南北に走る「アンデス山脈」からつけています。星誕期さんは現役時代に日本に帰化し、本名を四股名にちなんで「星 誕期(ほし・たんご)」と改名しました。現在は格闘家、タレントとして活動しています。

ますます多様化する大相撲に期待

モンゴル勢や、ハワイ出身力士がその名をとどろかせていましたが、実はお相撲さんは世界中からやってきているのです。今回ご紹介した力士のほかにも、ちょっとトラブルが目立ったロシア出身力士や、中国や台湾、韓国、そしてマレーシアといったモンゴル以外のアジア出身の力士もいます。
外国人力士の中には、ホームシックや言葉・文化の違いに苦しみ、やめてしまう人も少なくありません。ですが高見山さんや曙さんのように親身になってくれる親方や兄弟子の存在、大砂嵐のイスラム教徒としての教義によって生まれる競技上の課題に一緒に取り組む大嶽部屋の姿勢などで、そうしたハードルも乗り越えてきた力士も大勢います。
また今後鳴子親方が部屋を持てば、初のヨーロッパ出身親方の部屋ということになり、角界も多様な力士が誕生する土壌ができているのではないかと思います。もちろん日本人力士にも負けてもらいたくはありませんが、人種・国籍を問わず、これからどんな力士が生まれるか楽しみですね。

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