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多くのサッカー選手が見せる定番の技、マシューズフェイント

2017 7/12 14:39Aki
サッカー,メッシ
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Photo by Christian Bertrand / Shutterstock.com

ボールを動かす事で相手の重心を動かしてから逆を取るという、ドリブルテクニックとしては理論的に最も基本的でシンプルな技であるマシューズフェイント。 今や多くの選手が見せる定番となったこの技のルーツや、実際にプレーする時のコツを紹介する。

ドリブルの魔術師による魔法のようなフェイント

マシューズフェイントは、その名前にあるようにマシューズ選手が最も得意としたフェイント。
マシューズ選手とは、イングランドのサッカー史上最も有名な右ウイングであり、1956年の第1回バロンドール受賞者、サッカー選手としては初めてナイトの称号「サー」を授かった、サー・スタンリー・マシューズ氏のことだ。
ドリブルの魔術師とも呼ばれたマシューズ氏が見せたこのフェイントは、相手選手をまるで魔法にかかったように次々と混乱に陥れた。
実際のそのやり方は至ってシンプルだ。右サイドでボールを持った時には、左側に抜け出そうと体全体を動かし、右足でボールを左側に動かす。そしてこの動きに相手選手が対応しようとすると、すかさず右足のアウトサイドでボールを右側に出して相手の右サイドを突破するという、相手の重心移動の逆をつくテクニックだ。

現在では多くの選手が使う代表的なフェイントに

魔法とまで言われたマシューズフェイントだが、技としてはいたってシンプル。特別なテクニックを必要としないので真似ようと思えば誰にでもできる。そのため、現在では小学生や中学生からプロのトップレベルの選手までドリブルを武器とする選手の多くが使用する、サッカーで代表的なフェイントの1つとなっている。初心者であっても、少し練習するとその動きだけならマスターできるだろう。
しかし、同じフェイントをやっているつもりでもマシューズフェイントで相手を抜ける選手と抜けない選手がいるのも事実。
やっている事は同じなのにまるで違う結果が生まれる理由はどこにあるのだろうか。

リオネル・メッシ選手がカットインで多用

現役プレーヤーの中でこのマシューズフェイントを最も多用する選手は、現役最高と呼ばれるプレーヤーの1人、リオネル・メッシ選手だろう。
世界最高のドリブラーではあるものの、ネイマール選手のようにトリッキーな技を多用するわけではなく、名前がつくようなフェイントで頻繁に使うのは、このマシューズフェイントとボディフェイント、ダブルタッチの3種類ぐらい。繰り出す技の種類で言えばシンプルかもしれない。しかし対峙する相手選手はほとんど彼のドリブルを止める事ができない。
そんなメッシ選手がマシューズフェイントを使うのは、右サイドでボールを持って中央へカットインしていく場面。一瞬左足でボールを触って縦に抜け出すと見せかけ、相手の重心が動いたタイミングで左足アウトで中央に持ち出すのだ。

メッシ選手のマシューズフェイントはなぜ抜けるのか

メッシ選手のマシューズフェイントの特徴は細かいステップワーク。
そもそもメッシ選手は、通常のドリブルでも他の選手の倍近い数でボールを触るほど、細かいステップワークが特徴的な選手だ。この武器がマシューズフェイントの時に大きく役立っている。
具体的に言うと、メッシ選手のマシューズフェイントは左足で縦に持ち出してからアウトで触るまでのタイミングが異常に速く、そのため相手ディフェンダーが縦への持ち出しに反応したタイミングでは既に逆方向へ切り返されていて、どうしても一歩目が遅れてしまうのだ。
さらに、おそらくこれがメッシ選手の最大の特徴なのだが、彼は左足アウトで出した直後にもう1回同じ速いテンポでボールを触る。このことによって、相手は1タッチ目には何とか反応できたとしても、2タッチ目の時にはバランスを崩してしまい、為す術もなくなってしまうのだ。

ディ・マリア選手やコウチーニョ選手のマシューズフェイント

メッシ選手と並んでマシューズフェイントを多用するのは、同じアルゼンチン代表のアンヘル・ディ・マリア選手。ディ・マリア選手のマシューズフェイントの特徴は、180cmの大きな体を活かした、最初に持ち出すと見せかける方向へのモーションの大きさにある。大きな体全体が右方向に動くので相手ディフェンダーはそちらに反応するが、彼はその動きをみるとすかさず左足のアウトで逆方向に出す。足も長いためにその一歩目がとても大きく、相手は振り切られてしまうのだ。
そしてもう1人マシューズフェイントを得意としているのは、リヴァプールのフィリペ・コウチーニョ選手。コウチーニョ選手に特徴的なのが、最初の抜く方向と逆方向への持ち出しで足裏を使うことが多い点だ。足裏はボールをどちらに動かすのかがわかりにくいので、どうしても相手ディフェンダーは反応が遅れる。そこで相手が動いたタイミングですかさず逆を取るので、相手はどうしようもなくなってしまうのだ。

まとめ

マシューズフェイントのコツはスピードの変化とタイミングだ。しかける前のゆったりしたリズムから速いテンポへの変化の幅が大きければ大きいほど効果的で、また相手の重心移動を見逃さず切り返すタイミングも重要だ。 シンプルだからこそ奥の深いマシューズフェイント。メッシ選手らのプレーを見る時には是非注目してみてほしい。