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カナダの生んだ絶対王者“パトリック・チャン”その功績とは

2016 10/19 19:05
パトリック・チャン
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Photo by Iurii Osadchi / Shutterstock.com

フィギュアスケート男子シングルの王者として君臨したカナダのパトリック・チャン選手。 彼のこれまでの歩みを振り返りたいと思う。 趣味や経歴など人物像、功績を紹介する。

カナダの王者パトリック・チャン その素顔は

パトリック・チャンは、1990年12月31日にカナダのオタワに生まれた。スケートを始めたのは5歳の頃、初めはホッケーに興味をもっていたところ練習するうちにフィギュアスケートの方が面白くなったそうだ。なるほど、スピードのあるスケーティングはその頃から培われたのだろう。
両親は香港系の中国人で、家では広東語が日常の言語だった。高校はフランス語を第一に学び、大学はアメリカのコロラド州で世界経済を学び、広東語、フランス語、英語に堪能とのことだ。スケート以外の特技は「ピアノの演奏」だそうだ。

パトリック・チャン これまでの功績

2005年にカナダのジュニア選手権で優勝、翌年からISUジュニアシリーズに参戦、デビューしたモントリオール杯優勝、グランプリファイナルに出場、2007年にはグランプリファイナルで優勝する。17歳の優勝は最年少記録だった。2008?2009年はグランプリシリーズ優勝、また、カナダ選手権、四大陸選手権に優勝、四大陸選手権ではSPで歴代2位、世界選手権では銀メダルだった。
そして2010?2011年にはグランプリシリーズ カナダ杯で初めて4回転トゥループに成功し見事優勝、続いてロステレコム杯で4回転T+3回転のコンビネーションジャンプを決め、ファイナル初優勝、そして世界選手権ではSPもFPも世界最高得点で2位以下に大きく差をつけて優勝。
2012?2013年にはグランプリファイナルは3位に終わったものの、世界選手権のSPで世界歴代最高得点を自ら更新し、ロシアのヤグデン選手以来の三連覇を達成。2013?2014年はスケートカナダで優勝、エリック・ボンパール杯で再び世界最高得点を更新、ソチ五輪では団体で銀メダル、個人でも銀メダルを獲得した。
ソチ五輪の翌シーズンは休養後、2015年に復帰し四大陸選手権で3回目の優勝を飾った、これは男子シングル初だそうだ。

パトリック・チャンを指導したコーチ

パトリック・チャンが一番影響を受けた指導者、それはオズボーン・コルソンだろう。ノービス、ジュニア時代にスケートの基礎をカナダ出身の大御所であるオズボーン氏に師事したことは、大きな影響があったはずだ。指導が始まったときにオズボーンコーチは80歳、ベレー帽をかぶったコーチとパトリック・チャンはまるでおじいいちゃんと孫のようで微笑ましいといわれた。
最後の弟子となったチャン選手への指導は、当然厳しいものでスケーティングの基礎であるコンパルソリを徹底的に叩きこまれた。90歳で逝去されたときにチャン選手は病院で看取ったそうだ。深い信頼関係を感じる。

パトリック・チャンのスケーティング

パトリック・チャン選手のスケーティングの上手さは定評があり、フィギュアスケートの指導者や選手たちにも絶賛される。生で見るとよくわかるのだが、ディープエッジとスピード、スケーティングの伸びが他の選手と別格なのだ。
例えば、漕がなくてもほんの少しの動作でグーンと進み、あっという間にリンクの端から端までスーッと移動してしまうのだ。テレビを見ていて、審査員から高評価をもらえる選手だなと思ってはいたが、アイスショーで実際に演技を見て驚いた。氷の上を滑っているというより、飛んでいる(浮いている)、そんな印象だ。演技後半になってもそのスピードが落ちないのも素晴らしい。

パトリック・チャン深いエッジで奏でる 氷の上の音楽

以前パトリック・チャン選手が、リンクの上でよく聴く音楽についてインタビューされた際は「自分のブレード」と答えた。エッジを深く立てて「グリッ、ゴリッ」「ザザッー」「シャッシャッシャッ」それが彼には音楽に聞こえるのだそうだ。
スケート選手の練習風景でよくヘッドホンで音楽を聴いているのを目にするが、自分でスケーティングをしながら音楽を奏で、楽しむことができるなんて素敵だ。ピアノが趣味のパトリック・チャンらしいコメントだと思った。深いエッジでのびのび滑ることができる、限られた選手にしか演奏することができない、氷上の音楽なのだろう。

まとめ

パトリック・チャンの強さは、そのスケーティングにあるといわれる。安定したミスの少なさと、圧巻のディープエッジの滑りだ。大会での高得点のゆえんだと思う。初めて会場で見たときに、その滑りスケーティングの強さに仰天した。一滑りで、グーンと伸びのあるスケートなのだ。選手は皆それぞれのブレード音で滑っていたが、異質なのだ。スケートの基本的な要素をしっかりとつかんでいる選手だ。